どの国でもオーバーステイを行えば、国外へ追放されます。我が国でも状況は同じで、オーバーステイが発覚した際には何らかの処分が出ることになるでしょう。我が国における処分は諸外国から見ると妥当なモノか、軽いモノか、気になるところです。他の国のオーバーステイの罰則を見ていきつつ、我が国のオーバーステイへの罰則は軽いのか、重いのか、チェックします。
日本におけるオーバーステイの罰則
諸外国のオーバーステイ事情を知る前に、日本のオーバーステイのあれこれを細かく解説します。
1.3年以下の懲役もしくは禁固刑
オーバーステイの状態にある人物には、様々な状態の人がいます。滞在期間が1日だけ過ぎてしまったケースは世界を旅行する人ならよく見られる事です。それ以外のオーバーステイは生活のために働かざるを得ない事から、不法な形で労働を行います。これだと不法就労となるため、不法就労助長罪が適用されます。3年以下の懲役もしくは禁固刑に科せられます。
ただ、上限である懲役3年が課せられるケースはめったにありません。過去にあった例では、就労資格がなかった外国人女性に売春をさせ、挙句、給料を支払わなかった経営者に対して、懲役3年が科せられました。ところが、これは経営者に対するモノであり、オーバーステイをした人物が3年の懲役を食らう事は現状ではほとんどないでしょう。
また、このケースでは執行猶予付きの判決が下されるなど、懲役3年の実刑判決は過去にオーバーステイを犯し、再び我が国にやってきてさらに悪質な行為をしない限りは上限である懲役3年にはならない可能性が高いです。懲役1年以上で強制送還の要件は満たすため、1年以上であれば2年も3年もそこまで関係はありません。
2.300万円以下の罰金
先ほどの不法就労助長罪では、罰金刑も用意されており、上限300万円です。就労資格がない外国人に売春行為をさせていた経営者は、執行猶予付きの懲役刑にプラスして罰金250万円が科せられました。これを併科と呼び、かなり悪質なケースに生じます。一方、罰金のみで済む事も考えられますが、悪質性がそこまで高くなかったことを意味するものの、オーバーステイの事実は消えません。
3.速やかな強制送還
短期滞在で日本を訪れ、結果的にオーバーステイになった人物は、自ら入管に出向き、現状を伝えることになります。その際に、母国に帰るか在留し続けるかの希望がとられますが、よほどの理由がない限り、自ら母国に帰る、もしくは強制送還です。出頭した場合は書類だけ書いてもらい、収容されないケースもあるようですが、そのあたりは入管の判断です。収容されればだいたい30日以内、長くても60日以内で強制送還かどうかが決まります。仮に在留特別許可が与えられるような事情がある場合は、速やかに必要な書類を準備しなければなりません。
4.特定期間の再入国禁止
昔にオーバーステイ等を理由に国外へ出された経験をした外国人、出国命令を受けて自ら国を出た外国人は、日本への入国が制限されます。短期滞在ビザを申請できず、一定の期間が過ぎるのを待たされるハメになるでしょう。出国命令を受けて自ら出ていったら、1年間と短いですが、通常は5年、悪質なら10年です。法務大臣の判断等で例外的に短くなる事もありますが、多くはないです。1年で済むには、短い日数のオーバーステイのみが発覚し、他に罪は犯さず、自ら入管に出頭する事が条件です。
5年は、入管や警察の摘発で発覚した状態、10年は、過去にオーバーステイでやられた人物がまた摘発されるケースです。中には、永久に上陸拒否の処分を受ける人もいますが、1年以上の懲役などを受けた人物が対象とされています。
海外におけるオーバーステイの罰則
我が国のオーバーステイ事情が明らかになったところで、ここからは海外におけるオーバーステイの罰則について解説します。
1.インドネシアでは1日当たり100万ルピアの罰金が科せられる
バリ島などがあるインドネシア、バックパッカーで訪れる人も少なくありませんが、インドネシアでは1日あたり100万ルピアの罰金がオーバーステイをした人物に科せられます。100万ルピアは日本円でだいたい7500円から8000円程度、10日もオーバーステイをすればそれだけで10万円近い罰金が科せられます。
この100万ルピアの罰金、2019年5月から始まっており、最近始められたモノです。インドネシアでもオーバーステイを行った人物への厳しい処分が行われていることを意味します。
2.タイでは最大2万バーツの罰金、再入国禁止処分も
タイではオーバーステイが発覚すれば、1日あたり500バーツ、日本円で2000円弱の罰金が課せられます。オーバーステイの罰金の最高額は2万バーツ、およそ8万円が上限です。しかも、タイでは空港内で1日だけオーバーステイが発覚すれば、「微笑みの一日」として罰金が免除される事もあるようですが、担当者の裁量で変化することが考えられます。
オーバーステイを犯し、すぐに申告をすれば再入国禁止処分にならない可能性が高いです。ところが、一定期間以上のオーバーステイが発覚すれば、最低1年からの再入国禁止処分が下されます。再入国禁止は2016年3月に新設されたもので、それまではそのような処分はありませんでした。政府ではこの当時、法の施行前に出国をするよう呼びかけています。
参照:在タイ日本大使館が不法滞在者の早期出国を呼びかけ、新ルール施行前に
3.中国では最大1万元の罰金が科せられる
中国でオーバーステイが発覚した場合、最初に事情聴取を受けます。この事情聴取は、オーバーステイをした理由が正当な理由かどうかを見るモノです。ここで正当な理由ではないと判断されれば、場合によっては拘留されることもあります。もしオーバーステイをすれば、1日あたり500元、日本円で8000円弱の罰金が科せられます。最大1万元なので、15万円ほどの罰金を支払わなければならないケースも出てくるでしょう。
再入国禁止処分は、情状酌量の余地がない場合、要するに正当な理由ではなかった場合に科せられ、5年間の入国禁止処分が下されることもあります。
4.ベトナムでは最大200万ドンの罰金が科せられる
ベトナムでもオーバーステイを行った人物に罰金が科せられ、50万ドンから200万ドンと定められています。日本円にすると1万円弱、人によっては50万ドンで済む人、100万ドンになる人もいますが、このあたりはオーバーステイの日数などが影響すると思われます。オーバーステイの日数が10日程度であれば罰金で済むけれど、それ以上になるとすぐには帰国できず、ビザを取り直す事など時間を要するケースも見られます。
数日のオーバーステイに対する罰則が軽い?
1日あたりの罰金が国によって違いますが、多くても8000円程度のところが見られます。では、日本ではどうかですが、このような罰金制度は見当たりません。不法就労助長罪での罰金刑はあるものの、単純なオーバーステイで罰金を支払わせるようなモノがありません。ついうっかりオーバーステイをしてしまったという場合でも、諸外国ではそれなりの罰金を支払わされますが、日本はそのような制度すらありません。
罰金があるとすれば、不法就労が発覚し裁判にかけられたケースですが、そのケースも多いとは言いがたいです。数日のオーバーステイに対して1万円でも2万円でも罰金を与え、支払ってもらう事で不法入国、不法就労の抑止力につなげることも考えなければなりませんが、今のところ、そのような話題が盛り上がってはいない状況です。
オーバーステイ罰則のまとめ
オーバーステイの罰則に関するユニークな罰則では、シンガポールが有名です。シンガポールでは鞭打ち刑が今も存在しており、不法入国や一定期間以上のオーバーステイでむち打ち刑を食らいます。少なくとも3打以上は鞭で殴られることになるでしょう。対象となるのは16歳から50歳までの男性で、女性や51歳以上の男性は12か月以下の懲役刑となります。シンガポールは、執行猶予がつかないため、懲役1年以下の実刑が下されます。
諸外国では厳しく対応するのに対し、日本はあまり厳しい処罰はされていないのが現状です。自分でオーバーステイを名乗り出て、自力で国を出ていけば罰金も懲役刑もないです。万が一摘発されても、不法就労の事実がないと強制送還のみで済む可能性が高いでしょう。この状況を踏まえた上で、日本におけるオーバーステイの罰則は重いのか、軽いのか、議論をしていく事が必要です。また罰金を新たに設ける事が抑止力につながるのかも今後の議論につながりそうです。
わが国では、ルールが少ない分、1日でもオーバーステイをすればいきなり捕まって裁判にかけられる可能性も否定できません。罰金さえ払えば許される状態にする事は、誰にとっても喜ばしい状況と言えそうです。
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