日本企業を救う海外女子とは
労働人口減少、エンジニア不足の加速化が今後も予測され、労働人材の文脈では「シニア」「女性」「外国籍」「若年」の受入から活躍推進の取組が継続的になされています。各ジャンルの人材を迎え入れるため、受入体制やルール、マネジメント方法などを変えることが求められています。このような取り組みは、多様性を生み出し企業文化に変革を起こすためのきっかけとして非常に有効であり、推奨されています。
中でも「女性」や「外国籍」のように、これまでほとんどの日本企業に存在していなかったマイノリティタイプの人材受入にチャレンジしている企業が増加傾向にあります。これまで受け入れてきた人材タイプと異なるため、企業も慣れないため試行錯誤しているのが実態です。
そこで本日は、「女性」であり「外国籍」である海外女子について情報をお伝えしたいと思います。受け入れが活発となるであろう海外女子とは一体何者か?さらに日本企業が海外女子を雇用するメリットはどこにあるのかを解説します。
「海外女子 = 外国籍 × 女性」
ここでいう海外女子とは、「外国籍(日本国籍以外の方が該当)」で「女性(男性でなく女性性が該当)」である方々です。地球上に女性人口は37億人存在し、先進国、発展途上国ともに男性人口比率は同じです。(ほぼ五分五分である)
現在、日本居住の外国籍人口は約282万人。そのうち144万人が女性です。3/4が労働人口に該当するとした場合、多く見積り約100万人程度の方々が労働人口となり得ます。そして、外国籍の方々が観光のため日本に訪れる機会も増え、インバウンド客は過去最高を推移。女性観光客という文脈で申し上げると、「安全な国=日本」というイメージは世界中で定着しており、安全で四季折々の素晴らしい地を安心して一人旅できる国であることが広く知られています。この小さな島国に接点を持つ海外女子も年々増加傾向にあります。
そんな「外国籍 × 女性」の中でも就業支援を行い関わっている「理工系海外女子」についてクローズアップしたいと思います。私自身の転職支援経験において、理工系分野の学歴を保有、理工系職種の経験保有者に多数お会いしてきました。彼女たちの特徴、ポテンシャルなどをお伝えしたいと思います。
世界の理工系女子事情
日本で理工系分野を専攻/専門とする日本国籍女性の比率をご存知でしょうか?
ひと昔前から日本の女性は理工系専攻者は数少なく、いまだ理工系大学の男女比は「9:1」が平均です。なぜ少ないかここで言及しませんが、日本の根深い無意識の概念や慣習が影響していると考えます。(女性が理系分野に進むと就職できない&結婚できないと親からアドバイスがある、中高生分離選択時において理工系選択の道が良いという教育が不十分)
以前、T系理工系大のOG会代表を(当時)お勤めだった女性とお話する機会をいただきました。上述したトッピクにおいて理工系分野の女性進出について伺っていたのですが、理工系女性の皆さんの抱いている危機感に触れました。理工系分野に希望を持つ次世代をどのように増やしていけば良いか悩んでいたことを記憶しています。
そんな日本の現状を踏まえ、世界に目を向けてみましょう。
昨今、欧米を中心とした「Woman in STEM」と称した活動が活発化しています。教育機関や企業がSTEM分野における優秀人材輩出のための取組をしており、関心の高い課題として取り上げられています。
参考:*MicroSoftがキャンペーンしたSTEM Girl啓発動画
参考:*STEM女性輩出のために活動する団体HP SheCanSTEM
技術者育成の文脈をグローバル全体で考えると、第4次産業を牽引する最新技術は化学、技術、工学、数学が土台となることは各国共通の認識です。技術革新の猛者輩出には、まず母数形成をした上で教育を施しある一定量の人材を輩出します。世界的に人口は増えているものの、一定分野の中にたったひとつのアイデンティティを持つマジョリティのみ存在するならば、マイノリティである女性に参画してもらいその分野でまずは母数形成を促し、並びに相互研鑽することがポジティブではないでしょうか。
また女性たちに関しても、一切理工系に関心を寄せず文系の道のみの選択が当たり前であったのならば、機会損失に思えてなりません。
と長くなってしまいましたが、ここであるデータを共有します。
- Women’s Share of the Tertiary Graduates Overall and in STEM –
参照: UNESCO統計データを基にCareer Flyが作成
アジア、オセアニア各国で、「(グレイ)大学までの教育を受けた女性の割合」と「(赤)そのうちSTEM教育を受けた女性の割合」を示しています。我が国日本は言わずもがなの結果です。先進国である中国、日本は理工系学問を学び終えた女性が少なく、次いでフィリピンも似通ったデータとなります。一方、最もSTEM教育を受けた女性が多い国は「ミャンマー」です。高等教育を受けた女性全員がSTEM!現在我々はミャンマー内工科大にて日本語力を持つ高い技術者の卵たちを育成しております。話は逸れますが、STEM女子が圧倒的数のミャンマーではインフラ(特にエネルギー系)が現時点で十分に整っていません。つい先日のミャンマー出張にて、マンダレー市の現地工科大に1日滞在していると必ず停電になります。もはやお約束ですが(笑)、少なくとも3〜4回は落ちます。そして予備の電力に切り替え復旧を待つという日常です。このような環境下で生活していると、インフラ設備を整えたい→知識と技術を身につけたい→工科大に行く、という自然な流れができてくることから、理工系女子が多いのではないでしょうか。 p>
次いで、「ブルネイ」「モンゴル」「ベトナム」「インド」もSTEM履修女性が割合が高いです。そして「オーストラリア」がフォローしている割合となります。また、中東國のデータは今回含めていませんが、イスラム圏も理工系女性の育成に注力しています。
(参考記事:イスラム圏にリケジョが多い理由)
本稿では触れませんが、なぜ日本や欧米諸国のような先進国より発展途上国に理工系専攻の女性が多いか参考記事内で語られています。国の情勢を踏まえ政府施策が大きく影響しています。
海外女子を雇用する企業のメリット
さて、技術者不足が深刻化するなか、企業は海外女子を敢えて雇用するメリットはあるのでしょうか。はい、声を大にしておおいにあります!
技術者を量と質の観点から確保する!
国内の実情を踏まえると、技術者不足を解消するため長期的視点での育成に頼り続けるだけで良いでしょうか。あくまで育成は、”対象が存在する”から成り立つわけです。対象者が減少一方の国内人材のみに頼るのは限界があります。上述データにある通り、技術開発のベースとなる知識を会得した人材を国内へ呼び寄せる方法は、数確保において単純に有効であると考えます。その先に質の向上を見据え、企業による教育により技術力含めた能力向上に務めることが大切です。
異文化適応力が高い(高コミュ力)
総体的に技術者の方々はコミュニケーション能力が低い。これは世間が認識しているあるあるです。長年多くの海外人材と対面している経験値からしても、この認識が間違っていないことは否めません。ただし、一つ言えることは理工系海外女子は比較的(理工系男子と比較すると)コミュニケーション力が高いという点です。長年男性社会で過ごしてきた特性上、対話を持って環境に馴染んできた経験があります。その環境のおかげでコミュニケーション力の磨き上げができていると思います。職場では、理工系技術者の開発現場は、チームでのプロジェクト推進が環境として多く、チーム内あるいは部署を超えてのコミュニケーションは意外と日常です。故にコミュ力が備わる環境+元々持ち合わせている高いコミュ力がさらに備わる循環。そのような技術者はやはり重宝されますし、評価も高いです。
ダイバシティ文化形成の起爆剤
企業内ダイバシティ文化形成が主なトレンドでしたが、それを促進するきっかけとなるのが、理工系海外女子です。これまで日本企業の中で見たことのない&加わることのない括りの方々です。(これまでのマジョリティはビジネススーツに身をつつんだ男性一色だった。思考性&保有する価値観も似通った方々が中心だった)理工系知識+女性+外国籍、となると見た目も中身も異なる人たちが日本企業に入る、いわばショック療法(ギャップを感じるきっかけとなる)に近いものではないでしょうか。ダイバシティ文化形成に躍起となっていますが、対応はシンプルで「違いを持つ既存社員が声を上げやすい環境作り」「全く異なる方々をまずは受入れる」ことを企業対応とすることで、これまでとは異なる文化を生み出し、企業の強みとすることができます。
上記利点以外に企業の大きなメリットは、「既存ビジネス(サービス/製品)をより良いものとする」ことが理工系海外女子により実現できます。海外女子の持ち合わせる最新STEM分野の知識や知見(IoT, RPA,ロボティクス,科学的研究成果)などを既存ビジネスに掛け合わせることで、新規事業(製品/サービス)を生み出せます。それをやるかやらないかは企業次第ですが、着手することは可能なはずです。
また、イン/アウトバウンド対応においても海外女子の存在は必要不可欠です。イン/アウトバウンド対応に関して、そもそも自社製品(サービス)を「誰に売るのか」を明確に定めます。その後、プロジェクト推進役を経験豊富な日本国籍社員に任せることが日本企業が長年策として講じてきました。しかしながらそのような人材は数的に限られます。その打開策として、例えばインドへ進出したい場合、現地地域の人、エリア特性、商習慣などを知り得たインド国籍の方を雇用する。観光で日本を訪れたタイ国籍観光客へ自社製品を売りたい場合、同プロジェクト推進リーダーはタイ国籍方々の購買意欲をできるだけ知り得ている&同質価値観に理解のあるタイ国籍社員のほうが牽引役として適当ではないでしょうか。
海外女子の雇用から活躍までのステップ
では、どのようにして理工系海外女子を採用すれば良いのか?
本稿では具体的に触れませんが(次回詳細をお伝えします!)、ステップをまとめておきます。
〈理工系海外女子の採用ステップ〉
1. 採用
2. 受入
3. 活躍推進
この3つのステップは日本国籍人材採用と差異はありません。
1. 採用
まずは外国籍人材採用を初めて実施する多くの企業が取り組んでいる方法を共有します。
1) 知見と経験を持ち合わせている人材紹介エージェントへ依頼する
海外拠点を持つエージェントを選択、もしくは外国籍人材ある一定期間実施しているエージェントを選ぶと良い。
2) 外国籍人材へリーチできる媒体に案件掲載をする
Glassdoor(国内外外国籍へリーチ可能),Indeed(主に日本居住外国籍へリーチ可能)。また、各国特有のポータルサイトやJob掲載サイトをリサーチし利用することもおすすめ。(インドNaukri, 欧州Zingなど)
3) オンラインマーケティング活動を独自に展開
自社採用サイトの多言語対応を実施し、各SNSマーケティングを執り行うことで母数形成を図る。
4) 各国現地工科大学と連携しリクルーティング
ダイレクトリクルーティングも一
つの方法。各国の教育期間と繋がることで実現できる。海外人材の新卒採用支援専門の日本エージェントを利用することも推奨。
2. 受入
内定合意から受入までの流れです。
1) 内定者がスムーズに入社するための準備
ビザ申請サポート、生活する上でのサポート(住まい、銀行口座、携帯契約など)を必要に応じて対応する。それぞれ対応の仕方がわからない場合、専門サービス提供会社へ問い合わせすると良い。
2) 教育
入社までに日本語教育や日本特有のルール(仕事を進める上で)を知るなど、事前に内定者がインプットしておくべきことを必要に応じて提供。受入れ社員への教育実施があると尚良い。異文化から来るメンバー受入に伴い、知っておいた方が良いこと(宗教、言語レベル、習慣の違い)インプットする必要がある。
3) その他
準備段階で可能な限り対応できることは行う。ある企業では、ご家族に面会して安心感を与えたり、入社までに業務委託契約を内定者と企業の間で交わし業務に慣れた上で来日してもらうなど、相互距離と入社ギャップ(期間)を埋めるための工夫をしている。
3. 活躍推進
受入れから活躍推進までの流れです。
1) ビジョンミッションの理解
企業内の共通意識となる「企業の大切にしていること」「目指す方向性」「アクションコード(行動規範)」を初期段階で説明をし理解してもらう。日本文化の理解に加え、企業文化の理解を促す。
2) キャリアパスや制度の説明と理解
企業の人事制度の説明同様、「キャリアパス」をしっかりと解説し理解してもらうよう努める。外国籍社員の特性上、企業に明確なキャリアパスが存在し(ているのが当たり前の意識)、それを理解したい想いが強い。体系的なキャリアパスが存在するorしない場合はそれも含めて説明すること。
3) その他
定期的なフォローアップをオンライン/オフラインで対応する。オンラインでの対応一例として、気軽に相談できるコミュニケーションツールなどを用意する、困ったことがある場合情報を得られる場(イントラや社内ツール)を提供するなどを検討することができる。オフライン活動としては、管理職やメンター/人事による定期的フォローアップの実施、第三者へ相談できる仕組み作りなどの対応がなされていると良い。
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