それでは前回の続きです。前回は外国人(外国籍人材)の在留資格のステータスをまず真っ先に確認し、ステータスのカテゴリーと在留期間を意識することを述べましたが、それを踏まえてさらに外国人の方のバックグラウンドを確認していきます。
2つ目は「過去の職歴や職務経験値」
実際の職務のバックグラウンドを確認及び洗い出していきます。お仕事としてどのような実務経験があるのかのチェックです。
ここでポイントになるのは、日本企業での経験値だけではなく、その外国人の方の自国や海外での職務経験も全て確認することです。日本に就労に来ている外国人の方であれば、基本インターナショナルな方ですので、職務経験が自分の国、及び日本だけに留まらず、その他の国に住んでいた、もしくはお仕事をしていたことも一般的にあります。
もしくは、生まれた国と学んだ大学の国が違うケースも多々ありますし、キャリア上において、他国でのインターンシップ経験やボランティア経験、はたまた通訳・翻訳やITエンジニア、プログラマー、ライターなどのフリーランスとしての職務経験を持っていることもあります。
日本の一般的な既存の終身雇用制・キャリアステップは、大学卒業後に新卒として企業に入社するのが流れになりますが、海外のキャリアの考え方は横断的かつフレキシブルですので、大学在学中もしくは大学在学前においても企業にて職務経験を積んでいたり、インターンシップやボランティアなどの経験を持っていたり、ご自分で何かビジネスを行なっていたりもありますし、大学卒業後にすぐに就職せずに旅をしたり、異国でインターンシップを行なったりと様々です。
また、日本の一般的な履歴書や職務経歴書には、上記のような自国や海外での職務経験を非常に表現し難く、全く書かずに企業に提出している外国人の方もチラホラおります。これは、非常にもったいないことで、企業及び外国人ご本人にとっても情報不足のためにせっかくのマッチングの機会を失うことにもなりかねません。
また、私が実際にカウンセリングした外国人の方で、四年制の日本の大学に在学中で新卒として就職活動中の方がいました。
その方をカウンセリングしていく中で、実は自国の高校卒業後に外国人技能実習制度で日本に渡航し、日本企業で3年間の職務経験があり、その後日本の大学に入学するというバックグラウンドであることがわかりました。
このようなケースですと、実際には新卒として就職活動していますが、中身は中途と言っても過言ではないです。先の記事においても述べましたが、日本と世界のキャリアの考え方にズレがありますので、そこをしっかり踏まえた上で、ご本人がお持ちの経験値を日本だけでなく海外全て棚卸しすることが重要です。
できれば日本語の履歴書・職務経歴書だけではなく、英文のResumeも一緒に拝見することをお勧めします。英文Resumeは、日本式の履歴書とは違い、決まったフォーマットはなく、書き方、表現の仕方が本人の自由です。そして、非常にロジカルに「何をしてきたのか?」「何が得意なのか?」がわかりやすくまとまっていますので、日本語の書類では見えない部分が表現されていることが多々ありますので、要チェックです。
3つ目は「専攻や学歴」
大学や専門学校などで何を学ばれていたのかの確認です。日本ですと大学名をどうしても先に見てしまいがちですが、もちろん大学名もチェックしますが、それ以上に大事なのは専攻でして、何を学ばれてきたのかが重要です。
理由は、この専攻が在留資格のステータスと結びつくことになるからです。
日本は真っさらな状態から企業の中で育てていく新卒一括採用式が普及していますので、おおよそ理系・文系という大項目でのセグメントが一般的ではありますが、日本で仕事をしたい外国人の方はそうではありません。
大学や専門学校での専攻次第で、在留資格を発行し、この日本に必要な人財なのかを入国管理庁が判断します。
なので、専攻と仕事内容に関連性があるか、日本の労働市場において不足しているスキルなのかがキーポイントになります。
また、その大学や専門学校等も日本だけでなく、外国人の自国だけでなくその他の海外のものも関わってきます。
例えば、
①【自国の高校卒】→【自国の日本語学校】→【日本の四年制大学卒】→【新卒で日本企業入社】
のような日本の四年制大学から日本在中で、
在留資格が「留学→技術・人文知識・国際業務」に切り替わるパターン
②【自国の高校卒】→【自国の大学卒】→【自国の企業に就職】→【日本の日本語学校卒】→ 【日本企業に入社】
のような自分の国で大学を卒業し現地就職、その後日本の日本語学校から日本在中で、
在留資格が「留学→技術・人文知識・国際業務」に切り替わるパターン
③【自国の高校卒】→【海外の大学卒】→【海外の企業に就職(クライアントが日本企業)】 → 【日本支店へ出向】→【日本企業へ転職】
のような自国・日本以外の海外の大学を卒業し現地採用で海外の企業に就職、クライアントが日本企業だったが故に、日本支店に出向しそのまま別の日本企業に転職で、
在留資格が「企業内転勤→技術・人文知識・国際業務」に切り替わるパターン
④ 【自国の高校卒】→【自国の大学卒】→【自国の企業に就職】→【日本人と結婚】→【日本へ移住し日本企業に転職】
のような自国の大学卒業後、自国の企業に就職し、自国で出逢った日本人と結婚、それを機に日本に移住し日本企業に転職で、
在留資格が「日本人の配偶者等」のパターン
⑤【自国の高校卒】→【海外の大学卒】→【海外の企業に就職】→【奥さんが仕事の関係で日本へ】→【旦那本人も日本へ移住】→【日本企業に転職】
のような海外の大学卒業後、そのまま海外にて現地採用で就職、その途中、奥さんが仕事の関係で日本に移住して、旦那本人も日本に移住し、日本企業に雇用されるケースで、
在留資格が「家族滞在→技術・人文知識・国際業務」に切り替わるパターン
このように、これらはほんの一部の例になりますが、外国人の方が日本に就労するまでに辿ってきたキャリアは個人により様々ですし、そこには当然のことですが、ご結婚やご家族のことが絡んできます。それにより在留資格のステータスの移り変わりも様々です。在留資格を得るためには入国管理庁の許可が必要になりますので、必ずそこには専攻という「何を得意としている方なのか?」が絡んできます。
4つ目は日本語を含めた「使える言語力」
外国人の方にとって日本企業で雇用されるために避けては通れない壁が、やはり日本語能力です。日本には日本語能力を図る1つの指標として日本語能力試験・JLPTがあります。レベルは5段階に分かれていて、それぞれ優しいレベルからN5、N4、N3、N2、N1という順番でN1が最高レベルとなります。
一般的な日本企業では、外国人の方の日本語能力をこのJLPTの資格保持で判断するケースが多く、企業によってはこの資格保持を採用試験の必須項目としているケースも多いです。しかし、私が実際のカウンセリングでチェックしているポイントは、実戦としてのどのくらい使えるか?を確認しています。
理由としては、実際に資格は持っていても全くコミュニケーションが取れないというケースもありますし、保持資格のレベルが高くなくても、充分日本人とコミュニケーションが取れるケースもあるからです。
特に、実際に日本企業で職務経歴があり、日本人と一緒に仕事をされていた方などは、資格では判断できないくらい日本語がお上手な方も居ますし、配偶者が日本人だったりすると、日常での生活で日本語を実戦で使うケースが多いので、想像以上の日本語力をお持ちの方もいます。(ただ、大半の外国人の方がやはり漢字が難しくて理解できない漢字が多いっと言います。これは否めません。)
また、「日本語ができること」と「日本語で仕事ができる」とでははっきり言って別世界です。職場の実戦の言葉は、専門用語も多く、日本人でも理解するために時間を要する言葉も存在しますので、その点は日本語の資格だけでは測れないポイントです。やはり、保持資格はあくまでも参考程度にし、面談時に実際にコミュニケーションを取ってみることが一番の確認方法だと思います。
次にその他の言語で、英語力です。
日本では一般的に英語力を測る資格としてTOEICがありますが、外国人の方の場合、持っていないケースが多いです。もし持っているとしたら、海外大学入学のため、もしくは就労ビザや永住権獲得のためのTOEFLもしくはIELTSを保持している可能性が高いです。
理由は、TOEICが普及しているのは日本と韓国であり、世界では一般的ではありません。よって、英語力を測る上でも日本語と同様、実際にコミュニケーションを取ってみてどのくらい実戦で使えるかを確かめるのが確実だと思います。特に、職務経験上で英語を使って実際に仕事をされていた方は、やはりビジネスレベルの英語力をお持ちの方が多いですし、英語圏に住んでいた経験のある外国人の方は、使われる英語も現地人の影響を受けていますので流暢です。
気をつけなければならない点は、各国籍・バックグラウンドによって使う英単語や表現の仕方、使う文章が大きく違ったりします。また、職業のポジションの表現や具体的な仕事内容における表現も各国籍・バックグラウンドにより様々です。特に日本語の職種表現では表せないポジションが世界にはあったりしますし、その逆もありますので、その点は具体的にどんな役割でタスクを行なっていたのかを要確認です。さもないと、お互いの誤解を生じます。
そして、この英語力の有無が、在留資格を取得する上で大事なエッセンスになることもお忘れなく!「国際業務」に当たる通訳や翻訳を行う上での大事なスキルになります。
最後にその他の言語になります。日本語と英語を除いた例えば中国語やスペイン語やフランス語などですが、最も大事なポイントはローカルの言語です。例えば、タイ人ならタイ語、インド人ならヒンディー語、ベトナム人ならベトナム語のように、ローカルの言語が何なのかを必ず確認します。
その理由は、上記の英語力の有無と同じく、在留資格を取得する上での大事なエッセンスになるからです。例えば、日本企業が海外進出を検討もしくは実際に行なっていて、現地の方とコンタクトを取る際に、現地の言葉を操れて現地の知り合いも多く、現地の文化やビジネス習慣を良く知っているっということが在留資格の「国際業務」にマッチするわけです。ですので、外国人の方が使えるローカルの言語は必ず確認が必要です。
最後の5つ目は「日本で働きたい理由」と「ご本人のキャラクター」
やはり「なぜ日本で働きたいのか?」を伺うのは必須項目です。
大事なポイントは、外国人の方がただ単に日本に長くいたいだけであるビザ目的(在留資格取得目的)なのか、そうではないのか、を必ず質問とヒアリングを通して確認します。
外国人の方が日本に居続けるために在留資格を取得しなければならないことは当然の事実ですし、それが目的になる理由も良くわかるのですが、在留資格が得られればあとはどうでも良い!っと思っている外国人の方もチラホラおりますので、ここはしっかりとした見極めが必要です。
おそらく、日本のアニメや漫画、ゲーム、そして日本食などに影響されて日本が好きになったと仰る外国人の方が多く、もしくは住んでみてとてもキレイで住み心地が良いっという方も多々おります。この辺りの動機も本人にキャラクターと合わせて確かめてみると良いかと思います。
以上、「在留資格のステータス」→「職歴」→「学歴」→「言語」→「日本で働きたい理由・本人のキャラクター」という順序で外国人ご本人と確認し合うのが、効率的な流れであり、私自身が実務で行っている流れになります。
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