日本は長年発展途上国への国際協力として、技能実習制度を行っています。日本で母国では得られないような技術や知識を覚えて、母国での発展に活かしてもらおうというものです。
しかし、技能実習制度には問題を多く抱えております。それではどのような問題があるのでしょうか。またその問題を解決するにはどのようにすればよいのでしょうか。それぞれを詳しくご説明します。
2023年最新「技能実習」廃止を政府有識者会議が提言案
政府の有識者会議は、外国人技能実習制度を廃止し、新たな制度への移行を求める中間報告のたたき台を示しました。新制度では、中長期的な滞在を円滑にし、働く企業の変更を緩和することを目指しています。また、3年以上の実習を修了した技能実習生に対して「特定技能」制度を導入し、円滑な移行を支援する予定です。さらに、監理団体の要件を厳格化するなど、新たな制度において改善を図る予定であり、最終報告書は秋ごろに提出される予定です。外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、発展途上国の人材育成を目的としていましたが、実態との乖離やトラブルが多発しており、制度改革が求められています。
(参考)「技能実習制度を廃止 新制度へ移行を」政府の有識者会議| NHK
現状の技能実習制度の問題とは
それでは現状の技能実習制度の問題を、それぞれ詳しくご紹介していきます。
理解不足
企業が外国人を雇う最も大きな理由は人手不足解消であることが多いのです。日本は高齢化社会が進み、少子化社会でもあることから極端に人手が足りない業界が多くあります。また長年のデフレの影響で、消費者の需要が低迷し売り上げが下がったことから人員を削減してきました。
しかし、近年では景気の回復都ともに、多くの企業が募集を開始し始めたのですが、建設業や介護分野、サービス業などでさらに人定リソース不足に陥り、人手不足となる業種が増えたのです。そこで企業は単に人手を解消するためだけに、外国人労働者で補おうとすることが多いのです。
しかし、技能実習は人手不足解消のためだけの制度ではなく、技能実習者に対して日本で仕事をしやすくなるような環境作りが大切となります。いくら実習前に日本語や日本のマナーなどの講習があるとはいえ、初めての国や文化で戸惑う事も多くあります。
また、外国人の多くは日本人よりもはっきりと意見をいう人が多く、文化の違いを理解しない日本人からは「まあ実績もないのに生意気」ととられることも少なくはありません。このような理解不足から様々な問題へと繋がってしまっています。
低賃金
上記のように、技能実習制度に対する理解が足りないことは色々な弊害を生みます。技能実習制度で来る外国人も日本の労働法が適応になり、最低賃金などが守られる必要があります。しかし実際には最低賃金以下の条件で就業をしていたり、長時間の残業に対して未払いになっていたりするなど労働環境が守られていない状況が多く見受けられます。
労働法を守っていないようなブラック企業もあれば、雇用保険や税金などに対して十分な説明を労働者にしておらず、給料からひかれることに納得のいかない技能実習者もいます。また技能実習者の多くはできるだけ残業をして少しでも稼ぎたいと思っている人も多いでしょう。しかし、受け入れ側が労働法令を守ることにより、残業時間が短くなってしまい、給料が思った以上の少ないと感じることもあるでしょう。
いずれの件でも技能実習者は実習に就く前に、講習を受ける必要があり十分な知識を得ることが必須となっています。また送り出し機関が技能実習者を送り出すとき、また受け入れ企業が雇用契約を結ぶ時など様々な場所でしっかりと技能実習者に雇用条件などを詳しく伝えることが必要です。
このように受け入れ企業側にも実習生にも問題がある場合があります。しかし、受け入れ企業側に問題があることが多いのが現状です。実習生という言葉から、不当に扱ってしまっている企業もあります。正社員として外国人を採用している平均の賃金に比べて、技能実習生の方が平均賃金が4~5万円以上低くなっています。
これらのことからも、日本は外国人を不当に雇用していると社会問題にまで発展しているのです。受け入れ企業側は、技能実習者を受け入れることで、コストを大きく下がられるといった誤った考え方を改める必要があります。
セクハラ、パワハラなど
日本人労働者でもあることなのですが、外国人技能実習生に対してもセクハラやパワハラなどの問題が少なくはありません。中には技能実習生、または他の国の人達を差別したり下に見ている人達もいます。外国人にとって、どこに相談をしていいのかわからないこともあるでしょう。
外国人実習生にとって、国を出る時に大きな志を持っています。なかなか悩みを打ち明けられず、しかも仕事を辞めるわけにもいかないといった状況になっているのです。
技能実習者が関わる事故など
技能実習者が失踪する、また警察に摘発されるような件数は年々増えています。実習内容と違う場所で就業をしたり、実習期間を越えて日本に滞在をしたり、また窃盗などの事件を起こすケースもあります。しかし様々な事故や事件があるのですが、ほとんどが金銭的な問題が関連しているといっても過言ではありません。
法務省が発表した平成26年から平成30年までの5年間に失踪した技能実習生の人数は以下の様になっています。年々増えていることがこの表でもわかります。
|
①失踪技能実習生の人数 |
②前年末の在留時脳実習生の人数 |
③:①の②に対する割合 |
平成26年 |
4,847人 |
155,206人 |
約3.1% |
平成27年 |
5,803人 |
167,626人 |
約3.5% |
平成28年 |
5,058人 |
192,655人 |
約2.6% |
平成29年 |
7,089人 |
228,588人 |
約3.1% |
平成30年 |
9,052人 |
274,233人 |
約3.3% |
引用 法務省
外国人技能実習者の多くは、日本に仕事を求めてきます。母国での賃金が低く、自分のためだけでははく家族や親戚の生活のためと思っている人も多くいます。そのため、特に賃金の面で面接時から誤解のないようにすることが大切です。
契約時の給料の額通りもらっていれば、犯罪まで起こすことはないでしょう。契約書を交わしているということは額面の金額に納得して来日しているのです。しかし、本来もらうべきはずの金額を貰っていない技能実習者が多いということなのです。
労働環境
外国人にとって、日本は外国でありこれまでに見たことが内容な文化や風習もあるでしょう。そのため日本人労働者以上にストレスが貯まりやすい状態です。また普段の生活でも言葉が通じないなどの理由でストレスが貯まることもあります。
また技能実習者を受け入れている企業の中には、日本人労働者も希望しないような就業条件になっている場合があります。このような状態では外国人技能実習者が就業しやすい環境とはとてもいえないのです。
技能実習制度問題を解決するには
それでは、技能実習制度での問題はどのように解決すればよいのでしょうか。様々な問題に対して、対処法があります。
企業との交渉
まずは企業との交渉によって、状況が変化することがあります。受け入れ企業側が技能実習に対する理解ができていないことが原因の場合は、受け入れ企業側が理解をすることで問題が解決することがあります。
また現場の状況を上司や経営者側が理解していなくて、理解をすることで問題解決へとつながることもあります。直接受け入れ企業と話すことが難しいのであれば、監理団体を通して相談をすることもできます。
どのような問題や悩みであっても、監理団体また送り出し機関と相談をすることが大切です。監理団体には技能実習者を保護する義務があり、自分ではできないような対応をしてくれます。少しでも理解がある企業であれば、交渉をすることで問題解決へとつながることもあるのです。
労働審判
企業との話し合いで話が進まない場合は、裁判所に労働審判を申し立てることができます。労働審判は労働審判官1名と労働審判員2名によって労働審判員会が開かれ、裁判よりもスピーディーに解決へと進みます。労働審判では主に話し合いが行われ、調停が成立すればそこで解決です。
裁判
労働審判でも解決をしない場合は、裁判に移行します。労働審判をとばして、いきなり受け入れ先を提訴することもできます。外国人雇用に強い弁護士に依頼をすることも可能です。
技能実習制度の問題に対する今後の課題と対策
技能実習者の問題を解決するためには、様々な課題と対策があります。それにはまず、受け入れ先、技能実習者、送り出し機関、監理団体などが技能実習に対する理解をしている必要があります。特に受け入れ先は、外国人労働者はコストを下げて人手不足を解消するためだけの策とかんがえるのは絶対に辞めなければいけません。
また技能実習者に対しても、日本の雇用内容や生活などを理解してもらうために、送り出し機関や監理団体、外国人技能実習機構などを含めて連係をして技能実習者のサポートや保護をしていく必要があります。
相談先
実習生が仕事場などで辛い思いをした時に、そのまま犯罪などにエスカレートしないためにも、いつでも相談できる機関が必要です。そこで現在日本には以下のような相談機関があります。
・監理団体
・公益財団法人 国際研修協力機構
・労働局の外国人労働者相談コーナー
様々な機関の連係
外国人技能実習者が日本で就業しやすいようなサポートをする必要があります。しかし受け入れ企業だけでこれを行う必要はありません。送り出し機関や監理団体、また外国人技能実習機構もサポートをしてくれるのです。
外国人が来日したときいきなり実習を開始するのではなく、まずは監理団体が日本のマナーや風習、日本語、また業務に関する研修を行うこともあります。また外国人技能実習機構では、送り出し国情報や養成講習等様々な情報を提供してくれる他、技能実習者が日本ですごしやすくなるような様々なサポートをしてくれます。
第2号技能実習に移行する際にも、どのような業種が対象であるか、またどのよう
な手続きが必要であるかも全て情報を得ることができます。
そのため仮に技能実習者に問題があった場合は、受け入れ企業だけでかかえる必要がないのです。もちろん受け入れ企業が不正をした場合は、すぐにわかるようなシステムになっています。
技能実習制度の問題まとめ
外国人技能実習者を受け入れることはコストダウンのためではありません。しかし、企業の国際化社会に対する対応、人手不足の解消、海外への展開など様々なメリットがあります。日本は高齢化社会や少子化が進み、今後も人手不足の問題は続いていくでしょう。そこで外国人の技能実習者を迎え入れることは大きなメリットがあります。正しく技能実習者を迎え入れることは、決して企業にとってマイナスではないのです。
最後に受け入れ企業は、外国人の技能実習者もあくまで労働者だと考える必要があります。労働基準法が適用されるので、日本の労働者と差別をしてはいけません。技能実習者が働きやすい環境を作ることがまず大切となります。
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