駅などに行けば、異国の言葉を話す人たちに出会い、コンビニの店員はカタカナだらけ、外国人が近所にもたくさんいる、そんな光景の中で暮らす人もいるのではないでしょうか。どうみても怪しい人を見つけ、不法滞在ではないかと感じた場合や、自分の会社で働く外国人の不法滞在を疑った場合、入管への通報が求められます。この場合、どのように通報を行えばいいのか、調べました。
不法滞在の通報を行えば報奨金がもらえることも!
入管法の第66条では、通報を行った人物に対し、退去強制令書が出された場合、通報者に対して報奨金が交付できるとしてあります。対象となるのは一般の市民などで、例えば、国や自治体の職員が、仕事を通じて不法滞在を知り、通報した場合は対象外です。この場合の報奨金は最大5万円で、ネット上では積極的に外国人を通報してあわよくば5万円をゲットしようという動きが見られますが、実際はそのハードルが高いと言われています。
しかし、2018年3月の時点で実際に報奨金が支払われたケースは7件しかないことが明らかになっており、その中身もかなり具体的なものでないと厳しいです。例えば、船から外国人が逃走、それを追いかけて居場所を知らせた場合などで適用され、単に、あの家の外国人が怪しいだけでは適用されません。また、実際に報奨金が支払われる場合も、査定を行ってから支払いの有無が決まります。
参照:不法滞在者を通報し報奨金が支払われるケース 過去に7件
あくまでも報奨金目当ての通報は割に合わないというだけで、通報自体は入管では大歓迎という状況です。どんな小さな情報でも求められており、少しでも怪しいと思えば通報するという姿勢が必要です。
不法滞在の通報はこうやって行われる
具体的に不法滞在の通報はどのように行う必要があるのか、その仕組みなどを詳しくまとめました。
1.入国管理局への通報
出入国在留管理庁では、不法滞在や偽造滞在を行う人物を1人でも多く検挙するべく、情報の受付を行っています。情報提供先として用意されているのは、電子メールと近くの地方入国管理官署への連絡です。直接情報を伝えたい場合は平日の午前9時から午後5時に訪れるのがよく、ほとんどのところでは土日祝日に行っても直接伝えることはできません。ただし、東京出入国在留管理局では土日祝日も受付を行っており、電話での情報提供も行えます。
情報受付のページを見ると、働いている場所や住んでいる場所に関する情報提供が行えるようになっています。ただしIPアドレスなどが保存されるため、誹謗中傷などは書き込まないようにすることが原則です。
2.不法滞在の通報は匿名でも行える
情報提供の際には、自分の名前などを明かすことも当然できますが、中には、なかなか人には言えない、バレたら大変なことになると不安になる方もいます。そのため、通報を行う際に匿名でも行えるような形にしてあります。ただ匿名の場合には報奨金などを受け取れない可能性が非常に高いため、報奨金がほしい人は自分の名前を明かすことが求められます。
警察庁では匿名通報ダイヤルを用意し、身元が特定されるのを避けたい人からの情報が得られるようにしており、匿名での通報はこうした思惑も考えられます。匿名通報ダイヤルの対象犯罪には不法滞在や偽装結婚なども含まれているため、こちらで通報を行うことも可能です。匿名で通報したい人にはオススメです。
3.具体的な内容で通報すれば入管も動きやすい
近年外国人に対する厳しい目が向けられ、特にネット民と呼ばれる、ネットでしか情報収集をしないような人は、偏った情報で極端な判断をするとされています。そのため、明らかに具体性に乏しい情報で通報するようなことがあり、これでは入管も動きにくいです。ここでの具体的な情報というのは、例えば不法滞在をする外国人の住所や生活パターンなどです。ここに買い物に来る、この居酒屋に飲みに来るといった個人情報やサイクルなどを伝えると、入管としても調査はしやすくなります。
情報を教えたら大至急駆けつけるようなケースはなかなかないでしょうが、具体性にあふれた情報であれば近いうちに調査をする可能性があります。報奨金をゲットするためにも、かなり踏み込んだ内容であることが求められます。もちろん、その結果、身に危険が及ぶようなことは避けなければなりません。雇用主などは、こんな人物がやってきたが怪しいと、もらった履歴書を見ながら判断を下すこともできるでしょう。通報をする以上は具体性のあるモノにする、これが大事です。
不法滞在の通報はこんな場合にご用心
不法滞在の通報をするということは、いわば特定の人物を犯人扱いすることです。無実の人間を犯人扱いすることは決して許されることではなく、場合によっては自らが責任を負わされることも考えられます。
1.虚偽の情報提供で偽計業務妨害罪が成立する可能性
人の役に立ちたい、感謝されたいという気持ちが強い人は、時にウソをついて行政機関に通報し、混乱をもたらすような行為をしてしまいます。偽計業務妨害罪がそれで、例えば何もないのに、火事があったと119番通報をして消防車を出動させる行為はあからさまな偽計業務妨害罪です。当然罪に問われ、逮捕されて実名を晒される、そんなことも考えられます。
ただし、疑いを持ってもやむを得ない状況だったと判断され、無罪判決が出るケースもあるため、虚偽の通報がすべてそうなるとは限りません。
2015年には、在留管理制度が変更されることで在日韓国人の多くが手続きが進まず、オーバーステイになったというデマがネット上で広まりました。結果的に、入管には多くの通報が寄せられることになり、入管のホームページがサーバーダウンする事態に発展します。この件で偽計業務妨害で告発することはありませんでしたが、デマに踊らされて明らかに虚偽情報を通報し、自らが罪に問われることも今後出てくるかもしれません。
参照:「在日韓国人が7月9日に在留資格失い、強制送還」 デマの拡散で入管に不法滞在通報相次ぐ
2.内部の人が通報すれば特定される可能性も
通報するのであれば、やましいことをしてないんだから堂々と名乗ればいいじゃないかと主張する方がいます。確かにその通りですが、もし誰が通報したか特定されれば身の危険が及ぶ可能性も考えられます。例えば、仲間内で話題になり、あの人はどうも不法滞在だとなれば、仲間の1人が通報し、結果的に仲間を売るような形になってしまいます。もし誰が通報したか発覚すれば、逆恨みをされる可能性が出てくるでしょう。
特に日本では内部通報などへの風向きが強く、いわゆる裏切り者として扱われるケースが見られます。2019年にはボリビア人の男が出産育児一時金の制度を悪用して一時金をだまし取ったとして逮捕されましたが、このとき、お金が払えない不法滞在者を入管に通報するなどの行為が取りざたされています。
参照:ボリビア人「ボス」 日本の出産一時金悪用し「2年連続で3つ子出産」の離れ業で2000万円詐欺
堂々と通報することも大事ですが、それによって危害が加わる可能性が出てくるため、注意が必要です
3.過去にはおとり捜査で雇用主が捕まったことも
雇用主が不法滞在を通報するのが傾向の1つとしてありますが、入管に協力した結果、雇用主である社長が逮捕されるという事態が起こりました。中国籍の男が経営する人材派遣会社に数十人のベトナム人が押し寄せ、在留カードを提出し、仕事を求めたことに端を発し、入管に出向いたところ、一網打尽にしたいと持ちかけられ、採用を要請し、結果的に不法就労を行います。思惑通り、一網打尽に成功したものの、情報提供者だった社長を捕まえてしまい、すぐに釈放されました。
参照:「入管の要請で、不法就労の捜査に協力したら、自分まで逮捕された」派遣会社社長が主張、 おとり捜査か?
この件を受けて、弁護士は、もし事実ならおとり捜査であり、指示を行った入管職員が不法就労助長罪にあたると解説します。現在進行形でこの事件は進行しており、どのような真実が明らかになるかは見守っていくほかありません。入管側は、そのような提案はしないと言っていますが、この社長の弁護人は、入管担当者との録音データなどを公表しており、事態は予断を許しません。
おとり捜査で雇用主が捕まるケースはレアケースとも言えますが、一網打尽にする絶好のチャンスがあるとした場合、そのような手を入管などが考えることはないとは言い切れません。だからこそ、雇用主などはその提案に細心の注意を払う必要があります。
不法滞在通報のまとめ
不法滞在の通報自体は誰でも簡単に行えますが、それがもたらす結果は多くの人を混乱させたり、1人の人間の人生を左右することになるかもしれません。「ダメなものはダメ」の精神で、具体的な情報を握っていれば通報してもいいでしょうが、具体性に乏しい情報しかないのに通報する行為にはリスクが伴います。特に報奨金目当ての場合、かなり踏み込んだ内容でなければならず、しかもこれまで7件しかないところを見ても、あまり効果は出ていないのかもしれません。
同じ会社に勤める外国人が不法滞在かもしれないと判断した場合は、匿名制度などを用いて通報するぐらいが良く、雇用主に伝えることも視野に入れましょう。
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