最近では、コロナの落ち着きやそれに伴う入国制限の緩和からメディアなどでも「インバウンド」という言葉をよく耳にすることが増えてきました。しかし、インバウンドとは一体何を指しているのでしょうか?この記事では、インバウンドの基本的な意味から始め、インバウンドがもたらす経済効果について詳しく紹介していきます。また、経済効果がもたらすメリットやデメリットについても解説し、インバウンドに興味がある方は必見です。最後までお読みいただき、インバウンドの経済効果を理解しましょう。
インバウンドとは何か
ビジネスの世界では「インバウンド」という言葉が欠かせない存在となっています。この言葉は「入ってくる・内向き」という意味を持ち、営業職の場面ではお客様から問い合わせがあった際に提案する営業を指します。一方で、自ら積極的に飛び込みや電話でアプローチをかける営業を「アウトバウンド」と呼びます。
このように様々な場面で使われる「インバウンド」ですが、今回は旅客・観光業界における「インバウンド」に焦点を当てて紹介していきます。日本における「インバウンド」とは、日本を訪れる外国人観光客(訪日外国人旅行客)のことを指し、日本に入ってくるという意味合いを持ちます。一方で、日本人が海外に出向くことを「アウトバウンド」と称します。
インバウンドの消費額と消費用途。日本の経済効果に影響大!
近年ニュースなどで取りざたされていた中国人の爆買い、2020年の東京オリンピック招致などを見ていると分かると思いますが、インバウンドが日本の経済に与える影響は非常に大きいです。
ここでは、インバウンド旅客者が日本で使う消費額や消費用途について紹介してきます。
インバウンドの消費額
訪日外国人観光客は近年大幅に増えており、官公庁が発表しているデータによると2011年は622万人程であったにもかかわらず、2017年には2869万人にまで増えています。もちろん消費額についても大幅増えており、2011年は8135億円であったのが2017年には4兆4161億円にまで増加しています。
2017年段階での国別消費額は、中国が1兆6946億円・台湾が5744億円・韓国が5126億円・香港が3415億円と消費額が多い上位4国がアジアとなっており、インバウンド消費額のおよそ7割を占めています。その後アメリカの2503億円・オーストラリアの1117億円と続きますが、日本のインバウンド消費額は圧倒的にアジアからの流入が多いです。
このように年間数兆円単位の消費がインバウンドから発生しており、経済効果というのは消費額だけではなくそこに付随する効果も含まれるので、インバウンドが日本に与える経済効果の大きさが分かっていただけると思います。
・2011年:8,135億円
・2012年:1兆846億円
・2013年:1兆4,167億円
・2014年:2兆278億円
・2015年:3兆4,771億円
・2016年:3兆7,476億円
・2017年:4兆4,162億円
・2018年:4兆5,189億円
・2019年:4兆8,135億円
・2020年:7,446億円(試算値)
・2021年:1,208億円(試算値)
インバウンドの消費用途
インバウンドの消費額が非常に大きいことは見ていただきましたが、では訪日外国人はどこにお金を消費しているのかについても紹介していきます。官公庁が出しているデータによれば、インバンドの消費用途は大きく分けて「宿泊費」「交通費」「飲食費」「買い物」「娯楽・サービス費」の5に分類することができます。
観光などで日本を訪れているため当然宿泊費・交通費・飲食費は発生します。しかし、そんな観光客に絶対必要になる費用ではなく買い物の消費額が一番多いのです。2017年のデータによれば、買い物が1兆6398億円、宿泊費が1兆2451億円、飲食費が8856億円、交通費が4870億円、娯楽・サービス費が1439億円となっています。
買い物の費用が消費額全体の4割近い金額になっており、訪日外国人観光客が日本で買い物をすることで生まれる経済効果の大きさが分かります。
インバウンドの経済効果がもたらすメリット
ここまでにインバンドの消費額と消費用途を説明しましたので、訪日外国人観光客が日本にもたらす経済効果の大きさが分かっていただけたかと思います。では、実際経済効果を生み出すことで生まれるメリットはどんなことがあるのでしょう。
ここでは、インバウンドが生み出す経済効果のメリットについて紹介していきます。
1.地域が活性化する
インバウンドが増えることによって発生するメリットに地方活性化があります。日本に多くの外国人観光客が訪れるようになってからずいぶん経ち、以前は東京などの大都市や京都などの世界的な遺産が多く有名な都市に集中していました。しかし、近年は外国人観光客の楽しみ方も多様化してきたため様々な地域に観光客が分散しています。
そのため少子化や労働人口が減ってしまい、消費額などが減っている地域にも経済効果が発生するため地域を活性化するのに一役買っています。また、インバンドの消費額を見れば大きな経済効果がある事が火を見るよりも明らかなので、インバウンドを呼び込むために地方の自治体も努力するため地域が活性化されます。
また地方の良さに気づき、移住するという人も増えてきているので労働人口の確保や継続的な消費額の増加をさせることができる可能性もあります。
2.観光業の発展
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日本に訪れる外国人観光客の増加により、観光業が発展します。観光スポットや宿泊施設、飲食店などの需要が増え、観光関連の雇用が増加します。また、外国人観光客が日本の伝統文化や食文化を体験するために消費することで、日本の文化や産業が海外に発信されることにもつながります。
3.小売業や商品開発の促進
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日本を訪れる外国人観光客は、和服や抹茶、和菓子などの日本独特の商品を購入することが多いです。これにより、日本の伝統的な工芸品や特産品の需要が増加し、小売業や商品開発が促進されます。また、外国人観光客向けに新たな商品やサービスを開発することで、国内市場だけでなく海外市場への商品の輸出拡大にもつながります。
4.交通インフラの改善
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外国人観光客の増加に伴い、空港や鉄道、道路などの交通インフラの需要が増えます。これにより、交通インフラの改善や新たなインフラの整備が進み、国内の交通インフラのレベルが向上します。これは、国内外の人々の移動がスムーズになり、経済活動全体の効率化につながります。
5.雇用の増加
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インバウンドの増加により、観光関連やサービス業などでの雇用が増加します。特に地方や観光資源の少ない地域においては、外国人観光客を受け入れることで新たな雇用の創出が期待できます。これにより、地域の経済活性化や人口流出の抑制にもつながります。
6.外貨の獲得
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外国人観光客が日本で消費することで、日本は外貨を獲得することができます。外貨の獲得により、日本の国際収支が改善し、経済的な安定が図られます。また、外貨の獲得により、輸出や投資の促進、国際的な取引の活性化など、国際経済における日本の競争力の向上にもつながります。
7.人材の多様性と国際化
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外国人観光客の増加により、日本での働き方やビジネス環境が多様化し、国際化が進みます。外国人観光客を受け入れるための多言語対応や異文化理解の必要性が高まり、人材の多様性と国際化が促進されます。これにより、日本の人材のグローバルな競争力が向上し、国際的なビジネスチャンスが増えることが期待されます。
8.伝統文化を保護し広めることができる
多くのインバンドは日本の伝統や文化遺産を見るために日本に訪れます。特に体験型のイベントなども増えてきているため、日本の伝統を楽しみながら学べる環境が整ってきており人気が高まっています。近年はSNSなどで簡単に情報発信をできるため、インバウンドが日本の景色や建物などを紹介してもらうことで伝統や文化を広めるのに一役買っているのです。
また、インバウンドを増やすことで伝統文化の保護にも効果があります。広く知ってもらうことによって、伝統文化の重要性を理解してもらい後世に残すべきであると認識してもらえます。当然インバウンドが増えれば消費額も増えるので、費用面でも伝統文化を保護するための助けになります。
インバウンドの経済効果がもたらすデメリット
ここまではインバウンドがもたらす効果などいい面を紹介してきましたが、当然いい面があれば悪い面もあります。インバンドを増やすことによって生まれる経済効果に必ず付随するものなので、デメリットについてもしっかり理解しておく必要があります。
ここではインバウンドがもたらすデメリットについて紹介していきます。
1.地域の風紀が保つのが難しい
インバンドが増えると風紀を保つことが非常に難しいです。なぜなら国によって考え方や文化が異なるからです。法律が違うのでルールを一定化させるのは非常に難しいですし、法律以外の部分でも日本人が日本で生活するうえで当然だとしていることも外国人には理解しがたい行為ということもあります。
インバウンドがもたらす経済効果は無視できませんが、地域の風紀を保つことの難しさもしっかり理解しなくてはいけません。風紀を保つ対策なしにインバウンドが増えてしまうと、日本の伝統や文化を壊してしまう可能性もあります。
2.環境整備を求められる
インバウンドを増やして経済効果を発生させるには。快適に日本で生活できるように環境整備をする必要があります。インバウンドはリピートを増やすのはもちろん、SNSなど観光客の口コミで増えます。魅力はあっても過ごしにくい環境の場所には、何度も行きたいとは思いませんし友達にも勧めることはされないため環境整備は急務なのです。
環境整備をすることで業者を使うなど経済効果の一部にもなるのですが、行政や企業は環境整備のために必要な費用が増えますので初期投資をする負担が増えるというデメリットも発生します。
インバウンドの経済効果を得るために必要なこと
インバウンドの経済効果を得るために必要なことは、訪日外国人観光客が過ごしやすい環境をつくる事と、日本人にとっても過ごしやすい環境にしておく必要があります。
ここからはインバウンドを増加させ、経済効果を効果的に上昇させるために必要なことについて紹介していきます。
1.多言語に対応した交通機関、地図の表記
近年交通機関や飲食店などでも、注意事項などを多言語表記することが当たり前となってきました。海外旅行などで一番不便に思うのが言葉の壁です。言葉が伝わらないことで、やりたいことができない事や誤解を生む事もあります。
外国語を話せるスタッフを雇うお店も増えてきていますが、すべてのお店が雇うことは現実的ではないので多言語対応した表記を設置するお店が増えています。
2.Wi-Fi環境の設備
Wi-Fi環境を整えることも重要なポイントの1つです。海外旅行をしたことがある人は経験があるかもしれませんが、スマホなどを海外で利用した場合の通信料は非常に高額です。そのため、旅行中は通信を切りWi-Fi環境下のみで利用するという人も多いです。
これだけスマホが普及時代ですし、文化伝統を広めていくためにもSNSを使った発信は必要不可欠です。手軽に通信機器を利用できる環境を作る必要があります
3.マナーを呼びかける取り組み
デメリットを話したときに風紀を保つのが難しいという話をしましたが、風紀を保つために整備する必要があるのが日本におけるマナーを呼びかけていくことです。大半の外国人観光客の方も知らないだけで、わざと日本人の気分を害するためにマナー違反をしているわけではありません。
外国人観光客も日本人もどちらも楽しく同じ空間で時を過ごせるように、マナーを共有していくことが重要なのです。
インバウンドがもたらす経済効果とやるべきことのまとめ
いかがでしたか、インバウンドがもたらす経済効果やメリット・デメリットについて分かりましたでしょうか。
少子高齢化が進む日本では、年間何兆円単位の消費があり今後も増える見込みを立てることができるインバウンドは非常に重要です。しかし、一方で日本人・訪日外国人観光客どちらにとっても過ごしやすい環境づくりをしていく必要があるという難しさもあります。
インバウンドの経済効果を効果的に発揮するためにも、メリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
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