日本ではあらゆる業種で人手不足が深刻化されています。
農業も人手不足が深刻で、農業の就業人口は大きく減少しているだけでなく、農業就業者の高齢化も進んでいます。そんな中日本政府は人手不足の解決策として特定技能「農業」を施行しました。
今回dnusでは、特定技能の業種「農業」について、特定技能「農業」の業務内容や耕種農業と畜産農業との違い、特定技能「農業」の外国人籍の雇用形態、特定技能1号「農業」の試験科目や、農業特定技能協議会、特定技能「農業」を保持した外国人籍の受入れ方法まで徹底解説します。
この記事で分かること
・特定技能「農業」が誕生した背景
・特定技能「農業」の業務内容
・耕種農業と畜産農業の違い
・特定技能「農業」の雇用形態について
・特定技能「農業」の試験科目
・農業特定技能協議会について
・特定技能「農業」の外国人籍を受け入れる方法
農業の現状について
まず、特定技能「農業」が誕生した背景について解説します。
現在、日本の農業では人材不足の解消が必要不可欠となっています。
農林水産省によると、農業就業人口は2000年に389.1万人でしたが、2017年には181.6万人となり、大きく減少しています。
また、農業就業者の平均年齢も、2000年は61.1歳でしたが、2017年では66.7歳となり、農業就業者の高齢化が進んでいることがわかります。
有効求人倍率
平成30年度の農業分野における有効求人倍率は、「養畜作業員」が3.11倍、「農耕作業員」が1.72倍となるため、全業種の有効求人倍率が1.46倍と比較しても、有効求人倍率がかなり上回る結果となっています。
農業分野の外国人労働者数
一方で、農業分野における外国人労働者の数が、年々増加傾向にあります。
外国人労働者数は、直近の5年間で1.9倍に増加しており、特に技能実習生の増加がグラフより分かります。
現在、日本政府は、農業分野の人手不足の解消に向けて、生産性の向上や国内人材の確保に取り組んできましたが、人手不足が完全に解消されるのは難しい状況となっています。
特定技能1号「農業」について
そもそも特定技能とは?
そもそも特定技能とは何でしょうか?
dnusでは特定技能に関する情報をひとつひとつ分かりやすく解説しています。
合わせてこちらの記事をご覧下さい。
【253 番の記事が挿入されます】
特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・船用工業の2業種です。特定技能「農業」は現時点ではその特定技能2号の2業種の1つに指定されていません。
特定技能「農業」の受入れ見込数
特定技能「農業」分野において、2023年までの受入れ見込数は最大3万6,500人とされています。
特定技能「農業」を取得した外国人を受け入れると共に、毎年約1%の生産性向上と、国内人材の確保による労働効率化(2023年までに約1万1,000人)、また国内人材を2023年までに約8万人確保しても、なお不足すると見込まれています。
特定技能「農業」の対象となる業務は?
次に、特定技能「農業」で行われる業務について説明します。
特定技能「農業」の対象となる業種は以下のとおりです。
対象の職種は、耕種農業と畜産農業の2種類です。
耕種農業と畜産農業の違いは一体何なんでしょうか?
結論を述べると、耕種農業は「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」、畜産農業は「養鶏」「養豚」「酪農」となっています。それぞれ解説します。
耕種農業と畜産農業の違い
耕種農業は「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」、畜産農業は「養鶏」「養豚」「酪農」となっています。
1.施設園芸(耕種農業)
温室やビニールハウス等の施設を利用して行う園芸作物の栽培作業をします。
2.畑作・野菜(耕種農業)
畑(露地)で行う作物を組み合わせた周年栽培作業をします。
3.果樹(耕種農業)
果樹園(温室等の施設利用を含む)を利用して行う果樹(その果実が食用に供される永年作物)の周年栽培作業をします。
4.養鶏(耕種農業)
採卵用鶏の飼養および採卵作業をします。
5.養豚(耕種農業)
豚を家畜として飼養する作業(繁殖作業、肥育作業等を含む)のことです。
6.酪農(耕種農業)
乳牛(将来の搾乳を目的とする子牛を含む)の飼養および牛乳の生産作業をします。
また、これらの業務に加えて、日本人が通常従事している関連業務に付随的に従事することも可能です。
例えば、農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、及び冬場の除雪作業などが挙げられます。
特定技能「農業」の雇用形態は?
直接雇用に加え、労働者派遣が認められています。
農業では1年の中で繁忙期と閑散期があります。そのため、外国人労働者に安定的な仕事を与えるために労働者派遣が認められています。
また、特定技能「農業」を取得している外国人は、農家だけではなくJAの集出荷施設でも働くことが可能です。
外国人が特定技能「農業」を取得するには?
では特定技能1号「農業」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。
もう1つは、技能実習2号を修了して、無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。
ではそれぞれの方法について詳しく説明します。
特定技能「農業」の取得方法|1「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する
特定技能評価試験について
まず、特定技能1号「農業」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「農業」では農林水産省の定める「農業技能測定試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、こちらをご覧ください。
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「農業技能測定試験」について
農業技能測定試験は、外国人が来日する前に農業等に関する技能や知識を確認・評価するための試験です。
農業技能測定試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」が施行されてから、一般社団法人全国農業会議所が農林水産省の補助を受け実施している試験であり、「耕種農業」と「畜産農業」の2種類の試験を実施しています。
「農業技能測定試験」の試験科目
上記でも述べたように、農業技能測定試験は①耕種農業全般と②畜産農業全般の2種類の試験があります。
1.耕種農業全般
まず、耕種農業全般は学科試験と実技試験があります。また、同時に日本語で指示された農作業の内容等の聴き取りができるかどうか試験されます。
(1)学科試験
・耕種農業一般
・安全衛生
・栽培作物の品種・特徴
・栽培環境(施設・設備・資材・機械)
・栽培方法・管理
・病害虫・雑草防除
・収穫・調整・貯蔵・出荷等
(2)実技試験
・土壌の観察
・肥料・農薬の取扱い
・種子の取扱い
・環境管理、資材・装置・機械の取扱い
・栽培に関する作業
・安全衛生等
2.畜産農業全般
農業技能測定試験の畜産農業全般は、耕種農業と同じく学科試験と実技試験があります。また、日本語で指示された農作業の内容等の聴き取りができるかどうかも試験されます。
(1)学科試験
・畜産農業一般
・安全衛生
・品種
・繁殖・生理
・飼養管理 等
(2)実技試験
・個体の取扱い
・個体の観察
・飼養管理、器具の取扱い
・生産物の取扱い
・安全衛生 等
試験時間は60分で、出題数は70問程度となっています。
特定技能「農業」を取得する際に、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
②退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①試験日において満17歳以上であること
※詳細は一般社団法人全国農業会議所の「農業技能測定試験ホームページ」をご覧下さい。
日本語試験について
次にもう一つ、日本語試験として「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を試験するものです。
特定技能「農業」の取得方法|2技能実習2号から特定技能「農業」へ移行する
特定技能「農業」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
関連記事
【79 番の記事が挿入されます】
特定技能「農業」の外国人籍を受入れる方法
前章では、外国人労働者が特定技能「農業」を取得する方法について詳しく紹介しました。
次に、特定技能「農業」資格を持った外国人労働者の雇用(受入れ)を検討している農家の方や企業の方が、どうすれば特定技能「農業」の外国人労働者を受入れることができるか説明します。
特定技能「農業」の外国人を受け入れるための準備の流れは以下のとおりです。
1.受け入れ期間との雇用契約の締結
2.支援計画の作成
3.地方出入国在留管理局への申請
1.受け入れ期間との雇用契約の締結
まず、雇用契約の雇用条件書の中に、業務内容、労働時間、休暇、賃金などを記入してもらうための欄を設ける必要があります。
その上で、受入れ農家又は企業が、外国人労働者を受入れる場合に満たすべき基準を満たしているか証明するための「誓約書」を作成し、地方出入国在留管理局で受入れ申請する必要があります。
2.支援計画の作成
事前ガイダンスや出入国する際の送迎、日本語学習の機会の提供などを具体的にどのように行うか定めた支援計画を作成する必要があります。
また、外国人労働者への支援は、農業者が自ら行う方法と、「登録支援機関」に業務委託する方法の2種類があります。
登録支援機関の一覧はこちらをご覧ください。
3.地方出入国在留管理局への申請
地方出入国在留管理局への外国人労働者の受け入れ申請は、受入れる外国人が申請時にどこに住んでいるかで申請内容が異なります。
・外国人が日本国内に在留しているとき
⇨在留資格変更の許可申請
・外国人が海外から来日するとき
⇨在留資格認定証明書の交付申請
特定技能ビザの申請・発給について詳しく知りたい方は、法務省または出入国在留管理庁のホームページもしくは窓口までお問い合わせください。
また、農業者の方が外国人労働者を雇用・受け入れする場合は、農業特定技能協議会へ入会しなければいけません。
詳しく紹介します。
農業特定技能協議会について
農業特定技能協議会とは、特定技能制度の農業分野において適切な運用を図るために設置された協議会です。
農業特定技能協議会の構成員は、「農業分野の受入れ機関」、「農林水産省」、「制度所管省庁」、および日本農業法人協会や全国農業会議所などが当てはまります。
入会の流れは以下のとおりです。
(参照)農林水産省「農業分野における新たな外国人材の受入れについて」p.9
また具体的な申請手続きや農業特定技能協議会に関する情報はこちらをご覧ください。
農林水産省「農業分野における新たな外国人材の受入れについて」
農林水産省「農業者向け特定技能外国人の受入れについて」
特定技能「農業」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「農業」について詳しく紹介しました。
農業は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、技能実習生の受け入れ増加とともに、特定技能「農業」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、外国人労働者が増え、人手不足の状況が少しでもよくなればと思います。
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