私の会社には、現在、8名の外国人社員がいます。
総社員数に対して15%を占めています。
国籍はバラバラで、日本も含めると計9ヵ国の人が働いています。
求人への応募が途切れることはなく、年間2~3人ペースで入社するほど外国人採用は順調です。
外国人採用を始めたのは6年前の2013年のことです。
当時の採用担当は 、人事1年目の私1人でした。
実際に1から外国人採用をやってみて最も大変だと感じたのは、「最初の1人が入社し定着してくれるまで」でした。
そこで今回は、私の会社が1人目の外国人採用に至るまでとその注意点をまとめてみました。
外国人採用を始めるときに立ちはだかる2つの壁
外国人採用を始めるときに、2つの壁が立ちはだかります。
1つは社内の壁、もう1つは求職者の壁です。特に壊すのが大変なのは社内の壁の方です。
まずは社内の壁の話をします。
いきなり自分の会社で外国人採用が始まることになったら社員は困惑します。私の会社でも不安の声があがりました。
「なんか怖い」
「英語できないのにコミュニケーションが取れるか不安」
「営業先のお客様がびっくりするのでは…受け入れてもらえるだろうか」
漠然としたものから、日々の業務に対する具体的なものまで、社員の意見は様々。
それだけでなく、「そもそもなぜ外国人採用を始めなければいけないのか」という否定的な気持ちが根深く、納得してもらうのは難しいことでした。
次に求職者の壁です。
外国人が日本の企業への入社にあたって心配するのは、「日本人のとにかく仕事する文化に馴染めるか」、「敬語が難しい」といった、日本企業で働く上で日常的にぶち当たりそうな問題です。
その他、宗教に関することも気になるポイントです。断食の期間があったり、お祈りする時間が決まっていたりするので、そこも配慮してもらえるのかということです。つまり、主に文化の違いが心配事なのです。自分は日本の文化に馴染めるか、入社する企業で自分の文化を受け入れてもらえるか、を心配するのです。
次項ではこの2つの壁を壊すために実際に私の会社で取り組んだことを紹介します。
立ちはだかる2つの壁を壊すためにやったこと
先ほど壊すのが大変だといった社内の壁の方ですが、実は私の会社では壁を壊せないまま外国人採用を始めちゃいました。(笑)
スピード感があるのが私の会社のいいところでもあるんですが、社長はほんとにやるって決めたらすぐやっちゃうんですよね。つまり、壁を壊すためにやったことは特にないということになります。お役に立てず、すみません。(笑)
当時社長は
「外国人採用やるから」、「必要なことだから」、「じゃ、よろしく!」
くらいのことを一部の社員に雑談程度に伝えていただけでした。
驚いた社員たちが採用担当の私のところに来て
「外国人採用はじめるって!?どういうこと?」
と聞きに来たものです。私はその都度説明しました。
「日本の人口減少から人手不足が予想されることと、うちの会社の海外展開を見越して、外国人を採用する流れみたいっす!」
と話すと、
「ほぉ…」
と理由自体は理解してもらえましたが、「現実的に難しいっしょ」と気持ちとしては後ろ向きな様子でした。
結局、「なんでうちの会社に今外国人を入れなきゃいけないんだ」っていう空気のまま一人目の外国人社員が入りました。
強行突破で社長の独断で入れた形です。でもこれ、その入ってくれた一人目の社員がすごく“いいやつ”だったおかげで、彼自身が身をもって壁を壊してくれました。一体どんな人物だったのかは次項で紹介します。
求職者の壁の方は、相手が理解できるまで、繰り返し・明瞭に・事前に・説明することが重要です。
日本の求職者と接するときと同じで、ミスマッチがないように情報伝達をします。はじめて外国人の求職者と接するわけなので採用担当側も多かれ少なかれ不安な気持ちになりますよね。
でもそれは相手に伝わらないように、“普段通り”に接することが大切です。
1人目の外国人社員の入社が決まった時には
「やりにくい部分があったらお互いに遠慮なく伝えよう」
と約束しました。
それから、日本の保険や税金の仕組みは詳細に説明する必要があります。
実はこれ、1人目の外国人社員の時に私が徹底できず、あとから
「年金というものをなんでこんなに支払わないといけないんだ?」
「総支給額と手取りの額にこれだけ差が生じるのはどうしてだ?」
という話になってしまい、反省した経験があります。それからというもの、入社前に必ず現実的に説明するようにしました。
1人目で採用すべき外国人の人物像とは?
社内の理解を得られないまま外国人採用を始めたり、保険に関する説明不足があったりという反省点もあったわけですが、実際に私の会社に入社してくれた1人目の外国人社員は見事に社内に馴染んでくれて今でも活躍しています。
では、そんな彼にはどんな特徴があったのか、4つリストアップしてみたので解説していきます。
自国の都合を押し付けない人
1つ目は、「自分の国ではこうだから…」という言い訳をしない人です。
これかなり重要です。“郷に入っては郷に従え”の精神で、自分は“日本の企業”に就職するんだという覚悟ができている人が良いです。
「自分の国ではこうだから」という言い分を認めてしまうと、受け入れる側の日本人社員もマネジメントがうまくいかないときに言い訳ができてしまいます。
つまりどういうことか、私の実体験をお話します。
社会人3年目の時に、私の元に外国人の部下ができました。
彼は仕事が思うようにいかないとき
「日本人のやり方と自分の国のやり方は違うからできません」
と言うことがありました。
当時の私は、
「国籍のことを言われたら仕方ないか…」
という心境になってしまったんです。
今思えば、上司の仕事は部下の仕事の成果をあげることですから、国籍の違いは言い訳になりません。これでは両者にとってマイナスですよね。
在日年数が長く、日本に慣れている人
2つ目は、在日年数が長い人です。最初に受け入れる仲間としては会社に馴染みやすくて助かります。
日本の大学を出ていたり、5年以上日本に住んでいる人だったりすると、既存社員とのコミュニケーションもとりやすいです。
日本語レベルの高い人
3つ目は、日本語レベルの高い人です。
私の会社では日本語検定などの資格の有無は関係なく採用しますが、1人目の外国人社員であれば話は別です。
円滑にコミュニケーションがとれる日本語レベルは必要です。
ただでさえ既存社員は外国人とうまくやっていけるか不安なので、言語の壁を感じさせない人材は、1人目の外国人社員に適しているといえるでしょう。
いいやつを採用すること
4つ目は、“いいやつ”であることです。
・社員のみんなから愛される人物であること。
・真面目に仕事に取り組む。
・自分から進んでコミュニケーションをとろうとする。
・向上心がある。
そんな人物を探し出すのはたしかにハードルが高いですが、外国人採用を始めたばかりの社内は抵抗感を持っているので、ここは採用担当の頑張りどころです。
“いいやつ”に具体的な定義はありませんが、自社の社員に馴染めそうな人物を探し出しましょう。
ここまで4つの特徴を紹介してきましたが、さらに欲を言うと日本でのアルバイト経験がある人もおすすめです。
日本人が習慣として行っていることがすでに感覚として備わっている人が多いです。例えば、私たちが当たり前に使っている「お疲れ様です」という言葉が自然と使えたり、目上の人やお客様への敬意を敬語やお辞儀で表現するということを分かっていたり、ですね。
1人目の外国人社員定着が会社に与えた2つの良い影響
1人目の外国人社員の定着は、会社にとって嬉しい2つの効果をもたらしました。
社内が外国人採用に前向きになり、採用活動がスムーズになった
1つ目は、社内がその後の外国人採用に前向きになったことです。
1人目の社員が“いいやつ”だと、外国人に対してのネガティブイメージが払拭されます。
さらに、一緒に仕事をしていく中で、「自分たちは外国人とうまくやっていける」という自信も得られます。
結局は、現場の社員が外国人と一緒に仕事をするわけですからこれは重要なポイントですね。
社内が外国人採用に否定的だと、採用担当は困ることだらけです。
そもそも面接官もお願いしにくいですし、面接中も「外国人だからな…」という色眼鏡で見られてしまいます。また、入社後にあなたがメンターとして責任をもってくださいねとも言いにくいです。
一方で、外国人社員本人も相談できる人がいなくて困ってしまいます。
「こんな感じなら外国人採用を推進しても問題ない」という雰囲気になれば、採用活動がスムーズになります。
外国人の求職者が増え、採用の好循環ができた
2つ目は、外国人の求職者が増えたことです。
すでに外国人が活躍しているという実績があるので安心感を与えられるのです。
実績がある→安心する→入社が決まる→実績が増える→応募が増える→外国人社員が増える→実績が…
という好循環になり、コンスタントに応募がくるようになります。
外国人採用におけるまとめ
今回は、1人目の外国人社員採用のポイントをお話ししました。まとめると以下のポイントが重要です。
・社内には、事前に外国人採用を始める理由を根気よく説明する
・求職者には、日本の保険や年金などの制度を入社前に説明する
・1人目の外国人社員は「国籍の違いを言い訳にしない」、「在日年数が長い」、「日本語レベルが高い」、「“いいやつ”」がおすすめ
・1人目の外国人社員が定着すると、社内がその後の採用活動に前向きになる
・1人目の外国人社員が定着すると、外国人求職者が増え好循環になる
文中にいくつか登場した私の失敗体験も参考になれば幸いです。
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