外国人労働者は就労ビザを取得することで、日本で就業することができます。しかし犯罪や就労ビザの滞在期間を越えて日本に滞在した場合など違反があった場合は強制送還となることがあります。
しかし航空運賃や荷物の運搬など、特に急な場合は費用がかかります。それでは強制送還になった場合は誰がどの費用を支払うのか、また費用が払えない場合はどうするのかそれぞれご紹介します。
強制送還時にかかる費用
それでは、強制送還時にかかる費用の説明をします。退去強制令書が政府から発行されると、入国警備官は対象となる外国人を送還する必要があります。またすぐに送還できない場合は、送還できるまで入国者収容所や地方出入国在留管理局などに収容する必要があります。
送還先
送還先は母国だけではありません。本人の希望、もしくは受け入れ側の希望や拒否によっても異なってきます。送還先は以下のいずれかとなります。
・我が国に入国する直前に居住していた国
日本に来る前に母国から来たとは限りません。そのため日本に入国する前に移住していた国も候補となります。場合によっては出身国よりも長く日本に入国する前に居住していた国に長く住んでいた可能性もあります。
・我が国に入国する前に居住していたことのある国
何か国もこれまで居住していた可能性もあります。行ったことのない国よりは安心して送還することができます。
・我が国に向けて船舶等に乗った港の属する国
日本に船舶を使って上陸することもあります。この場合はその船舶に乗った国も候補であるといえるでしょう。
・出生地の属する国
対象の外国人が生まれた国も候補となります。
・出生時にその出生地の属していた国
生まれた国だけでなく、属していた国も候補地となります。
・その他の国
その他受け入れをしてくれる国であれば、送還の候補地となります。
このことは出入国管理及び難民認定法、第53条に記載されています。また出入国管理及び難民認定法、第53条では、送還先に選んではいけない国も指定しています。
前二項の国には、次に掲げる国を含まないものとする。
一 難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国(法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除く。)
二 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約第三条第一項に規定する国
三 強制失踪そうからのすべての者の保護に関する国際条約第十六条第一項に規定する国
(引用)出入国管理及び難民認定法
例え送還を希望しても、相手側が受け入れを拒否すれば送還できません。また相手国の状況が危険にされされる状況であれば、送還できないと難民条約第33条第1項(いわゆる,ノン・ルフールマンの原則)にて定められています。
例えば、日本で犯罪を犯したイラン人が母国であるイランに強制送還となったのですが、イランはイラン・イスラム刑法に関連する報復刑を受けてしまう可能性があるとして、訴訟がありイランへの強制送還が違法となりました。
この件は行政事件訴訟法30条にあたります。
送還方法
送還方によっても費用は異なってくるのですが、該当の外国人労働者が支払いをする自費出国、運送業者の負担による送還、また国が支払いをする国費送還の3種類があります。国費送還をする場合は税金での支払いということになり、できるだけ費用を抑えるために不法就労や不法入国に対してより厳しくチェックをするようにしています。
また強制送還となった場合でも、できるだけ実費で出国をするような努力を促しています。しかし出国の際の航空運賃などの費用がどうしてもだせないような状況である場合のみ、国費送還の処置をとっています。
自費と国が支払いをする国費以外に、運送業者の負担である場合がありますが、対象となるのは以下の場合です。
ア 一般の上陸審査の過程において上陸を拒否された者
イ 入管法第24条第5号から第6号の2までのいずれかに該当して本邦から退去強制される者
(引用)法務省
この他にも上陸後5年以内に、上記の入管法第24条の1に該当したもののうち、運送業者が退去強制の理由となることがわかっている場合でも、運送業者の負担による送還となっています。
強制送還になると費用は誰の負担になる?
強制送還になった場合は、自費で支払いをする場合、国が支払いをする場合と運送業者が負担する場合があります。それぞれのケースを詳しくご紹介します。
強制送還費用における自費出国とは
強制送還費用における自費出国をする場合は、入国者収容所長もしくは主任審査官が自費出国を許可する場合は、強制送還の対象となる外国人労働者が出国をする意思を持っている事と、出国をするための航空券などの費用が具体的に支払い可能であることを確認しなければなりません。
国が負担する場合
自費出国ができないと判断された場合は、国が負担することが多くなります。例えば、日本人が日本から退去する意思がない場合、また送還先までの航空運賃などの所持金が明らかにない場合などが該当になります。
つまり強制送還は原則として国費負担となるのですが、例外的に自費出国が認めれるとされています。国の費用であれば多くの税金が必要であり、国家予算の負担ともなるためできるだけ自費で出国するように促しているのです。
出入国管理及び難民認定法の第52条4項には、「退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、入国者収容所長又は主任審査官は、その者の申請に基づき、これを許可することができる」と記載されているのです。
運送業者が負担する場合
運送業者の負担になる場合は、通常の上陸審査にて上陸を拒否された場合と入管法第24条第5号から6号の2までの内容に該当する場合、もしくは該当の外国人労働者が入管法第24条に該当しており、この外国人労働者が強制送還になる理由があることを把握している場合となります。
第二十四条 次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
一 第三条の規定に違反して本邦に入つた者
二 入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者
二の二 第二十二条の四第一項(第一号又は第二号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者
二の三 第二十二条の四第一項(第五号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者(同条第七項本文の規定により期間の指定を受けた者を除く。)
(引用)出入国管理及び難民認定法
上陸を拒否されるというのは、入国時に港や空港で上陸審査に通らなかった場合です。また入管法第24条第5号から6号の2までの内容というのは仮上陸の許可を受けた状態で逃亡した場合は、船長などの責任となります。
これらは全て出入国管理及び難民認定法の第59条である送還の義務に記されています。入国審査に問題があった場合は、これまで乗ってきた飛行機などに乗せて返すのが原則であるということです。
強制送還になって費用が払えない場合どうする
強制送還になった場合で、支払いができないとなると日本の税金を使って対応する必要があります。国家予算に重い負担がかかることになり、大きな問題へとつながっているのです。
強制送還になった場合の費用に関する注意点
それでは強制送還になった場合の費用に関して注意点をご説明します。日本から出国するためには帰りの航空券が必要となるのですが、この航空券に関しても問題や注意点が残ります。
帰国の航空券について
日本に入国する際、帰国の際の航空券を持っている場合も多いでしょう。しかしその航空券によっては、日程を変更できないものもあります。このような状況の時は、あらかじめ入管局の担当官に相談をすることが大切です。
自費出国をする際に予定便に乗り遅れた場合
搭乗をする予定だった便に乗り遅れた場合でも、すでに空港にいる場合は空港にて入国管理官署へいき、現在の状況を相談してください。また空港についてから、もしくは直前になってから急病になった場合でも同じように地方入国管理官署へ連絡をしてください。
強制送還できない場合
送還先の国が危険な状態にあるなど、さまざまな理由で強制送還の対象者であっても強制送還できない場合があります。この場合は収容所に入るか、住居や行動範囲の制限、呼び出しに対して出頭の義務を条件に放免することもできます。
このため、強制送還の対象であっても結局は送還できない場合、また国の負担になる場合など強制送還においても数々の問題を抱えています。今後外国人労働者が増加していく反面、このような問題をかかえているのが現状です。
強制送還の費用に関するまとめ
日本で就業をしている外国人が、犯罪を犯したり、違反を犯した場合は強制送還となることがあります。強制送還をするのは母国やこれまで居住したことがある国となるのですが、航空運賃の他に荷物を送るなどの必要が必要になります。
出入国管理及び難民認定法では、基本的にはこの費用は国が持つことになっているのですが、自らの負担により出国する場合はこれを許可するとあります。つまり原則的には、強制送還の費用は国が持つことになっているのですが、条件が揃っていれば自費でも認めらていることになります。
しかし国が費用を出すということは全て税金からまかなうことになり、国家予算に大きな負担になります。日本国は強制送還の対象になる不法就労等に対して厳しく取り締まってはいるのですが、強制送還費用の面でも大きな問題が続いています。
また支払いができない強制送還に該当する外国人労働者が、収容所に入ることもあり収容期間が長くなっていることも大きな問題としてあります。
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