現在、日本では外国人を研修する制度として「外国人技能実習制度」があります。この制度は、日本で培われた技術を発展途上国の人材に伝え、経済発展に貢献するための人づくりを目的として設けられたものです。
ただし、2024年6月に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、技能実習制度は廃止の方向にあります。代わりに2027年4月1日から「育成就労制度」が施行されることが正式に決定しました。
本記事では、現行の技能実習制度の概要や受け入れ方式、企業側のメリットに加えて、新たに創設される育成就労制度についても解説します。外国人を研修する制度の全体像を把握したい人事・総務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
外国人研修制度(技能実習制度)とは?
外国人研修制度は、日本で培われた技術を発展途上国などの人に伝え、経済発展のための人づくりに協力するために作られた制度です。正式には「外国人技能実習制度」と呼ばれています。つまり、国際協力の一環として、外国人を研修するために作られた制度のことです。
技能実習制度の歴史と法律の変遷
海外の現地法人での社員教育の方法が評価され、1993年に制度化されました。その後、2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下、技能実習法)が施行されました。
技能実習法とは、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を図り、人材育成を通じた開発途上地域への技能・技術・知識の移転による国際協力を推進することを目的とした法律です。この法律の施行により、外国人研修生は在留資格「技能実習」で在留できるようになりました。
なお、技能実習制度はあくまでも研修を行う制度であり、日本の労働力不足を補うために利用されてはならないと技能実習法において明記されています。自国で取得困難な技術や知識を日本で学び、それを自国に持って帰って役立てることが本来の目的です。
しかし、制度開始から30年以上が経過し、人権侵害や労働環境の問題が後を絶たず、技能実習生の失踪も大きな社会問題となりました。出入国在留管理庁のデータによると、2023年には失踪者数が9,753人と過去最多を記録しています。こうした問題を受け、制度の抜本的な見直しが行われることとなりました(詳しくは後述の育成就労制度の項目で解説します)。
法務省の令和6年末統計によると、在留資格「技能実習」の在留者数は約45万6,000人に達しており、制度が日本の労働市場において重要な役割を果たし続けていることがわかります。
技能実習制度の仕組みと段階
技能実習の期間は最長5年間です。受け入れる側は技能実習計画を外国人技能実習機構(OTIT)に提出し、認定を受けた後、その計画に基づいて実習が行われます。
技能実習は以下の3段階に分かれています。
- 第1号技能実習(入国1年目):技能等を修得するための活動を行います。
- 第2号技能実習(入国2・3年目):技能等に習熟するための活動を行います。
- 第3号技能実習(入国4・5年目):技能等に熟達する活動を行います。
次の段階の技能実習に進むためには、学科や実技の技能評価試験に合格する必要があります。また、第3号技能実習ができるのは、優良な監理団体・実習実施者として認められた場合に限定されています。
【2027年施行】育成就労制度とは?技能実習制度に代わる新制度
2026年3月現在、技能実習制度に代わる新制度として「育成就労制度」の施行準備が進んでいます。ここでは、企業が早めに把握しておくべき育成就労制度のポイントを解説します。
育成就労制度の目的と概要
育成就労制度とは、2024年6月に公布された改正法に基づき創設された新しい外国人材受入れ制度です。施行日は2027年4月1日と正式に決定しています。
従来の技能実習制度が「技能移転による国際貢献」を目的としていたのに対し、育成就労制度は「人手不足分野における人材の育成・確保」を目的としています。具体的には、育成就労産業分野において原則3年間の就労を通じて、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目指しています。
つまり、制度の趣旨と実態の乖離が指摘されてきた技能実習制度に代わり、「人材確保・育成」という実態に即した目的へと転換されるということです。在留資格は「育成就労」が新たに設けられます。
技能実習制度と育成就労制度の主な違い
技能実習制度と育成就労制度の主な違いは、以下のとおりです。
- 目的:技能実習制度は「国際貢献・技能移転」、育成就労制度は「人材育成・人材確保」
- 在留期間:技能実習制度は最長5年、育成就労制度は原則3年(その後、特定技能1号へ移行可能)
- 転籍(受け入れ先の変更):技能実習制度では原則不可、育成就労制度では一定要件のもとで本人意向による転籍が可能
- 日本語要件:技能実習制度では入国時の日本語要件なし、育成就労制度では就労開始前にA1相当以上(日本語能力試験N5等)が必要
- キャリアパス:育成就労制度では特定技能1号→特定技能2号への移行が明確化され、長期的なキャリア形成が可能
- 監理体制:監理団体は「監理支援機関」に改組され、外部監査人の設置義務や独立性確保の要件が強化される
特に注目すべきは、転籍が認められる点です。技能実習制度では原則として受け入れ先の変更ができなかったため、劣悪な労働環境に置かれても逃げ場がなく、失踪につながるケースが多発していました。育成就労制度では、同一業務区分内で一定要件を満たせば、本人の意向による転籍が可能になります。
企業が今から準備すべきこと
育成就労制度の施行は2027年4月1日ですが、2026年4月15日から監理支援機関の許可申請、同年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請が開始される予定です。企業は以下のような準備を進めることが求められます。
- 現在の技能実習生の在留資格や契約状況の確認
- 新制度における雇用契約の見直し
- 監理団体(将来の監理支援機関)との連携強化
- 外国人従業員の日本語教育支援体制の整備
- 転籍リスクに備えた職場環境の改善
なお、施行後は3年間の移行期間が設けられ、技能実習制度と育成就労制度が併用されます。経過措置の詳細については、施行日前に申請した在留資格認定証明書の取り扱いなど細かい要件がありますので、最新の公式情報(出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aなど)を必ずご確認ください。
外国人技能実習機構の役割について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
外国人技能実習機構とは?外国人受入企業との関係を説明します!
外国人研修制度:受け入れ方式
外国人を技能実習生として受け入れるには「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方式があります。受け入れ先が企業なのか、認可を受けた監理団体なのかで方式が異なります。現在、団体監理型が全体の技能実習生数の95パーセント以上を占めています。
企業単独型
企業単独型は、日本の企業が単独で受け入れる方式です。海外の現地法人や取引先企業の常勤職員を日本の企業が直接受け入れ、外国人の研修(技能実習)を行います。国際的な取引が多く、海外にも子会社を持っている大企業が実習実施者(実習を受け入れる側)となるケースが多いです。
受け入れ企業が取引企業の場合には、1年以上の継続した取引または1年以内に10億円以上の国際取引がある場合に限られます。現地法人や取引企業との直接的なやり取りがあるため、企業内研修として技能を学ぶという特質上、一般に受入れ経路が限定され管理構造が比較的シンプルとされています。
また、技能実習を受ける者は18歳以上であること、自国で修得が困難な技能を学ぶこと、保証金等を徴収していないことなどが条件として定められています。
団体監理型
団体監理型は、主務大臣(法務大臣及び厚生労働大臣)が許可した監理団体が技能実習生を受け入れ、外国人の研修を行う方式です。なお、許可に関する調査や申請受付等の事務は外国人技能実習機構(OTIT)が担っています。監理団体には、事業協同組合(農業組合や漁業組合等)や商工会など営利を目的としていない団体が該当し、特定監理事業と一般監理事業に分けられます。
企業単独型と異なり、企業同士の直接的な取引ではなく、日本側の監理団体と送り出し国の送出機関との間で行われ、二国間の取り決めがあることが特徴です。
2026年3月現在、二国間の取り決め(協力覚書)を作成した国は、ベトナム・カンボジア・インド・フィリピン・ラオス・モンゴル・バングラデシュ・スリランカ・ミャンマー・ブータン・ウズベキスタン・パキスタン・タイ・インドネシア・ネパール・東ティモールの16か国となっています(出入国在留管理庁の公表情報に基づく)。
監理団体は技能実習生を受け入れた後、傘下の中小企業などで実務研修や技能実習を行います。また、団体監理型で受け入れている企業のうち、約65パーセントが零細企業となっています。
なお、育成就労制度の施行後は、監理団体は「監理支援機関」として新たな許可基準のもとで運営されることになります。許可基準はより厳格化され、外部監査人の設置や受け入れ機関との独立性の確保が求められます。
外国人研修制度:研修生と技能実習生の違いとは
技能実習法の施行によって、日本で行う外国人への研修制度を利用する者は1年目から技能実習生と呼ばれるようになりました。しかし、研修生と技能実習生はそもそも異なる立場にあります。それぞれの違いを見てみましょう。
外国人研修生
外国人研修生とは、在留資格「研修」で在留する外国人のことです。技能実習法が施行される前は、1年目は研修生と呼ばれ、座学や実務研修を主に行っていました。そして、2年目からは技能実習生として雇用関係を企業と結び、在留資格「特定活動」で技能実習を行っていました。
現在は1年目から在留資格「技能実習」が与えられるため、企業が実務研修を行う場合には技能実習生の受け入れのみとなりました。ただし、現在でも研修制度自体は存続しており、実務研修を行わない場合や国・地方公共団体などが関与する実務研修に限定されています。
なお、在留資格「研修」で在留できる期間は1年、6か月または3か月とされています。
技能実習生
技能実習生とは、技能実習法が施行されて以来、日本に技能実習を目的として在留する者のことを指します。1年目から雇用関係を結び、実習を行うことが特徴です。海外での講習を受講後、日本に入国して約1か月間の座学を修了した後、労働関係法令が適用されて実習が受けられるようになります。
法務省の令和6年末統計によると、在留資格「技能実習」の在留者数は約45万6,000人に達しています。出身国別ではベトナムが最も多く、次いでインドネシア、フィリピンと続きます。業種別では建設関係が最多で約10万6,000人、次いで食品製造関係、機械・金属関係の順となっています。
特定技能制度との関係
2019年4月1日より、人手不足が深刻な産業分野において、在留資格「特定技能」で外国人を受け入れることが可能になりました。特定技能制度は、一定の専門性や技能を持つ外国人が即戦力として就労するための制度です。
特定技能には1号と2号があり、1号は通算5年間の在留が可能で、2号に移行すると在留期間の上限がなくなります。2024年3月の閣議決定により、対象分野は従来の12分野から16分野に拡大されました。新たに追加されたのは「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野です。
また、2023年6月には特定技能2号の対象分野も拡大され、介護を除く11分野で2号の受け入れが可能になりました。これにより、技能実習から特定技能1号、さらに2号へとキャリアアップし、日本で長期的に働く道が開かれています。
育成就労制度の施行後は、育成就労→特定技能1号→特定技能2号という一貫したキャリアパスがより明確に制度化されることになります。
外国人研修制度:実習生を受け入れる企業側のメリット
外国人を研修する技能実習では、発展途上国出身の外国人が自国の経済発展のため、日本の進んだ技術を学ぶことができ、給料も受け取ることができます。それでは、技能実習生を受け入れて外国人を研修する企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
1. 国際力の向上
外国人を受け入れ、技能実習を行うことで、企業には国際力というブランドが生まれます。現在では、中小企業でも国際的に活躍している企業が多く、外国人を研修している企業として国際的な信頼度が向上することが期待されます。
また、従業員の中にも他国の文化を理解しよう・受け入れようという意識が生まれることで、社内の国際理解が進み、多様性のある組織づくりにもつながります。
2. 作業工程の見直し
すべての技能実習生が容易に日本語を理解できるわけではありません。しかし、技能実習において作業工程を理解できるように説明することは実習実施者の責任です。そのため、外国人実習生にもわかるように説明する必要があります。
必然的に作業工程を見直すことになり、今まで何となく行っていた慣習が省けるものだと気づくきっかけになるでしょう。作業工程の単純化は日本人従業員にとっても有益であり、無駄が削減されていくことで会社全体の利益へとつながります。
3. 社内の活性化と多文化対応力の向上
なお、人員不足による労働力不足を補うために技能実習生を受け入れることは制度上禁止されています。しかし、外国人技能実習生を受け入れたことをきっかけに、社内の活性化につながったケースも多く報告されています。日本人への給料と同額以上の支払いが義務付けられているため、企業側も技能実習生を1人の従業員として処遇するところが増えています。
意欲的に技能を学ぶ技能実習生は、ときとして日本人従業員以上の働きをし、それを見た従業員が良い影響を受け、企業全体の士気が向上したというケースも少なくありません。また、外国人技能実習生を受け入れていることで、国際協力や異文化に興味を持つ日本人が応募するケースも出てきています。
4. 技能実習に集中できる(団体監理型の場合)
外国人の技能実習を受け入れるための手続きは複雑であり、専門的知識も必要となります。管理にかかる費用を考えて団体監理型に切り替える企業も増えています。
監理団体である協同組合等が入国までの手続きや日本語教育を行うことで、実習実施企業は技能実習に集中することができます。研修システムを共有することで、日本人への研修も効率的なものへと改善できる可能性が高いです。
外国人研修制度:受け入れ時の注意点と法的リスク
外国人技能実習生を受け入れる際には、法令遵守が極めて重要です。違反した場合、企業には厳しい罰則が科される可能性があります。ここでは、企業が特に注意すべきポイントを解説します。
不法就労助長罪のリスク
在留資格で認められていない活動をさせたり、在留期間が切れた外国人を働かせたりした場合、雇用主は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。不法就労助長罪は出入国管理及び難民認定法第73条の2に規定されています。
従来の法定刑は「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科」でしたが、2024年6月に公布された改正法により「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの併科」へと引き上げられることが決まっています。この厳罰化規定の施行日は、公布の日から起算して3年以内の政令で定める日とされています。企業が「知らなかった」では済まされない時代であり、在留カードの確認と期限管理は人事・総務部門の必須業務です。
在留カードの偽造対策
近年、在留カードの偽造が巧妙化しており、目視だけでは真偽の判別が難しいケースが増えています。出入国在留管理庁は在留カード読み取りアプリを無料で提供しており、ICチップの情報を読み取ることで在留カードの真偽や有効性を確認できます。
外国人を雇用する企業は、採用時だけでなく定期的に在留カードの確認を行うことが推奨されます。特に在留期間の更新時期には、更新手続きが完了しているかどうかの確認が欠かせません。
労働関係法令の遵守
技能実習生には労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など、日本人労働者と同様の労働関係法令が適用されます。最低賃金以上の賃金を支払うこと、適切な労働時間を管理すること、安全な労働環境を確保することは企業の義務です。
厚生労働省の調査では、技能実習生を使用する事業場の7割以上で労働基準関係法令の違反が確認されています。違反が発覚した場合、技能実習計画の認定取消しや改善命令が下される可能性があり、最悪の場合は刑事罰の対象にもなります。
企業は、技能実習生の労務管理を適切に行い、コンプライアンスを徹底することが不可欠です。
受入れ人数の上限
団体監理型の場合、技能実習生の受入れ人数には上限が設けられています。基本的には、常勤職員の総数に応じて受け入れ可能な人数が決まります。例えば、常勤職員が30人以下の企業では、第1号技能実習生は3人まで受け入れることが可能です。
優良な実習実施者として認定されると、この上限が緩和されます。適切な管理体制を構築し、実習生の保護に努めることが、より多くの人材を受け入れるための条件にもなっています。
なお、育成就労制度においても受入れ見込数が分野ごとに設定される予定です。令和10年度末までの受入れ見込数は、特定技能外国人約80万5,700人、育成就労外国人約42万6,200人の合計約123万人とされています。
外国人の研修制度まとめ
今回は、外国人を研修するための制度「技能実習制度」と、2027年4月から施行される新制度「育成就労制度」について解説しました。
技能実習制度はこれまで30年以上にわたり運用されてきましたが、制度の目的と実態の乖離や人権侵害の問題から、抜本的な見直しが行われました。新たに創設される育成就労制度では、人材の育成と確保が明確な目的として位置づけられ、転籍の容認や特定技能制度との連続性が確保されるなど、外国人材のキャリア形成を支援する仕組みが強化されます。
少子高齢化が進む日本では、今後さらに労働力が減少し、外国人材の活用がますます重要になることが予想されています。企業としては、育成就労制度への移行準備を進めつつ、外国人材が安心して働ける環境を整備していくことが求められます。
また、多数の外国人従業員を雇用している企業にとっては、在留カードの期限管理や偽造チェック、就労可否の判定といった管理業務の効率化も重要な課題です。「ビザマネ」は、在留カードの読み取りから期限管理、アラート通知まで一括で対応できる外国人雇用管理システムです。不法就労リスクの回避と管理工数の削減に役立ちます。


