在留資格「特定技能」を取得するための関門!?特定技能評価試験の中身とは?

執筆者 9月 30, 2019ニュースコメント0件

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在留資格として特定技能が追加されたことで、人手不足とされる産業を、外国人労働者が下支えすることになりそうです。外国人労働者にとっても、日本での働き口が広がり、技能実習制度と一緒に用いることで、今までより長く日本で働けます。

 

それ自体はとても大きいですが、一方で乗り越えなければならない関門が待ち構えています。それが特定技能評価試験です。この試験をパスしなければ、在留資格は得られません。特定技能評価試験の中身とは何か、どのようなスケジュールで行われるのか、まとめました。

 

在留資格『特定技能』を取得するための関門

日本では、いわゆる移民政策というものは行われていません。これを認めると、多くの外国人が日本に流入するからです。ただ、外国人なしでは成立しないほど、人手不足で苦しんでいる産業はいくつもあります。これまでは技能実習生などでカバーしましたが、実習生だけでは限界です。外国人労働者を増やしたいという思惑があるものの、普通に増やそうとすれば移民政策になる、このようなジレンマがありました。そのジレンマを払拭してくれるのが特定技能の在留資格です。

 

ちゃんとした技術を持った人が日本にやってきて、しかも日本語もそれなりにできるというハードルを設けることで、決して移民政策ではないことをアピールしています。特定技能1号の水準は、「即戦力として活動できること」なので、即戦力レベルの知識と経験が求められます。それをテストにしたものが特定技能評価試験です。各業界でそれぞれ用意されており、ここで合格すれば在留資格が得られます。主に東南アジアを中心に行われ、すでに試験が始まっている分野もあるなど、特定技能の在留資格を得た外国人労働者がもう日本にやってくることになりそうです。

 

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特定技能評価試験では何が問われる?

そもそも特定技能評価試験ではどのようなことが問われるのか、それぞれの省庁の管轄別に確認していきます。

 

国際交流基金日本語基礎テストなどで日本語を問う

ほぼ全分野共通で受けることになるのが、国際交流基金日本語基礎テストです。ここで求められるラインは、日常会話がある程度行えて、生活に支障が出ない範囲です。テストは、文字と語彙、会話と文法、聴解、読解の4つの項目から出題されます。60問が出題され、制限時間は60分なので、1問1分のペースで答えていくことになります。ここで基準点をクリアした人が特定技能の在留資格に一歩前進です。

 

国際交流基金のホームページでは、テストの結果などが紹介されています。2019年4月、フィリピン・マニラで行われた受験の結果はですが、57名が受けて33名が基準点に到達しています。到達率はだいたい6割です。ただ毎月開催されていく中、2019年6月の開催では160名が受けて41名しか到達せず、25.6%にとどまりました。2019年4月から9月まではフィリピンのみの開催ですが、10月以降はカンボジアやネパール、ミャンマー、モンゴルでも開催されます。誰でも簡単にパスできる試験ではないことは明らかです。

(参考:https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/education/jft_basic/result.html)

 

ちなみに、介護のみ、介護日本語評価試験が用意されています。国際交流基金日本語基礎テストでの合格と、介護日本語評価試験に合格しなければなりません。介護現場で使われる用語の問題や、介助する場面で、相手に声をかける際の適した声掛け、情報を見た上でどのような判断をするべきか、選択肢からそれぞれ選びます。介護分野は他よりもややハードルが高いと思った方がいいかもしれません。

 

厚労省管轄の2分野について

厚生労働省が管轄するのは介護とビルクリーニングの2つです。介護は先ほど説明した介護日本語評価試験と、介護技能評価試験を行います。学科試験は40問あり、介護の基本に関するものやコミュニケーション、生活支援に関するものなどが問題として出されます。実技試験は5問あり、写真を見て、どのような手順で介護をするべきか、それを答える問題です。

 

介護技能評価試験に関してはすでに行われており、2019年7月に行われた試験では技能試験をパスしたのが196名中75名、合格率は38.3%でした。出題の傾向などがまだ分かっておらず、受ける側もかなりの手探りの中で試験を受けることになりそうです。

(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000532511.pdf)

 

ビルクリーニングに関しては、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験という名目で行われます。公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が主体となって実施することになっています。

 

経産省管轄の3分野について

経済産業省は素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3分野が存在します。素形材産業分野は、鋳型製造業や非鉄金属素形材製造業など、複数の分野が存在しており、3分野とはなっていますが、細かく分けると、数多くの業務や職種があります。この3分野に関してはすべて同じ評価試験となっており、それが製造分野特定技能1号評価試験です。同じ評価試験の理由は、製造現場での業務の多くが共通しているためで、技能水準や評価方法を統一して行われます。(参考:http://www.moj.go.jp/content/001289281.pdf)

 

国交省管轄の5分野について

国土交通省の5分野は、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊です。それぞれで評価試験が行われ、建設は建設分野特定技能1号評価試験で、造船・舶用工業は造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験などが用意されています。宿泊は宿泊業技能測定試験と名称がやや異なっているのが特徴です。航空は2つの評価試験に分かれており、空港グランドハンドリングと航空機整備の2種類があります。

 

この中で宿泊業技能測定試験ですが、フロント業務、広報・企画業務、接客業務、レストラン・サービス業務、安全衛生・その他基礎知識の5つの項目から出題されます。こちらに関してはすでに第1回が開催され、391名が受験し、280名が合格、合格率は71.6%でした。介護の試験ではあまり合格率が高くなかったことを考えると、かなりのハイアベレージです。(参考:https://caipt.or.jp/download/result_20190525.pdf)

 

農水省管轄の4分野について

農林水産省の4分野ですが、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業です。このうち、農業と漁業に関してはそれぞれで2つずつ試験があり、耕種農業全般を扱うものと畜産農業全般を扱うもの、漁業を扱うものと養殖業で分かれています。それぞれで行うべき作業が違うため、独立させた形です。そのほかの評価試験に関しては1分野1つの試験が用意されています。

 

外食業技能測定試験では、衛生管理、飲食物調理、接客全般の3つのカテゴリーで構成され、出題されます。食中毒などに関する知識や一般的な衛生管理など、様々な角度から問われています。3タイプの中から受験でき、1つは標準的な配転、もう1つは飲食物料理の配点を高めにし、接客全般に関する配点を低くする、最後に、接客全般の配点を高くして、飲食物調理の配点を低くするものです。学習用テキストが配布されており、その中から出題されます。他の試験に比べると、準備が進んでいます。

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特定技能評価試験のスケジュールは?

 

すでに特定技能評価試験が行われているものがいくつかあり、宿泊業、介護業、外食業の3分野に関しては試験が行われ、合格者も発表されています。また、飲食料品製造業は2019年10月を予定し、ビルクリーニング業に関しても秋以降には実施できる状態となっています。ただ、その他の業種に関しては2020年3月、いわゆる2019年度内に実施する予定で計画を進めているものの、具体的なスケジュールはまだ決まっていません。

 

特に国外での実施タイミングは、かなりバラバラです。調整がついたところから始めており、問題の準備なども進める必要があります。特定の分野に関してはすでに試験のおおまかな枠組みも組まっていますが、それすらも決まっていないところもあり、特定技能の在留資格はできたとはいえ、それが完全に機能し始めるのはかなり先となりそうです。

 

「業界団体の準備が追い付いていない?」

 

そもそも、どのような形で特定技能評価試験を行うのか、実技なのか筆記なのか、そのあたりも当初からあまり話し合われてきませんでした。とにかく法律を通すことだけを優先し、結果的に、試験をどうするかなどの準備が後手に回ります。業界団体で問題などを用意し、管轄する省庁が確認を行うというのが特定技能評価試験における役割分担ですが、業界団体からすれば、どのような形式で試験を作るべきかよく分からず、四苦八苦している面が見受けられます。

 

国家戦略特区ですでに技能試験を取り入れていた農業分野のように、すでにあるものを下敷きに使うところは準備に時間はかかりません。また、技能実習制度で行われているものも問題はないですが、技能実習の対象でないものに関してはそれもないので大変です。準備がなかなか進まないのは、技能実習生を無試験で特定技能の在留資格へスライドさせる動きが強いためです。試験はそのあとに検討されるとしても、結構な時間がかかることは言うまでもありません。

 

まとめ

 

特定技能の在留資格の仕組みがスタートし、一部の分野に関してはすでに合格者が出て、在留資格の権利を得た外国人労働者が出始めています。しかし、現状は本来の人手不足の穴を埋められるほどの人数ではないため、いかに人数を増やしつつ、合格ラインを維持するか、こちらが問われそうです。技能実習生から特定技能にスライドする人も大勢いると思われ、その動きも今後影響を与えることになります。

 

モンゴルやカンボジアなどでは、日本に出稼ぎに来られるチャンスができたことで、その分野の勉強をし始める人が出てくるかもしれません。本当に夢がある仕組みになっているのか、そればっかりはまだわからないところです。足並みは乱れ、試験を始めているところ、そうでないところに分かれていますが、足並みが揃うのはいつになるのか、現状では読めません。

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著者 アドミン

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