ビジネスにおいて重要な役割を果たす「インバウンド」と「アウトバウンド」について正しい理解を持っていますか?多くの人が「インバウンドは聞いたことがあるけど、アウトバウンドは何か分からない」と感じているかもしれません。
実際には、この2つの用語には業界によって異なる意味があります。
グローバリゼーションやITの進化により、人や物の移動が活発化し、ビジネスの形態も多様化しています。その中で、ビジネスにおいて重要なのが、インバウンドとアウトバウンドの概念です。
これら2つの対義語を正しく理解し、適切に取り扱うことが、ビジネスの成功につながります。あいまいな理解では、業務上のトラブルにつながる恐れがありますので、業界ごとにインバウンドとアウトバウンドの意味をしっかりと理解しておくことが必要です。
基本的な「インバウンド」と「アウトバウンド」の言葉の定義
「インバウンド」と「アウトバウンド」は、英語の「inbound」と「outbound」から来ています。
「inbound」は、外から中へ入ってくることを意味し、「outbound」はその対義語で中から外へ向かうことを指します。
意味:本国行きの、帰航の、市内に向かう
意味:外国行きの、市外に向かう
アメリカでは、電車や飛行機の方向を表す単語としても使われており、「inbound」は都心へ向かう上り線、「outbound」は下り線を指します。また、飛行機では、本国に向かう便を「inbound」、国外に向かう便を「outbound」と呼ぶことが一般的です。
各業界における「インバウンド」と「アウトバウンド」の意味について説明していきますが、両者を理解するためには、『ある物が中から外へ、または外から中へ動く』というイメージを持つと分かりやすいかと思います。
観光業界のインバウンドとアウトバンド
観光業界で使われるインバウンドとアウトバウンドの意味を説明したいと思います。
インバウンド
外国人が日本を訪れる旅行または、旅行客のこと
アウトバウンド
日本人が海外を旅行すること
この2つの対義語を覚える時にイン・アウトの意味で混乱する人もいるかもしれません。外国人が旅行で日本にインするのがインバウンド、日本人が日本をアウトして海外旅行に行くのがアウトバウンドという風に覚えてみましょう。
よくテレビで聞くインバウンド対策とは、日本に来る外国人(インバウンド)にサービスが対応できるように準備をすることを指します。例えばレストランでの英語メニューの表記やイベントでの通訳ボランティアもインバウンド対策に含まれます。
日本政府観光局の調査によると、2019年1月から9月までの訪日外客数は24,417,803人。9月だけの訪日外国人数を見ても前年同月比+5.2%となっています。
また、訪日外国人観光客を対象とした関連業界のことを「インバウンド業界」と呼ぶこともあります。
一方で日本人が海外旅行をするアウトバウンド。2019年9月の出国者数は1,751,530人。前年同月比+7.5%とこちらも増加傾向にあります。
野村総合研究所(NRI)によると、日本の観光市場では、昨年10月の水際対策緩和以降、海外からの旅行客が急速に回復していることが分かっています。
訪日外客数は、2022年10月時点での予想では、2024年10月に2019年同月の水準を取り戻すとされていましたが、その後の統計から回復ペースが予想以上に速いことが分かりました。
2022年12月には、訪日外客数が2019年同月の水準を取り戻す時期を2024年の2月に修正しました。さらに、2023年1月の訪日外客数の数字を踏まえ、今後も増加が続くと仮定すると、2024年2月に再び2019年同月の水準を取り戻すと予想されます。
参考元:2023年のインバウンド需要は4.96兆円と早くもコロナ前を上回る予想 | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)
マーケティング業界のインバウンドとアウトバウンド
マーケティング業界のインバウンドとアウトバウンドを説明したいと思います。
インバウンド
見込み客を呼び込むインバウンド・マーケティングのこと
アウトバウンド
見込み客にアプローチを行うアウトバウンド・マーケティングのこと
マーケティング業界ではインバウンドとアウトバウンドはマーケティングの手法の1つとしてインバウンド・マーケティング、アウトバウンド・マーケティングとして意味を持ちます。
インバウンド・マーケティングとは、ユーザー主導型のマーケティング手法のこと。見込み客の関心に合わせてコンテンツを作ることで、見込み客に見つけてもらい、自然と商品に誘導します。
例えば、サントリーの公式YouTubeチャンネルではCMだけではなく、おいしいカクテルの作り方やワインの扱い方などが紹介されています。
サントリーに興味がなくても、お酒好きという潜在顧客を呼び込める仕組みに。また、アニメ「天気の子」や週刊ヤングジャンプとのコラボ動画もあり、若年層の呼び込みにも成功しています。
参考元:サントリー公式チャンネル
一方でアウトバウンド・マーケティングは、直接見込み客にアプローチをする企業主導型のマーケティング手法です。電話を使った営業(テレマーケティング)やダイレクトメール、CMなどが含まれます。アウトバウンド・マーケティングは従来のセールスの形といえるでしょう。
テレマーケティング業界のインバウンドとアウトバウンド
テレマーケティングとは、電話を使ったダイレクトマーケティングの手法の1つ。テレ(tele)は、テレフォンのテレだと勘違いされがちですが、正しくはギリシャ語で遠隔地という単語から由来しています。
参考元: weblio辞書
テレマーケティングには、顧客や見込み客への電話による営業やコールセンターでクレーム対応の業務も含まれています。
テレマーケティング業界のインバウンドとアウトバウンドについて説明したいと思います。
インバウンド
顧客/見込み客から電話を受ける顧客主導型のインバウンド・テレマーケティングのこと
アウトバウンド
顧客/見込み客に電話を発信する企業主導型のアウトバウンド・テレマーケティングのこと
電話を受信するのがインバウンド、電話を発信するのがアウトバウンド。
インバウンド・テレマーケティングには注文の受注や相談窓口、クレーム処理、技術サポートなどが含まれます。
アウトバウンド・テレマーケティングには見込み客の発掘を目的としたセールスの電話や顧客への新商品やキャンペーンの案内、電話による市場調査などが含まれます。
IT業界のインバウンドとアウトバウンド
IT業界(通信・ネットワーク業界)のインバウンドとアウトバウンドについて説明したいと思います。
インバウンド
機器やシステムへ外部からデータ受信や接続があること
アウトバウンド
外部の機器やシステムへデータ送信や接続をすること
IT業界では外部から機器を通して情報を受信することをインバウンド、外部へ情報を送ることをアウトバウンドと呼びます。
また、外部から受信するデータ量はインバウンド・トラフィック、外部から受信するデータはインバウンド・データと呼ばれます。同じく外部へ送るデータ量のことをアウトバウンド・トラフィック、外部へ送るデータのことをアウトバウンド・データと呼びます。
Web業界では外部のサイトへ飛ぶリンクはアウトバウンド・リンク、外部から自分のページに飛ぶリンクはインバウンド・リンクと呼ばれています。
参考元:アウトバウンドとは – 意味をわかりやすく – IT用語辞典 e-Words
インバウンドとアウトバウンドの意味まとめ
インバウンドとアウトバウンドは、英語のinboundとoutboundから由来し、インバウンドは外から中へ入ること、アウトバウンドは中から外へ向かうことを意味しています。
今回ご紹介した業界別のインバウンドとアウトバウンドの意味をまとめたいと思います。
①観光業界
インバウンド
外国人が日本を訪れる旅行または、旅行客のこと
アウトバウンド
日本人が海外を旅行すること
②マーケティング業界
インバウンド
見込み客を呼び込むインバウンド・マーケティングのこと
アウトバウンド
見込み客にアプローチを行うアウトバウンド・マーケティングのこと
③テレマーケティング業界
インバウンド
顧客/見込み客から電話を受ける顧客主導型のインバウンド・テレマーケティングのこと
アウトバウンド
顧客/見込み客に電話を発信する企業主導型のアウトバウンド・テレマーケティングのこと
④IT業界
インバウンド
機器やシステムへ外部からデータ受信や接続があること
アウトバウンド
外部の機器やシステムへデータ送信や接続をすること
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