不法滞在者は平成31年においておよそ74,000人程おり、平成30年の同じ時期と比較すると、8000人近く増えています。しかし、過去には不法残留者が22万人もいながら、5年後にはほぼ半減の11万人にまで減った時期もあります。
(参照:不法滞在者5年半減計画の実施結果について)
取り締まりを強化してでも、できる限り減らしておきたい不法滞在とは何か、その種類や何が何でも日本に居続けたい理由などを含めて解説します。
不法滞在者は年々増えている!
先ほどのデータは平成16年から平成21年にかけてのデータで、それだけを見れば、減っているような印象を受けます。しかし、平成27年には6万人まで減っていたものが、4年後の平成31年には7万4000人と20%以上増えています。特にベトナム国籍は、平成27年には2,500人程度だったものが、4年後には1万人を超え、4倍にまで膨れがっている状況です。いわばベトナム国籍の人たちだけで、プラス分を押し上げるような形になっています。
参照:本邦における不法残留者数について(平成31年1月1日現在)
そして、令和元年10月25日に発表された令和元年7月1日現在の不法滞在者の数を見ると、わずか半年前に比べて5000人も増えていることが明らかになりました。ベトナム国籍がわずか半年で2000人増、これまで1位だった韓国国籍をついに抜き、1位です。他には猛烈な伸びを見せるインドネシアやスリランカも目立ちます。
参照:本邦における不法残留者数について(令和元年7月1日現在)
年々と状況が変化していることは、わずか半年の不法滞在者の伸び方を見ても明らかです。一時期一生懸命減らしたにもかかわらず、再び増加傾向にあります。
不法滞在にも種類がある
不法滞在をするベトナム国籍の人が急増する令和元年、果たしてどこまで増えるのか、とても気になるところですが、不法滞在とは何かを知る際に、その種類があることを覚えておきましょう。
1.不法残留・オーバーステイ
例えば日本に観光などでやってくる場合、パスポートさえあればビザが免除される国が、2019年9月現在で68の国と地域で存在します。一部の国を除くと、90日滞在できます。90日以内に日本から出ていかなければならないのに、90日を過ぎてそのまま日本に滞在をし続ければオーバーステイになります。また、それぞれに決められた在留資格と在留期間を無視し、更新を怠った状態で日本に居続ける行為もオーバーステイです。
短期滞在の状態から不法滞在になったケースは、全体の7割近くに及びます。特に韓国籍、タイ籍、台湾籍、マレーシア籍、シンガポール籍は9割以上を占め、特にシンガポール籍は99%短期滞在からのオーバーステイです。
参照:本邦における不法残留者数について(令和元年7月1日現在)
タイ籍の人物はビザなしで15日しか短期滞在できないというルールが定められていますが、タイ籍は平成初期に5万人を超える人が不法滞在をしていました。短期ビザで日本を訪れ単純労働をしていたためで、それが大問題となり、一時期は3,000人台まで減ったものの、現在は8,000人台を回復させています。
2.資格外活動
日本に入国する際、留学生であれば留学、技能実習生であれば技能実習の資格を与えられます。その中でしか働くことはできず、特に留学生は本来働いてはいけません。しかし、そのような状態でありながら、入管の許可を得ずに働くことを資格外活動と呼びます。留学生の場合は事前に入管に資格外活動の許可を得ることで、週28時間以内で働けます。ところが、この許可を使わず、自由気ままに週28時間以上働いてしまうと、資格外活動として不法滞在の対象になってしまいます。
技能実習の資格を持つ人物が不法滞在者になったケースは令和元年7月時点で1万人いますが、国籍別で見ると、ベトナム籍がそのうちの7割程度を占めます。もっといえばベトナム籍と中国籍でほぼ9割という状況です。留学の資格を持った人物では5,000人程度いましたが、そのうちの6割がやはりベトナムで、また中国と合わせると8割強になります。
3.不法入国・不法上陸
正式なパスポートではなく、偽造したパスポートで入国をする、もしくは上陸許可を得ないまま、日本に上陸する場合が該当します。クルーズ船で日本にやってくるケースは増え、港に下りてから姿を消してしまい、慌てて見つけようとしても時すでに遅しというケースもみられてきました。パスポートはちょっとした細工ではすぐにバレるほど精巧に作られており、数こそ多くはありませんが、決して無視はできません。
4.その他
最近増えているのは、難民申請を行うケースです。短期ビザで訪れた後に難民申請を行い、審査が行われている間に働くことが目的です。以前はそれも可能でしたが、これが問題視され、現在では速やかに審査が行われ、明らかに難民ではない人物に対して働くことを認めさせず、在留期限が過ぎれば強制的に出ていかせるような状況です。不法滞在の逃げ場に使われており、いかにそれを少なくし、本当に困っている難民を守れるかが焦点です。
母国に帰りたくない不法滞在者の事情とは?
なぜそこまでして不法滞在をしたいのか、なかなか分からない部分ですが、彼らにもそれなりの理由があるようです。
1.長年日本で暮らし、今更母国に戻れない
日本で長く暮らしたことで、母国には戻りたくない、日本で暮らしたいと思っている人が多いです。2019年には、30年以上不法滞在し、在留特別許可を求めるパキスタン人男性の話題がNHKのニュースなどで取り上げられました。妻は永住権を持つ中国人で、結婚の直前に入管法違反で逮捕、その後、結婚をして仮放免になったものの、不法滞在と判断され、12ン年間にわたり、再審査を求め、2019年になって強制送還の時期が決まったという連絡が入ります。妻はガンになっており、それを支えたい思いもあるそうです。
参照:「がんの妻と日本で暮らしたい」パキスタン男性が「在留特別許可」をもとめて提訴
もし強制送還をされれば、日本にやってこれるのはかなり先になることは明白です。その中で奥さんが元気でいられるかは非常に微妙と言えます。しかも、奥さんは永住権を持っており、裁判所の判断が待たれます。
2.日本で結婚して子供もいる
2009年に大きな社会問題になった出来事があります。それはフィリピン国籍を持つ両親が不法入国した後に結婚し子供を出産、その後母親が入管法で逮捕され、強制送還が決まったものの、子供が高校に入り、それを理由に在留特別許可を求めて裁判を起こしたという出来事です。子供はわが国で生まれ、日本語しか話せないため、3人で強制送還をされても大変なのは明らかだったため、1人で日本に残るか家族全員強制送還されるかのいずれかが選択肢として用意されます。結果的に両親だけ強制送還されることになったものの、子供と面会することを理由にわずか1年で上陸を許可することを決め、子供には在留特別許可を与えるという判断を下します。
参照:カルデロン一家問題
結婚して家族ができると、今更母国には戻れないというより、子供が母国語をしゃべれず、明らかに順応できないことが分かっているため、戻りたくない気持ちが出ます。悪いと分かっていても不法滞在の道を選ぶ、それ相応の理由、正義が本人たちにありますが、なかなか在留特別許可は出ません。
3.出稼ぎで来ていて帰るわけにいかない
外国人留学生が年々増えていますが、全員が学問に励んでいるわけではなく、最初から出稼ぎがメインとなっている留学生が目立ちます。ネパールやベトナムは物価が安いため、日本で稼げば相当な収入を母国に送れます。母国の生活を担う以上、そう簡単に帰国はできない、そうなると資格外活動になってでも必要以上に働いてしまうことになるのかもしれません。以前のタイ籍の人たちが観光ビザで来日し、単純労働を行っていたのと考え方は同じです。
4.母国に帰ると命の危険がある
日本はなんだかんだ平和な国であり、テロとはほぼ無縁と言えます。銃撃されるケースも諸外国に比べれば圧倒的に少ないわけですが、地域によっては命の危険に毎日晒されるところもあるでしょう。先ほどのパキスタン人男性は、30年以上前に日本へやってくる前には反政府デモに参加していました。今戻れば命の危険があると主張し、在留特別許可を求めています。日本人にはなかなか想像がつかない部分ですが、死んでしまうかもしれないと分かっていて強制送還される程、辛いことはないでしょう。
不法滞在とは?まとめ
不法滞在にも様々な種類があり、在留特別許可を求め、何とかしがみつこうとする外国人がいることが明らかになりました。短期滞在からオーバーステイになる人、技能実習や留学で来日し無許可で資格外活動をしていた人など細かくみると、国によって傾向が変わっているため、今後不法滞在を減らすために複数の手段が用いられるのは間違いありません。
わずか半年で不法滞在者が一気に増えた現状は大問題であり、このまま放置すれば10万人を超える時代が訪れる可能性が高いです。特に技能実習や留学での伸びはかなり異常なため、厳格化が進むことが予想されます。一方で、事実上の移民政策がとられ、安定して労働力を確保しなければならない現実もあります。いかにそのバランスを取りながら、歩みを進めていくのか、国民感情に配慮しながら難しいかじ取りが迫られます。
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