外国人採用のための助成金~その1~【工藤国際社会保険労務士事務所:代表工藤裕徳】

執筆者 6月 1, 2020ニュースコメント0件

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外国人採用のための助成金~その1~

 

外国人採用と聞くと、多くの方が日本人より安い賃金で雇用できると思いがちである。本当にそうであろうか。たしかに技能実習生の場合、労働者なのか研修生なのか、その曖昧な地位であることから、その賃金は低く抑えられていることが多い。私の経験上、だいたい額面で月17万円程度である。これに監理組合に月4万円支払う必要があるため計21万円ほどになる。これならば日本人を雇用するよりも安いかもしれない。

 

一方で2019年4月の入管法の改正により新設された特定技能制度の場合、明確に労働者として位置づけられ、同じ会社に勤める日本人と同等以上の給与を支払うことが求められており、その基準を満たさない場合は、在留資格が認められないこととなる。特定技能の場合、その外国人労働者の管理・支援のために登録支援機関に業務を委託することが実質的に求められる。その委託料は当初の目論見では月3万円程度であったが、月1.5~2万円程度が相場となりつつある。

 

つまり日本人と同等以上の給与を支払い、かつその委託料を支払うと、日本人を雇用するより総額で高い負担を強いられることになるのである。またビザ申請費用15万円程度、往復の飛行機代10万円程度を企業が負担するとなると、そのコストは比較しようのないものとなる。さらに外国語での雇用契約書の作成、住居負担を考慮すると、金銭的に考えれば外国人雇用は割に合わないものとなる。人材紹介手数料は日本人を採用する場合でも同じであるが、一般的に年収の30%が相場で、中小企業にとっては重い負担となる。

 

そこで活用を検討していただきたいのが厚生労働省の助成金である。

 

『人材確保等支援助成金』

2019年4月に新設された人材確保等支援助成金のひとつ「働き方改革支援コース」の活用の検討をお奨めしたい。働き方改革を推進するため厚生労働省は多くの助成金を予算化しているが、本助成金は外国人(就労ビザ(技術・人文・国際)よび特定技能ビザの外国人は対象となる。一方で、技能実習生は対象とならない。)を雇用する場合にも活用できる。

 

働き方改革に取り組み、労働時間(残業時間)の短縮を図るために、人材を確保することが必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成するものである。ここで重要なことは、助成金の申請時点で、外国人を採用する部署に残業が生じていることである。逆に言うと、残業がない企業が採用をしても助成の対象とならないのである。

以下、厚生労働省HPより引用

【概要】

  1. 助成を受けるためには、新たに労働者を雇い入れることや雇用管理改善(人材配置の変更、労働者の負担軽減等)に係る雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける。

  2. 認定された雇用管理改善計画を1年間取り組んだ後、各種要件を満たせば「計画達成助成」が、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たせば「目標達成助成金」が支給される。
    (1)計画達成助成
    新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を達成した場合に支給
    雇い入れた労働者1人当たり
    60万円
    短時間労働者1人当たり
    40万円
    支給の対象となる労働者の上限は10名であるので、例えば10名外国人労働者を雇用する場合、600万円が支給されることとなる。

(2)目標達成助成
雇用管理改善計画の開始日から3年経過する日以降に申請し、生産性要件を満たすともに、離職率の目標を達成した場合に支給
労働者1人当たり
15万円
短時間労働者1人当たり
10万円
生産性要件とは、対象労働者を最初に屋と居れた日の属する会計年度の前年度とその3年度後を比較して生産性が、6%以上伸びていることである(詳細は割愛)。

【対象事業主】

  1. 時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業事業主。
    時間外労働等改善助成金とは、平成30年度以降でいうと①時間外労働上限設定コース、②勤務間インターバル導入コース、③職場意識改善コースのことをいうが、最も簡単なのは、②の勤務間インターバル導入コースである。勤務間インターバルとは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」具体的には、最低9時間以上を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、厚生労働省が「過労死」撲滅の切り札としている制度である。2019年4月に全事業所に努力義務を課す法が施行されている。厚生労働者は、2020年までに全事業所の10%が導入することを目標に掲げている。本助成金の令和元年度の募集はすでに締め切られたので、令和2年4月に公表される令和2年度の詳細を待つことになる。

  2. 雇用保険の適用事業主であること。
    併せて労働保険料の滞納があってはならない。

  3. 雇用管理改善計画認定申請日の1年前から1年経過する日までの期間において、雇用保険被保険者を継続して雇用していた事業主であること。

  4. 過去に本助成金の対象労働者と同一の労働者に対して、雇い入れに係る他の助成金の支給を受けていないこと。

  5. 計画開始日の前日から起算して6カ月前から雇用管理改善計画期間の末日までの期間について、事業主都合による離職者がいないこと。

  6. 計画達成助成時離職率が30%以下であること。

  7. 基準期間(計画達成助成)に、特定受給資格者となる理由により離職した者の数が一定以上ないこと。

 

以上、諸要件はあるものの、来年度以降に外国人労働者の採用を検討する中小企業事業主は、勤務間インターバルおよび働き方改革支援コースの各助成金を経営計画に組み込むことを推奨する。

 

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著者 アドミン

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