外国人労働者の受け入れ拡大を可能にした法案(改正出入国管理法)の中身

執筆者 7月 18, 2019ニュースコメント0件

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皆さんは入管法(出入国管理法)を知っていますか?入管法は、外国人を受け入れるために必要な法律であり、この中身が今いる外国人や日本に着たがっている外国人に大きな影響を与えます。そんな入管法が先日施行されました。外国人労働者の受け入れ拡大を可能にした法案と言われ、どのような中身なのか、そのあたりを解説します。

 

現状の外国人労働者の受け入れ規模は?

そもそも現在の外国人労働者はどれだけいるかですが、2017年10月時点で130万人弱とされています。2016年10月時点と比べると18%も急増しており、かなり伸びていることが分かります。東日本大震災などの影響もあって、2012年まででいったんその伸びは止まりましたが、アベノミクスの影響もあってか、2013年から再び上昇を開始し、2016年に100万人を突破、その勢いで130万人近くまで増えました。

 

日系人などの身分に基づく在留資格で働く人が一番多いものの、技能実習の資格で働く人、留学生が生活のためにアルバイトをする資格外活動の割合がかなり増えています。現状は中国人が多いものの、近年ベトナム人留学生が増えており、その伸びは前年比40%に迫ります。東南アジアの労働者が増えるなど、今までの中国人やブラジル人が比重を占める時代ではなくなり、多国籍化しているのも大きな特徴です。

 

外国人労働者の受け入れを左右する入管法とは?

 

入管法は略称であり、正確には「出入国管理及び難民認定法」と呼びます。日本への入国や帰国、日本から出国に関すること、また外国人が日本に在留する場合の許可や手続きなどを扱う法律であり、難民条約に基づく難民認定に関するやり方などを決めています。過去の入管法では、在留資格が記号化され、職員には理解できても世間一般の人には理解できない形であったため、1990年には今のような在留資格の表記に変わっています。

 

入管法が人手不足によって在留資格に手が加えられたのは、今回の改正入管法だけではありません。この同じ年、定住者という在留資格が設けられました。日系3世までが定住者として認められ、在留資格が与えられることになりましたが、この当時はバブルの真っただ中。働き手が不足していたために外国人労働者を受け入れたい経済界の要望を、時の政府が受け入れて改正されました。今日において日系ブラジル人が多くいるのは、日系人が入国しやすくなったからです。

 

2009年には入管法の見直しが行われます。現在では当たり前となっている在留カードの交付を始め、一部在留資格の一本化、技能実習制度の見直しがなされます。2014年には再び在留資格に手直しが加えられ、高度専門職の創設や別の在留資格の一本化が行われましたが、これとは別にクルーズ船の外国人を対象に、簡単な手続きで除率を認める制度をスタートをさせ、これが不法就労の温床になっていると批判を受けました。

 

入管法は2018年にも改正されますが、これに関しては次のところで説明します。

 

改正入管法で外国人労働者の受け入れがどう変わる?

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1.在留資格「特定技能」が創設

大きな目玉であり、保守層を中心にかなりの反発を招いたとされる「特定技能」の創設。事前に日本語のテストや特定の産業に関する技術を身につけた人が通算5年間日本で働けるというものです。技能実習制度では転勤などができず、働く自由がある程度制限されていましたが、試験をパスした業種の中であれば転勤をしても大丈夫という特徴があります。

 

特定技能には1号と2号があり、1号だと奥さんや子供などの帯同は認められないものの、2号になれば帯同が認められます。批判を受けたのはこの部分で、帯同を認めるということは移民政策のようなものではないかという意見が噴出しました。その中で、現状特定技能2号に該当する業種はなく、少なくとも今後数年は現れないため、すぐに批判のような展開になることはありません。

 

2.技能実習生がそのまま働ける

多くの外国人を受け入れるために入管法を改正したと捉える人が多いですが、実際のところはそこがポイントではなく、今いる技能実習生を長く働かせるという意味合いが強い法律です。技能実習制度では最大5年しか働けないため、5年後には出国せざるを得ない状態でした。また一から指導をし直すのは企業側にとって損失でしかないため、この技能実習生の受け皿となるものが必要になり、在留資格である特定技能が登場します。

 

特定技能が登場したことで、もう5年間は日本で働けるようになるため、人によっては最大10年日本に滞在し、仕事が行えます。特定技能2号になれば場合によっては永住の可能性が出てきます。技能実習生にとってみれば日本人の配偶者を探さなければ永住できなかったものが、特定技能2号がある業種であれば永住権をゲットできるかもしれません。底に関しても賛否は分かれますが、改正入管法によって今までとは違う形で永住権を手に入れる外国人が増える可能性があります。

 

3.地方の人材不足が緩和

日本総研が行い、2019年に発表されたアンケート調査では、70%以上の企業において人手不足であることが明らかになっています。その中で人手不足への対応の項目では人材育成に力を入れると答えた企業が多かったものの、外国人を採用するという声が決して無視はできない状態に。特に宿泊業や機械・金属、繊維・衣服などの分野で目立ちました。また中小企業ほど外国人を採用して人手不足を解消する動きが見られます。

 

近年有効求人倍率は大きく1を超えていますが、富山県ではなんと2を超えるなど、地方を中心に人材不足が顕著になっています。これを外国人労働者で埋めようとする動きが強く、地方を中心に在留する外国人の数が年間ベースで10%以上増えるようになっています。東京でもそれなりに増えていますが、特に西日本でかなり大きく増えており、外国人労働者が人手不足を解消させるためのコマに使われているような形です。

 

技能実習の資格で在留する外国人はかなり増える中、特定技能が創設されたことで技能実習生として働いていた人たちがそのまま特定技能の資格へスライドでき、新たに5年間働けます。もはや外国人労働者なしには仕事が回らない事業者が増えており、今回の改正によって人手不足を少しでも緩和できるのが魅力とされています。

 

何より2019年から2020年にかけて東京オリンピックが開催されることで人手不足はさらに加速する他、2025年には大阪万博があり、賃金的にもそちらに人が集まりやすくなり、地方の人手不足は慢性的なものになりそう。その穴埋めをするのが外国人労働者であり、入管法の改正は強力なアシストになると期待されています。

 

4.外国人労働者の働き場所が増える

これまでの日本では、いわゆる単純労働と呼ばれる分野に関して外国人を働かせることは禁止にさせていました。2018年、人手不足が深刻化してきたことで方針を大きく転換、建設や農業、宿泊、介護、造船などでも外国人労働者が働ける環境が整います。これにより、技能実習制度では限られていた分野が開放され、堂々と労働者として働くことができます。宿泊の分野は外国人労働者の受け入れに積極的な企業が多く、外国人観光客対策として考えるところもあるなど、今まで以上に外国人労働者の受け皿は広がっています。

 

働き場所が増えることは、外国人労働者にとってはプラスであると共に、特定の業種内であれば転職も可能です。技能実習制度の時には最初の3年間で転職が出来ず、安い給与の中で働かされることがあった中、企業を吟味した上で働けるようになるメリットがあります。

 

外国人労働者の受け入れ拡大も課題は山積

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外国人労働者を堂々と受け入れられるようになる一方、課題もあります。これまで外国人労働者を雇用してこなかった企業が雇用した場合、外国の慣習や文化を一切理解せず、自分たちのやりたいようにやることでトラブルになってしまうことが考えられます。ネットを通じ、窮状を訴える技能実習生が出てくる他、日本に対するイメージが悪化する事例が見られるなど、いいことばかりではありません。

 

意外と知られていないのは、外国人労働者雇用労務責任者を用意しなければならないことです。10人以上受け入れる場合に置くことになっていますが、誰がその役目に就くのかを事前に決めなければなりません。すべてを外国人労働者に委ねた場合、場合によっては不法就労などの可能性が生じ、雇用者が刑事罰に問われ、事業どころではなくなることも考えられます。

 

これらを防ぐには、外国人に対する理解が必要です。安い労力としか考えていないところでは、遅かれ早かれ何かしらの問題が生じます。そもそも特定技能の資格を得てやってきた外国人は日本語のスキルもその分野の技能もそれなりに有しており、熱意はあります。その熱意を踏みにじることをすれば、当然トラブルは発生することでしょう。気持ちよく働き、自分たちを助けてもらうために、精いっぱいの振る舞いをする、それが問われています。

 

まとめ

改正入管法では、事実上の移民政策と批判を受け、保守層の反発があった中、半ば強引に法案を通し、施行されました。特定技能に関する運用も始まったばかりで、技能実習制度からの移行もこれから本格化します。

 

多くは出稼ぎのためにやってきた労働者なので、自分に使うお金はそこそこに本国に送金する人ばかり。そんな中で精いっぱいのアシストを企業側がしなければなりません。技能実習制度の運用を見る限りでは、劣悪な環境、低賃金での雇用など克服すべき課題は多く、入管法が改正されたことで、それがどのようになるか注目が集まっています。今は人手不足であるものの、今後人手不足ではなくなった場合にどのように扱われるかも気になるところです。どのような事態を招くことになるのか、大阪万博開催の2025年まで、その動向に注目しなければなりません。

 

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著者 アドミン

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