日本で長く働き、日本で暮らすことにも慣れ、母国よりも日本が好きになったという外国人の方も多いはずです。その場合は帰化申請を行って日本国籍を取得することになりますが、誰でも簡単に日本国籍を取得できるわけではありません。帰化申請するにはいくつかの条件があり、1つでもその要件をパスできなければ、申請が不許可になるどころか、申請すらさせてもらえないことも。
意外とハードルが高い帰化申請に関する条件についてまとめました。
帰化申請が不許可になった外国人の割合が増えている
外国人の帰化申請が不許可になるケースが増加傾向にあることが、法務省民事局の統計から明らかになっています。平成30年度には、帰化許可申請者数が9942人と1万人を下回りました。そのうち、帰化が許可されたのは約9000人であり、不許可になったのは700人弱でした。ただし、この統計には、帰化の可否が決定する前に自主的に申請を取り下げた人や、判断が翌年度にずれ込んだ人なども含まれています。
過去数十年の統計を見ると、帰化申請者数は平成10年度には1万7486人を数えたものの、そのうちの不許可者はわずか108人でした。ただし、その後は申請者数が減少傾向にあり、平成24年度には1万人を下回っています。しかし、不許可になるケースは平成2年度以降も増加傾向にあります。
在日韓国人や朝鮮人、中国人の帰化申請が減少傾向にあることが、この傾向に影響していると考えられます。また、ネットやスマートフォンの普及によって、自己申請が容易になったため、不備が生じるケースも多くなっていると思われます。今後もこの傾向は続くと見込まれます。
帰化申請に必要な7つの条件とはこれ!
高いハードルであることが考えられる帰化申請。実際に必要な7つの条件があり、1つずつご紹介してまいります。
1.引き続き5年以上日本に住所を有すること
日本に5年以上住んでいるかが条件としてありますが、国籍法第5条を見ると、引き続きという文言が入っています。これは途中で国外へ長期渡航をせず、5年間日本に住み続けたかどうかが重要です。一般的な海外旅行で2週間程度日本を離れることは特に問題ありませんが、1年のうち半分は海外に滞在していたとなると、引き続きには当てはまらないことが言えます。
しかも、留学だけで5年間日本にいた人も許可を受ける可能性は難しいとされ、就職して少なくとも3年は働いていることも1つの目安となります。一方、10年以上住んでいる人だと1年間正社員などで働いていれば要件をクリアしたと判断されることもあるため、最初の条件でなかなか複雑であることが分かるでしょう。
2.20歳以上で、母国のルールで成人年齢に達していること
日本でも未成年者が行った契約は親権者が取り消せるように、成年になったことを条件にしています。ただ国によって成年になったかどうかの年齢はバラバラ。母国のルールでも成人年齢に達していることも条件となります。では、20歳未満の人は帰化できないのかというとそうではなく、あくまでも単独で帰化申請する場合です。家族で帰化申請を行う場合は未成年であっても申請はでき、許可も下ります。家族は帰化をせず、自分だけ帰化したい場合は、20歳まで待ち、母国の成人年齢に達してから申請を行います。
3.素行面で問題がないこと
この場合の素行はかなり幅が広く、いくつかの項目でチェックしなければなりません。その中でもまずチェックされるのが犯罪歴、いわゆる前歴です。前科があれば自動的に不許可になるわけではなく、期間がそれなりに経っていること、罰金刑や科料など軽い刑だったかどうかもポイントになります。一概に自分の判断で問題ないと決めることは難しく、専門家に判断を仰ぐのが無難です。
意外と問題が生じやすいのが交通違反や交通事故についてです。過去5年間の交通違反の調査が行われ、1回2回程度の軽い違反ならセーフになる可能性が高いです。ただ、飲酒運転などの前歴があれば不許可になる可能性は高まり、帰化が認められるのは相当先になるかもしれません。交通事故を起こした過去がある場合、既に当事者間で解決をしていればその影響は少ないですが、係争中など解決に程遠い場合は影響が生じます。
あと重要なのは税金の支払いについてです。当然税金の滞納があればアウトで、住民税や所得税が対象となります。個人事業主などはこれに法人税や個人事業税なども含まれ、修正申告してでも納税を済ませれば大丈夫です。ただし、重加算税などペナルティを課せられている場合にはすぐに帰化するのは難しいでしょう。帰化申請を行う本人以外に、同居者がいる場合にはその人の納税状況も判断の対象となります。
4.自分もしくは配偶者などで生計を立てられること
自立して生活が行えるかどうか、それが要件になっています。昔はこの要件が厳しく、貯金をたくさん用意し、収入もそれなりに確保しなければならなかったのですが、現在は生活保護を申請しない程度の自立が認められればOKです。仕事を行っていて、年間200万円以上の手取りが1つの目安とされていますが、これに準ずるような仕送りがあり、親が確かな収入であると認められれば要件をクリアします。配偶者がそのラインに到達し、当人が働いていなくても大丈夫です。
収入と支出のバランスも問われ、申請する際に提出する生計の概要書において、収入と支出が常識的な内容であることも判断されます。他に過去に破産をした人は、破産になってから7年以上は認められません。借金がある場合、収入と支出のバランスを崩さない程度に返済ができていれば咎められることは少ないです。ただし、概要書を書く際、ウソに見えるような書き方になってしまっては大変なので、専門家のチェックが求められます。
5.帰化した際に前の国籍が失われること
1人で複数の国籍を持つと二重国籍となり、問題視されます。日本国籍を取得する段階で、それまで保持していた母国の国籍は失われます。韓国の場合は日本国籍取得の時点で韓国国籍は消えるようになっていますが、アメリカなどのように二重国籍を認めているところは自動的には消えません。離脱の手続きをしなければならないため、自動的には喪失しない国の方は早急な離脱の手続きが必要です。
6.日本政府を破壊させるような思想を持っていないこと
当たり前のことですが、日本を破壊する、国家転覆を図るような思想を持つ人物に許可は出せません。テロリスト集団、暴力団などが対象となります。大変なのは、親族などが暴力団関係者になっていた場合です。関係が近いかどうか、一緒に住んでいた時期があったかどうかが問われ、関係が近いと判断されれば、本人は全くの無関係なのにアウトになってしまうことがあります。
7.日本語能力を有していること
日本人でありながら全く日本語が話せないというのは困るので、一定の日本語能力が問われます。面接の際に法務局の担当官がチェックしますが、その水準は小学2年生、3年生レベル。スムーズに受け答えができれば、日本語能力があると判断されますが、疑わしい場合はテストが行われます。すべての人物がその対象になるわけではなく、あくまでも担当官の判断です。
確実に帰化申請で許可をもらうには?
7つの条件はあくまで大枠の条件で、細部を見ていくとたくさんの条件があるような印象を受けるでしょう。そんな中、確実に帰化申請を行って許可をもらうにはどうすればいいのか、その方針についてまとめています。
ネットの情報だけに頼らず、専門家の助けを借りる
帰化申請には7つの条件がありますが、細部においても多くの条件があることがわかります。面接で聞かれることや申請書の作成において、自分では気づかない細かい不備がある場合があります。ネットに掲載されている情報は一般的なものであり、個人の状況に合わせたものではありません。そのため、専門家に相談することで細部にまで配慮した帰化申請が可能になります。
地方法務局で帰化の相談を行う
帰化申請に先立ち、地方法務局で帰化に関する相談を行うことが必要です。予約を取って相談に臨むことで、申請の可否を判断してもらえます。帰化申請が難しい場合でも、専門家に相談することで問題点を洗い出すことができます。
帰化申請を代行する専門業者に依頼する
一番確実なのは、行政書士など帰化申請の代行を生業としている専門業者に依頼を行う事です。数多くの帰化申請の代行を行っているため、どこで引っかかりやすいか、面接で何が聞かれやすいか、どのような傾向になっているかなどをしっかりと把握しています。法務局への予約も行い、申請書の作成もやってくれます。業者によっては、成功報酬制度を採用し、不許可なら返金をしてくれるところもあるので安心です。それだけハードルが高いので、専門家の助けを借りましょう。
帰化申請の条件まとめ
日本人ではない人に日本国籍を与える以上、どんな人でも引き受けていけば日本は大変なことになります。日本国籍を持たせてはいけない人を水際で食い止めるため、本当に厳しく、細かなところまでチェックを行い、ようやく許可が出ます。ネットだけの情報でも許可される人も当然いますが、そういう人たちは少数派でしょう。確実に帰化を目指すなら行政書士に依頼し、不備を指摘されたらそれを改善して少しでも穴を埋めていくことを心がければ、帰化への道を一歩ずつ歩んでいけるはずです。
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