日本の訪日外国人観光客によるインバウンドは年々増加し、2018年のインバウンド消費の総額は4兆5,189億円。インバウンド市場は国の経済を潤す1つの市場として存在感を示しています。
政府は2016年にインバウンドの拡大を目指す『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』を開き、訪日外国人を2020年には4千万人、2030年には6千万人まで増加させる目標を掲げました。
参考元:産経ニュース 政府、訪日外国人目標を一気に倍増 2020年=4000万人、2030年=6000万人
インバウンド対策は国を挙げて取り組む価値のある非常に重要な市場となっています。
今回はインバウンド対策の内容から補助金まで、初心者でも分かりやすくご紹介したいと思います。
インバウンド対策とは
インバウンド対策とは、インバウンドと呼ばれる訪日外国人への観光対策のこと。
日本を観光で訪れる外国人のことをインバウンド、彼らが消費する経済活動のことをインバウンド消費と呼びます。対義語としてアウトバウンドは日本人の海外旅行を指します。
インバウンド対策には民間から国が行うものまで幅広く種類があり、レストランのメニューの通訳やホテルの外国語サイトの開設もインバウンド対策に含まれます。国が行うインバウンド対策にはビザの緩和や渋滞緩和のための道路の建設などが挙げられます。
インバウンド対策の必要性
インバウンド対策の必要性が分かりやすく理解できるように例を挙げたいと思います。
外国人に人気のある観光地にレストランAとBが隣同士にありました。その地域には有名なアニメの観光スポットがあり、毎日多くの訪日外国人が来ていました。
Aのレストランには英語のメニューがなく、スタッフも簡単な英語も話せず、英語での口コミもありません。
Bのレストランには英語や中国語のメニューがあり、スタッフも簡単な英語が話せます。英語での口コミもあります。アニメに似せた料理もありました。
レストランの目の前を通った外国人の観光客の過半数は、その場でメニューを見比べ、スマホで口コミを検索して、情報の少ないAよりBのレストランを選びました。結果、Aのレストランはインバウンドのブームに乗れず、思うように利益をあげられませんでした。
このBのレストランが訪日外国人に対して行ったメニューの翻訳、スタッフの英語教育、英語での口コミの提供がインバウンド対策と呼ばれるものです。
インバウンド対策を行っていない店舗と行っている店舗では収益に大きな差が出ます。
これは国単位でも同じです。
欧米の観光客がアジア圏に旅行に行こうと思った時は近隣の中国や韓国、台湾などの国々と迷います。
ハワイが人気の理由に日本語が通じる環境が挙げられるように、訪日外国人にとっても英語が通じるかという点は旅行先を選ぶ1つの理由になります。
中国と台湾では2005年から、韓国では1997年から小学校3年生からの英語教育を必修化していますが、日本では2020年から小学校5年生の英語教育が始まります。
日本は周辺のアジア圏の国々よりも英語教育が遅れているため、英語を話せる人口も少なく、2017年のTOEFLスコアではアジア主要国の中で最下位の成績を記録しています。
参考元:TOEFL Web Magazine The TOEFL iBT® Test 2017スコアに見る日本の英語教育の惨状
そのため、政府は総務省が開発する自動翻訳機ボイストラの開発や英語教育の充実に力を入れ、言語の壁を最小限にするインバウンド対策を進めています。
参考元:政府、自動翻訳を導入へ TOEIC900点級のアプリ
政府が掲げるインバウンド対策
日本のインバウンド対策を担う観光庁では以下の5つの対策が進められています。
① 訪日外国人旅行者の受入環境整備
2016年に策定された明日の日本を支える観光ビジョンを元に受入環境を整備。
② 観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化
言語の壁をなくす「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を観光庁のホームページ上で提供を開始。ガイドラインを読めば個人レベルでの多言語対応も可能にできるようにしています。
③ 無料公衆無線LAN整備促進協議会
公共交通、宿泊・飲食・商業施設、自治体、通信事業者等(無料公衆無線LAN整備促進協議会)と協力し、利用場所の拡大、利用手続きの簡素化などを進めています。
④ ムスリム旅行者に関する取り組み
ムスリムとはイスラム教徒を指し、豚やアルコールの摂取が宗教で禁じられています。観光中の不便さをなくすために観光庁では「ムスリムおもてなしガイドブック」が配布されています。
⑤ 「道の駅」におけるインバウンド対応に向けた取組
日本人には人気のある道の駅ですが訪日外国人にはあまり知られていないため、インバウンド消費を地方に繋げるために道の駅関係者向けガイド資料を配布しています。
⑥ 訪日外国人旅行者向けのマナー啓発
温泉や飲食など文化の違いでトラブルが起きることもあるため、小売店や宿泊業者に対してマナー啓発のステッカーや掲示例をまとめたリンク集を観光庁で公開しています。
インバウンド対策については観光業界のため観光庁がメインとなっていますが、ほかにも通信面を担う総務省やキャッシュレスの促進やクールジャパンと呼ばれる商材を発信する経済産業省など、ほぼ全ての省庁が一丸となってインバウンド対策を行っています。
参考元:総務省 受け入れ環境の整備、経済産業省 クールジャパン/クリエイティブ産業
インバウンド対策で得られる補助金
インバウンド対策は国単位だけでは実現しません。インバウンド対策の成功には実際に訪日外国人と関わる個人・民間レベルでの対策が欠かせません。
そこで政府はインバウンド対策として行われる民間事業に対して補助金を交付しています。この補助金は時期によって内容が異なり随時更新されているので観光庁の補助金ポータルをこまめにチェックしてみましょう。
現在募集がかけられているインバウンドに関係する補助金は以下の通り。
《東京都》
東京2020大会に向けた宿泊施設・飲食店の受動喫煙防止対策支援補助金
都内の宿泊施設と飲食店が受動喫煙の防止対策として設置する喫煙ルームへの補助金です。客席面積100㎡以下の飲食店では最大で400万円(補助率9/10以内)の補助金が交付されます。
海外では分煙ではなく禁煙がメジャーになってきており、世界の55カ国が屋内で全面禁煙となっています。喫煙する常連客がいる場合もあるので、まずは分煙から始めてみましょう。
インバウンド対応力強化支援補助金
都内の宿泊施設、飲食店、小売店等が訪日外国人を受け入れやすくするための補助金です。1店舗あたり300万円を限度に補助対象経費の1/2が補助されます。
この補助金では基本的なインバウンド対策にかかる費用を幅広くまかなえるため、インバウンド対策をしたいけど金銭的に網羅できないと悩んでいるホテルや飲食店、小売店の事業者はこの支援制度をぜひ活用してみてください。
参考元:観光庁 補助金ポータル
《業界別》インバウンド対策事例
インバウンド消費の多い買い物、飲食、宿泊の業界別順にインバウンド対策の事例を見てみましょう。
百貨店
高島屋 免税カウンターの拡張、Free Wi-Fiの設置、空港型市中免税店「SHILA&ANA」のオープン、シンガポールや中国、ベトナム、タイにも店舗を展開
参考元:高島屋 インバウンド需要への対応
飲食店
大戸屋 スマホとタブレットによる多言語メニューの提供と注文システム、海外電子決済の導入、東南アジアでの店舗展開の推進
参考元:大戸屋 中期経営計画
ホテル
プリンスホテル 多言語対応、Wi-Fi環境の整備、春節、国慶節等におけるイベントの実施、海外のセールス拠点の拡充
参考元:プリンスホテル 訪日外国人旅行客獲得に向けた取り組み
インバウンド対策の実例を見てみると、言語対応と通信面の環境設備が必須条件であるように思えます。また、インバウンド対策と聞くと国内でのみ行うアクションのように思えますが、海外での事業展開や認知度の向上も並行して行うことも重要なポイントといえます。
これから求められるインバウンド対策って何?
これからのインバウンド対策には2020年東京オリンピック後も訪日外国人を誘致できるようなリピート率を上げるインバウンド対策が必要となります。
2017年の観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人の61.4%が訪日回数2回以上のリピーターであることが多いことがわかっています。
例えば前項で挙げたプリンスホテルのように中国の行事に合わせたイベントもホテル内で開催している宿泊施設は少ないため、来年も宿泊してもらえるリピートに繋がります。
または富士山や花見、紅葉などの圧倒的な自然景観もリピートされる理由の1つとして挙げられます。ホテルから景観が見えなくても、さくらを見るツアーやインスタ映えする自然景観の発掘に力を入れてもいいかもしれません。
参考元:観光庁 訪日外国人旅行者の訪日回数と消費動向の関係について
インバウンド対策のまとめ
インバウンド対策とは、訪日外国人の満足度を上げるための観光対策のこと。
基本的なインバウンド対策は以下の3点が挙げられます。
① 言語面(翻訳や通訳の準備)
② 通信面(無料Wi-Fiの設置やキャッシュレス決済の導入)
③ 文化面(宗教への配慮、使用方法やマナーの掲示など)
そして、今後のインバウンド対策は東京オリンピック後も継続してきてもらえるような海外の行事に合わせたイベントの開催や圧倒的な景観の発掘、ほかにはないホスピタリティーなど世界で唯一のオリジナルのインバウンド対策が必要になります。
インバウンド対策というと難しく考えがちですが、自分が見ず知らずの国に行く時はどんな対応やサービスがあったら嬉しいか、どんな施設にリピートしたいかを考えればおのずと対策は浮かんでくるはずです。
2020年の東京オリンピックを機にビジネスチャンスを広げ、長く続くインバウンド消費を獲得を狙っていきましょう。
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