インバウンド消費という言葉を知っていますか?
観光庁の発表によると、2018年度のインバウンド消費(訪日外国人旅行消費額)は前年に比べ8.7%増の4兆5,189億円。2019年1月から9月期までの消費は3兆6,189億円と過去最高額を記録しています。
参考元: 観光庁 2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額
訪日外国人消費動向調査2019年7-9月期(1次速報)について
訪日外国人によるインバウンド消費は成長傾向にあり、来年2020年の東京オリンピックに向けてさらに期待が集まっています。また、インバウンド消費は少子化による人口減少や地方の過疎化、働き手不足などによる縮小する日本の経済市場を潤す鍵になるだろうと期待されています。
ただし、インバウンド消費は訪日外国人主導の経済活動であって、日本人の私たちは常にデータを読み解くことが必要になります。
今回は実際に過去・現在のインバウンド消費に関するデータを見ながら、これからのインバウンド対策について考えていきたいと思います。
インバウンド消費とは
インバウンド消費とは、インバウンド(訪日外国人)+消費を合わせた言葉で、訪日外国人の日本での消費活動を表し、インバウンド需要と呼ばれることもあります。
インバウンド消費の対象は観光を目的とした訪日外国人と日本で開かれる会議やイベントの参加者、企業の研修・旅行の参加者に限られ、航空機の乗員、トランジットによる滞在者、留学生は含まれないとされています。
参考元:コトバンク インバウンド消費
インバウンド消費の内訳は買い物や宿泊、飲食、観光、イベントなど多岐に渡り、宿泊など観光業界に限らず幅広い業界に恩恵をもたらしてくれるメリットがあります。
内閣府はインバウンド消費の中でもアニメやマンガ、ゲーム、ファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボット、環境技術などの分野をクールジャパンと名づけ、クールジャパン戦略として日本の経済成長に繋げるブランド戦略を立てています。
参考元: 内閣府 コンテンツを活用した インバウンド・アウトバウンドの促進
従来のインバウンド消費のあり方
今ではメディアでよく目にするインバウンドというワードですが、いつからどのようなきっかけでインバウンド消費に注目が集まるようになったのでしょうか。
日本が国として訪日外国人のインバウンド消費に焦点を当て始めたのは、2003年の小泉純一郎政権の時のこと。政府は観光によって国の経済を復興させる観光立国を掲げ、国と民間が手を組みビジット・ジャパン・キャンペーンを始めました。
その後、観光に関する観光立国推進基本法などが制定され、2008年に観光庁が発足。ビザの発給基準の緩和が決まり、国と民間が一体となって日本全体でインバウンドの環境が整えられました。
それから増加傾向にあったインバウンド消費も2011年の東日本大震災による訪日外国人の減少に伴い一時的に落ち込みましたが、2013年の安倍晋三政権のアベノミクスによる円安定着傾向により、現在まで訪日外国人数は回復し、増加傾向にあります。
実際に訪日外国人の数をデータで見てみると、小泉政権前の2000年の森政権時の訪日外国人数は476万人、ビジット・ジャパン・キャンペーンが始まった2003年の小泉政権時は521万人、その後東日本大震災前の2010年は861万人まで増加。
2011年の東日本大震災で622万人まで落ち込みますが、2013年の安倍政権のアベノミクスで1000万人を突破、2019年は3119万人まで成長しています。
参考元:観光庁 訪日外国人旅行者数の推移
現在のようにインバウンド消費が大きな市場となるまでには、個々というより国の政策や円安などの経済状況など大まかな国の情勢が強く影響してきたことがわかります。
現在のインバウンド消費の実態
最近のデータとして観光庁が発表した2018年の訪日外国人動向調査によると、2018年度のインバウンド消費は4兆5,189億円、訪日外国人の1人当たりの消費量は15万3千円となっています。
2018年のインバウンド消費の合計を国別に見てみると、消費が多い順から中国(15,450億円)、韓国(5,881億円)、台湾(5,817億円)とアジア圏がトップ3を占め、欧米諸国は、アメリカ2,893億円、カナダ594億円、イギリス720億円、フランス656億円となっています。
アジア圏トップの中国と欧米圏トップのアメリカのインバウンド消費合計の内訳を見ると、中国は買い物代が圧倒的な割合を占め、一方アメリカは買い物代が最も低い消費となり、消費先の違いがよく分かります。
中国 1位 買物代 8,110億円 2位 宿泊費 2,619億円
3位 飲食費 2,619億円 4位 交通費 1,094億円
アメリカ 1位 宿泊費 1,240億円 2位 飲食費 764億円
3位 交通費 412億円 4位 買物代 358億円
しかし、1人当たりの旅行支出のデータを見てみると、オーストラリアが最も高い24万2千円、続いてスペイン(23万7千円)、中国(22万5千円)と個人消費の高さに地域性が関係なく、爆買いと呼ばれる中国も個人消費では3位まで落ちています。
それぞれの個人消費の内訳は以下の通り。
オーストラリア 1位 宿泊費 99,175億円 2位 飲食費 58,878億円
3位 交通費 34,892億円 4位 買物代 32,668億円
スペイン 1位 宿泊費 92,543億円 2位 飲食費 62,129億円
3位 交通費 42,159億円 4位 買物代 32,783億円
中国 1位 買物代 112,104億円 2位 宿泊費 47,854億円
3位 飲食費 39,984億円 4位 交通費 16,839億円
個人消費が多いオーストラリアとスペインは中国や他国と比べ、宿泊と飲食費により多くの消費をかけていることがわかります。
そして、インバウンド消費の合計と個人消費の内訳を見ると、意外と交通費の消費が大きいことに気付きます。これは都心部だけではなく、日本滞在中に地方にも足を伸ばす訪日外国人の実態を表しています。
参考元:観光庁 2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額
日本経済新聞によると、2018年の地方での訪日外国人の消費額は1兆362億円となり、2015年から58%増とインバウント消費の中でも訪日外国人の地方消費が目立ってきています。
実際に人数を見てみると、2015年に地方を訪れた訪日外国人は1020万人、2018年は1800万人まで増加。2018年の3大都市圏のみ訪れた訪日外国人の人数よりも地方を訪れた訪日外国人の方が500万人多いデータが出ています。
上位15都道府県で訪日外国人が訪れる地方の観光スポットは以下の通り。
1位 大阪城
2位 京都の神社仏閣
3位 福岡の中州屋台
人気スポットの特徴から城や神社など屋台など日本特有の風景に関心が持たれ、4位以降には北海道のスキーや沖縄のマリンリゾートが続くことからスポーツアクティビティの根強い人気も伺えます。
他にも紅葉や桜などの自然風景、温泉、農山漁村体験などのアクティビティも人気を集めています。
参考元:日本経済新聞 訪日客が地方潤す、消費額1兆円超え 観光白書
以上のデータから現在のインバウンド消費の実態は、従来よりも地方を含めた日本全体でインバウンド消費の効果が期待できることがわかります。
これからのインバウント消費はどうなる?
これからのインバウンド消費は2020年東京オリンピックに向けて、確実に増加するといえます。しかし、課題はオリンピック後の2021年以降のインバウンド消費について。
オリンピック開催後に急激にインバウンド消費が落ち込むことはないものの、その後もインバウンド消費を維持させていくことが必要です。
大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した資料によると、日本がインバウンド消費を伸ばしていくためには以下の3点の課題が挙げられています。
① 訪日外国人の国籍の偏り
訪日外国人の72%は東アジア(中国、台湾、韓国、香港)からの旅行客。特にインバウンド消費は中国の影響を受けやすくなっています。日本以外の観光大国は近隣諸国以外からの旅行者の割合が日本よりも高いことから、安定したインバウンド消費にはより幅広い国々からの訪日外国人の来日が必要といえるでしょう。
② 訪問地域の偏り
インバウンドの実態で述べた通り、地方への訪日外国人の足は伸びているものの、旅行者の滞在先の48%が東京、京都、大阪の主要な3都市に集中しています。地方にもより多くの訪日外国人を呼び込めば、今以上のインバウンド消費が期待できる可能性もあります。
③ 主要都市のキャパシティ不足
2020年のシミュレーションの時点で東京、京都、大阪の3都市の宿泊施設が最大50%不足するデータが出ており、羽田、成田空港の両空港でも発着キャパシティが最大30%不足する可能性があるといわれています。
参考元:マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本の観光の未来 2020 年への持続可能な成長に向けて
以上のデータから、これからのインバウンド消費の行方は幅広い国々へのアピールと地方を含むバラエティに富む観光アクティビティ、主要都市のさらなる観光化が求められることが分かります。
インバウンド消費のポイントのまとめ
インバウンド消費を理解するための4つのポイントをまとめたいと思います。
ポイント① インバウンド消費とは訪日外国人が日本で消費する経済活動のこと
ポイント② インバウンド消費は国の政策と民間の協力があってこそ促進できる
ポイント③ インバウンド消費は増加傾向の大きな市場である
ポイント③ 地方でのインバウンド消費に注目が集まっている
ポイント④ 今後の課題はインバウンド消費の国籍と訪問先の多様化、都市部のキャパシティの増加である
これからも成長が見込めるインバウンド消費は、国の視点から、民間の立場から、個人単位などなど、さまざまな視点からビジネスチャンスのある市場といえるでしょう。
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