日本は現在、あらゆる業種で人手不足が深刻化されています。
素形材産業も人手不足が深刻な産業の一つであり、2023年には6.2万人が不足すると予想されています。そんな中日本政府は人手不足の解決策として特定技能「素形材産業」を施行しました。
今回dnusでは、特定技能「素形材産業」について職種から取得方法まで徹底解説します。
素形材産業の現状について
素形材産業とは?
まず、「素形材」とは金属やプラスチック、ファインセラミックスなどの素材に熱や圧を加えることで形が与えられた部品や部材のことを指します。
例えば、日本の輸出産業を支える自動車は、鋳物(エンジン部分)や金属プレス品(自動車のボディ部分)など、多くの素形材によって作られています。
これらの部品・部材に形状を変えたり加工したりすることで、製品を製造する産業のことを素形材産業と呼びます。
素形材を組立産業に供給する産業である「素形材産業」は、日本経済にとって必要不可欠な産業です。
素形材産業の規模について
(出典:経済産業省 平成30年工業統計調査 産業別統計表(概要版))
経済産業省の工業統計表によると、素形材産業の全体の従業員数は、約18万人で、4兆7,000億円の出荷額をほこります。
現状と課題について
素形材産業は、日本社会の少子高齢化と企業が安価な労働力を求め、海外に進出したことから働く人が年々不足しています。
日本政府は、素形材産業の人手不足の解消に向けて、生産性の向上や国内人材の確保に取り組んできました。
しかし人手不足が完全に解消されるのは難しく、経済産業省によると素形材産業における人手不足の見込み数は、向こう5年間で21,500人となっています。
有効求人倍率
平成29年度の素形材産業に関連する職業分類における有効求人倍率は、2.83倍となっています。
職種における有効求人倍率は、例でいうと鋳物製造工が3.82 倍、鍛造工が4.32 倍、金属プレス工が2.97 倍となっています。
全業種の有効求人倍率が1.46倍なので、全業種の有効求人倍率と比較しても大きく上回る結果となっています。
特定技能1号「素形材産業」について
そもそも特定技能とは?
そもそも特定技能とは何でしょうか?
dnusでは特定技能に関する情報をひとつひとつ分かりやすく解説しています。
合わせてこちらの記事をご覧下さい。
【253 番の記事が挿入されます】
特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・船用工業の2業種です。特定技能「素形材産業」は現時点ではその特定技能2号の2業種の1つに指定されていません。
特定技能「素形材産業」の受入れ見込数
特定技能「素形材産業」分野において、2023年までの受入れ見込数は最大2万1,500人とされています。
特定技能「素形材産業」を取得した外国人を受け入れると共に、毎年約1%の生産性向上と、国内人材の確保による労働効率化(2023年までに3万人程度)、また国内人材を2023年までに約1万人~1万5,000人確保しても、なお不足すると見込まれています。
特定技能「素形材産業」の対象となる業務は?
次に、特定技能「素形材産業」で行われる業務について説明します。
特定技能「素形材産業」の対象となる業務は全部で13業務あります。
対象となる業務は以下のとおりです。
①鋳造
②鍛造
③ダイカスト
④機械加工
⑤金属プレス加工
⑥工場板金
⑦めっき
⑧アルミニウム陽極酸化処理
⑨仕上げ
⑩機械検査
⑪ 機械保全
⑫塗装
⑬溶接
それぞれの業務内容を説明します。
①鋳造
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で溶かした金属を型に流し込み製品を製造する作業に従事
②鍛造
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業に従事
③ダイカスト
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で溶融金属を金型に圧入して高い精度の鋳物を短時間で大量に生産する作業に従事
④機械加工
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や 切削工具を用いて金属材料等を加工する作業に従事します。
⑤金属プレス加工
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞り等を行い成形する作業に従事します。
⑥工場板金
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事します。
⑦めっき
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業に従事します。
⑧アルミニウム陽極酸化処理
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断でアルミニウムの表面を酸化させ、酸化アルミニウムの皮膜を生成させる作業に従事します。
⑨仕上げ
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業に従事します。
⑩機械検査
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う作業に従事します。
⑪ 機械保全
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業に従事します。
⑫塗装
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事します。
⑬溶接
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で熱又は圧力若しくはその両者を加え部材を接合する作業に従事します。
また、上記に当てはまる業務に従事する日本人が普段従事する関連業務に、外国人労働者が付随的に従事することが可能です。
例えば、関連業務として、以下のものが予想されます。
・原材料や部品の調達・搬送作業
・各職種の前後における工程作業
・クレーンやフォークリフトなどの運転作業
・清掃や保守管理作業
素形材産業の業務の1つである鋳造で例を挙げると、加工品の切削、ばり取り、検査業務、型の保守管理等に従事することができます。
(参照:素形材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針)
雇用形態は?
直接雇用のみ可能です。
外国人が特定技能「素形材産業」を取得するには?
では特定技能1号「素形材産業」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。
もう1つは、技能実習2号を修了して、無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。
ではそれぞれの方法について詳しく説明します。
特定技能「素形材産業」の取得方法|①「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する
特定技能評価試験について
まず、特定技能1号「素形材産業」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「素形材産業」では経済産業省の定める「製造分野特定技能1号評価試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、こちらをご覧ください。
【254 番の記事が挿入されます】
「製造分野特定技能1号評価試験」について
製造分野特定技能1号評価試験は、外国人が来日する前に素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3つの分野における技能や知識を確認・評価するための試験です。
製造分野特定技能1号評価試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」が施行されてから、経済産業省が選定した機関が実施している試験です。
製造分野特定技能1号評価試験は、経済産業省が指定する19の業務区分毎に試験があります
19の業務区分は以下の通りです。
鋳造、鍛造、ダイカスト、機 械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処 理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリン ト配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装
素形材産業における「製造分野特定技能1号評価試験」の試験科目
上記でも述べたように、製造分野特定技能1号評価試験は全部で19業種の試験があります。
素形材産業では、その中の13業務で試験が実施されます。
素形材産業の13業務は以下のとおりです。
①鋳造
②鍛造
③ダイカスト
④機械加工
⑤金属プレス加工
⑥工場板金
⑦めっき
⑧アルミニウム陽極酸化処理
⑨仕上げ
⑩機械検査
⑪ 機械保全
⑫塗装
⑬溶接
素形材産業における「製造分野特定技能1号評価試験」では、学科試験と実技試験があります。
学科試験は100満点のうち65点以上で合格とし、実技試験では100点満点で60点以上が合格基準となります。
また、特定技能「素形材産業」を取得する際に、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
②退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①試験日において満17歳以上であること
※詳細は経済産業省の「製造分野特定技能1号評価試験実施要領」をご覧下さい。
日本語試験について
次にもう一つ、日本語試験として「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を試験するものです。
特定技能「素形材産業」の取得方法|②技能実習2号から特定技能「素形材産業」へ移行する
特定技能「素形材産業」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
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【79 番の記事が挿入されます】
特定技能「素形材産業」の外国人を受け入れるために
前章では、外国人労働者が特定技能「素形材産業」を取得する方法について詳しく紹介しました。
次に、特定技能「素形材産業」資格を持った外国人労働者の雇用(受入れ)を検討している企業の方が、どうすれば特定技能「素形材産業」の外国人労働者を受入れることができるか説明します。
特定技能「素形材産業」の外国人を受け入れるために、特に以下の2項目に注意する必要があります。
①業務
②協議会への加盟
それぞれ説明します。
特定技能「素形材産業」の外国人を受入れるために|①業務
1つ目に、特定技能「素形材産業」を取得した外国人労働者が行う作業内容が、素形材産業に該当する業務である必要があります。
素形材産業の対象業務となる範囲は以下のとおりです。
(出典:経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」)
また、特定技能「素形材産業」を取得した外国人労働者が業務する事業場は、上記の産業内において、直近1年間で「製造品出荷額等」が発生している必要があります。
製造品出荷額等とは、直近1年間の製造品出荷額、加工賃収入額、くず廃物の出荷額およびその他収入額の合計のことで、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税及び地方揮発税を含んだ額のことを言います。
詳細は、法務省の「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」をご覧ください。
特定技能「素形材産業」の外国人を受入れるために|②協議会への加盟
2つ目の注意点として、経済産業省が組織する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する必要があります。
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会には必ず加入する必要があり、協議・連絡会では、以下の活動を行い、構成員の連携強化や事業者の情報把握などを目的としています。
活動内容
・特定技能「素形材産業」の外国人を受け入れる制度の趣旨や優良事例の周知
・ 特定技能所属機関等に対して法令遵守の啓発を行う
・就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報把握及び分析
・ 地域別の人手不足の状況の把握及び分析
・特定技能外国人受入れに必要なその他の情報・課題等の共有・協議
また、出入国在留管理庁へ以下の誓約書の提出が必要になります。
特定技能「素形材産業」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「素形材産業」について詳しく紹介しました。
素形材産業は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、技能実習生の受け入れ増加とともに、特定技能「素形材産業」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、外国人労働者が増え、人手不足の状況が少しでもよくなればと思います。
特定技能に関して概要をまとめた資料はこちらからダウンロードできます。
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