訪日外国人の国別の傾向とは?アジアから欧米まで徹底分析します

執筆者 1月 30, 2020ニュースコメント0件

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この記事は、観光庁の2019年7-9月訪日外国人の消費動向調査結果を基に、ピックアップした国籍別の訪日客数・消費傾向について整理、考察を行い、まとめた記事になります。

 

訪日外国人の国籍別の傾向(東アジア)

 

観光庁の2019年7-9月の訪日外国人の消費者動向調査(1次速報)によると、訪日外国人旅行消費額は以下の通りです。

参考:観光庁 訪日外国人消費動向調査 2019年7-9月期

 

全国籍・地域 1兆2000億円 前年比+0.9%

 

主要国(上位5か国)

中国 5051億円 割合42.1% 前年比+22.3%

台湾 1386億円 割合11.6% 前年比-0.3%

韓国 915億円 割合7.6% 前年比-32.4%

香港 855億円 割合7.1% 前年比+1.3%

米国 788億円 割合6.6% 前年比+11.6%

 

前年比の高い国

タイ 290億円 割合2.4% 前年比+44.3%

ベトナム 234億円 割合2.0% 前年比+34.4%

ロシア 49億円 割合0.4% 前年比+42.4%

ここからは、地域別に考察していきます。

まずは主要国の上位4か国を含む、最重要の東アジアについてです。

 

中国

 

上記の消費額からもわかるように、中国が占める訪日外国人の消費額は、全体の4割以上を占め、日本にとって中国は最重要の観光客だと言えます。前年比も+22.3%と急速な消費増加を見せており、今後も観光消費が期待できる国になります。この急激な消費増加の背景は、2014年の消費税免税制度の拡充と円安元高が進んだことがきっかけとなり、日本の品質の高い製品を安く手に入れるという目的、いわゆる「爆買い」を目的として訪日する中国人が急激に増加しました。

 

また、中国の文化としてお土産を近所に配る傾向が強く、同じ商品を何個も購入するという傾向がさらに消費を後押ししているようです。その影響で、百貨店の売り上げの急増や、東京の銀座などでは地価の上昇が起きているほどです。また、観光という視点で見ると、日本での「お花見」が中国でブームになっているようです。

 

近年では中国国内のSNSや個人のブログにて、お花見の様子が拡散され、さらに観光客を呼び込む呼び水に。なっているようです。一方で、観光に対するマナーの悪さが度々指摘されており、お花見の写真を撮るために枝を折ったり、木を揺らして花びらを散らせるなど、日本人では考えられない悪質なマナー違反が起きているようです。最近では中国側も旅行者に呼びかけなどが行われているようですが、旅行者の急増により、効果を上げているかは疑問であり、今後の改善に期待します。

 

一方、一人当たりの個人消費額は減少傾向にあり、一部では、「爆買いの終了」が噂されています。この個人支出減少の要因は3つ考えられます。

 

一つ目が、円高元安です。先に爆買いの要因として円安元高を挙げましたが、2015~2016年にかけて1元20円→15円台に円高が進みました。これにより旅行者の中国元での予算が減ったと考えることができます。

 

二つ目の理由は、越境ECと呼ばれる、海外でのオンライン売買が普及したことです。この越境EC通販サイトが発達したことで、中国国内にいながら、日本製品を取り寄せることができるようになったため、わざわざ旅行先で買う必要もなくなったということです。

 

三つ目の理由は、中国政府が関税を強化したたためです。酒類、化粧品、衣類は+10%、高級時計は+30%、食品は+5%の関税強化がなされ、「安いから日本で買う」という動機が薄まってしまったということになります。以上の理由から、中国訪日客の消費単価は減少傾向であり、今後もその傾向は続くと考えられます。

 

台湾

訪日客の消費額が1000億円を超え大きな割合を占める台湾ですが、消費の伸び率では横這いの状況となっています。親日国であり、多くの台湾人が日本に親近感を持っているようで、客足が日本に向きやすく、年間を通じて安定して高い訪日客数となっているようです。台湾の訪日客の大きな特徴として、8割を超えるリピート率の高さが挙げられ、日本が人気の観光スポットとして定着しているようです。

 

韓国

韓国訪日客も消費額が大きいため、インバウンドに大きな影響を与える存在ですが、近年の日韓政治情勢の悪化から、訪日客数は前年から半減、消費も3割程落ち込むなど、不安定な要素がかなり強い国といえます。最近では韓国側の慰安婦問題、徴用工賠償請求問題を皮切りに、日本側も半導体輸出規制強化、ホワイト国リストからの除外の措置を行い、それに対抗するような形で韓国はアメリカを含む保護協定である、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を一方的に通告してきました。まさに応酬の様相を呈してきた日韓情勢ですが、先日、GSOMIA撤廃を凍結するとのことで、韓国側の譲歩が見られたため、今後の日韓関係の回復を期待します。

 

香港

最近では大規模デモが起きており、訪日客への影響が懸念される香港ですが、蓋を開けてみると訪日数は前年と比べてもむしろ1.3%の増加となっており、デモの影響は少ないと考えられます。香港の訪日客の特徴として、台湾同様に8割を超えるリピート率の高さが挙げられます。香港国内の書店やコンビニでは、日本の観光地を特集したガイドブックなどが人気となっており、日本観光に対する興味の高さが伺えます。人気の商品としては、ドラッグストアなどで買うことができる化粧品などが人気となっているようです。

 

訪日外国人の国籍別の傾向(東南アジア)

 

タイ

ここからは東南アジア地域について考察していきます。近年、訪日客数、消費ともに大きな伸びを見せるタイですが、その消費伸び率は中国をも大きく上回る44.3%と、調査した20か国の中で最大の伸びを見せており、今後最も期待が大きい国と言えそうです。

 

親日国であり、日本の自動車製品や、アニメなどが多く輸出されているため、タイの人にとっても日本はなじみが深く、観光先としても人気があるようです。さらに、近年の訪日客の増加の背景となっているのは、2013年に行われたビザ緩和が挙げられ、この緩和政策によって15日以内の滞在であればビザが免除され、気軽に日本へ旅行することができるようになりました。旅行客が多い時期としては、ソンクラン(タイの旧正月)にあたる4月がピークとなるようです。

 

ベトナム

ベトナムも大きな消費増加の伸び率+34.4%となっていますが、その内情は、旅行者だけでなく外国人労働者としての訪日が多いということになっているようです。外国人労働者の数で見ると、ベトナムは中国に次ぐ第2位であり、全体の2割程度となっているようです。ベトナム訪日客の大きな特徴として、滞在日数が36.7日と、異様に長いことが挙げられますが、これも、労働者として訪日しているケースが多く、結果として滞在日数が長くなっているとのことです。消費の傾向としては、買物にお金をかける傾向があるようで、一人当たりの支出でみると東南アジアでは最も買物費にお金を費やしています。また、滞在日数の長さに対して宿泊費の消費がそれほど高くないのは、既に訪日している知人を頼って、家に泊めてもらうことで、宿泊費を節約している傾向があるようです。

訪日外国人の国籍別の傾向(欧米)

 

アメリカ

訪日アメリカ人の消費額は前年から+11.6%の伸びを見せており、安定した伸びを見せています。トータルの額としても788億円と近隣の東アジアの国と肩を並べる消費額となっています。アメリカに限らず、欧米の観光客の傾向としては、滞在日数が軒並み10日以上となっており、近隣諸国の東アジアの平均滞在日数7~8日と比較して長くなっています。

 

訪日アメリカ人の平均滞在日数は14.8日となっており、東アジア諸国の2倍程度の滞在期間です。要因は、欧米諸国は日本からの物理的な距離が遠く、旅行費用も高くなるため、東アジア旅行者のような気軽な旅行というよりは、長く滞在して日本を満喫するという考え方になるようです。

 

訪日アメリカ人の特徴としては、滞在期間が長いことによって、都市部だけでなく地方への観光者の移動を伴うことが挙げられます。特に、原爆の爆心地となった広島への観光客数、宿泊者数が他国より多くなっているようです。

ロシア

訪日ロシア人全体の消費規模は49億円(割合0.4%)とまだそう多くは在りませんが、伸び率が前年比+42.4%と大きく成長しており、今後の動向が注目される国になります。その背景として、2017年に訪日に対するビザが緩和されたことが挙げられます。

 

その他にも、航空便の増加と運賃の値下がりも重なり、それが追い風となった結果、大きな増加となったようです。まだ全体の規模としては大きくは在りませんが、タイと同様、ロシアの訪日客の客数と消費はこれから大きく伸びていく気配を感じさせます。

 

訪日外国人の国籍別の傾向(オセアニア)

 

オーストラリア

オセアニアでは、オーストラリアの消費額が比較的規模が大きく、259億円となっています。9月後半に開催されたラグビーワールドカップの影響で訪日客数は15.5%増加した影響で、消費額は増加しました。物理的な距離が遠いということもあり、欧米と同様10日以上の長期滞在となるケースが多い傾向にあります。時期としては、南半球で季節が逆転しているということがあり、真夏に相当する12月、1月に避暑として日本に来て温泉やスキーを楽しむというスタイルが多いとのことです。

 

訪日外国人の国籍別の傾向のまとめ

 

東アジア

中国は観光客数としては増加傾向、個人消費としては減少傾向のため、今後の「爆買い」は縮小するとの見方が強い。

台湾、香港は消費額としては横這いの傾向。香港デモの影響は少ないと考えられる。

韓国は日韓情勢の悪化で大きく3割ほど消費が減少。GSOMIA破棄凍結により韓国政府の一定の歩み寄りが見られたが、今後も不安定な状況が続くと考えられる。

 

東南アジア

タイは消費が4割以上の伸びと、最も大きな伸びを見せており、今後大きく伸びていく可能性が高い。

ベトナムは労働目的で来日する訪日客が多く、買物に投資する観光客は多い。

 

欧米

アメリカの消費は10%以上の順調な伸びを見せている。滞在日数が長く、地方への観光客が多い傾向にある。

ロシアはまだ消費の規模は大きくないが、ビザ緩和などにより40%以上の消費の伸びを見せており、今後大きく伸びてくる可能性が高い。

 

オセアニア

オーストラリアは9月のラグビーワールドカップの影響もあり、訪日客が15%程増加。訪問時期は12~1月が多く、避暑を兼ねて温泉やスキーなどのレジャーを楽しむケースが多い。

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著者 アドミン

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