日本には毎年多くの観光客や留学生が訪れ、外国人の就業も年々増加しています。しかし、長期滞在するにはビザが必要で、滞在期間や活動内容が制限されます。
そこで、外国人にとって日本国籍を取得するメリットやデメリットがあることをご紹介します。また、期限がない永住権との違いも説明します。日本国籍を所得したい外国人も少なくありません。
日本のパスポートをもつということ
日本のパスポートを持つことによって、多くの国々を観光することができます。他の国のパスポートを持つ場合、ビザが必要になる場合が多いのに対し、日本のパスポートを持つことでそれが必要なくなります。このため、日本のパスポートは非常に強力な旅行文書となります。
日本のパスポートは世界で最もビザ免除国が多い1つであり、ビザが不要な約190カ国が存在します。これは、多くの国々が日本を信頼しているためであり、日本の政府が高い評価を受けていることからきています。また、ヘンリー王朝国際パスポート指数によると、日本のパスポートは世界で最も信頼性の高い1つであり、多くの人々が信頼できる人物として扱われることがあります。
日本国籍を取得するメリット
日本国籍を取得するメリットはさまざまありますが、日本戸籍をもつことができる点と国際結婚がスムーズにできることがあげられるでしょう。外国人でも帰化をすることにより日本の国籍を取得することができると、国籍法にて定められています。
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。
引用 法務省
日本戸籍を持つことができる
日本国籍を取得すると、日本戸籍を取得できます。永住ビザでは戸籍を作ることはできないため、国籍を取ることの重要性は高まっています。特に、国際結婚をしている場合には大きなメリットとなります。
国際結婚がスムーズにできる
国際結婚は国によって異なる手続きが必要であり、言語、文化、手続き方法などにも差異があります。また、婚姻届けだけではなく、家族関係証明書や婚姻関係証明書などの書類が必要になることがあります。しかし、日本国籍を持つことで、国際結婚がスムーズに進みます。
また、日本人と結婚をしても、日本の戸籍を所得できるわけではないのです。法務省のホームページには以下の様に記されています。
1 |
日本人と外国人又は外国人同士が日本で婚姻しようとするときは,戸籍届出窓口に婚姻の届出をし,両当事者に婚姻の要件が備わっていると認められ,届出が受理されると,有効な婚姻が成立します(以下,このようにして成立する婚姻を「日本方式の婚姻」といいます。)。養子縁組や認知についても同様に,届出が受理されることが必要です。届出が受理されると,日本人については戸籍に記載され,外国人同士の場合には届書が50年間保存されます。 |
2 |
外国人が日本にあるその国の大使館又は領事館にその外国の方式により婚姻届出をした場合には,日本の戸籍届出窓口への届出は不要となります。 |
3 |
外国人に戸籍はありませんが,日本国内で出産したり,死亡した場合は,戸籍法の適用を受けますので,所在地の市区町村の戸籍届出窓口に,出生の届出又は死亡の届出をしなければなりません。この届出は,10年間保存されます。 |
引用 法務省
このことから見ても、国際結婚をして日本に住むことを考えている場合でも、日本国籍を取得しておくとスムーズに進めることができるのです。
しかし日本国籍をとっていれば、日本人同士の結婚となり役所に届け出をするだけでよいのです。またお子様が生まれた場合、公的書類を揃えるのは全て日本人のように市役所などの役所でそろいます。しかし永住ビザの場合は対象者が外国人であるため、大使館や領事館、場合によっては対象者の母国から公的書類を取り寄せる必要がある場合があります。取り寄せも大変ですし、日本語訳も必要になります。
また出生届をする場合、日本人であれば市役所だけでいいのですが、外国人の場合だると本国へも届け出をする必要があります。国際結婚をした時、本人よりもお子様が生まれた時にメリットが多く生まれます。
年金・保険・福祉・選挙権の享受ができる
日本国籍を取得すると、年金や保険、福祉面など日本人と同じ権利を取得することができます。また、日本国籍を持つことで、選挙権や銀行からの融資を受けることもできます。さらに、住宅や自動車などを購入する際にローンを組むことができます。
在留カードの携帯が不要で更新が必要ない
日本国籍を取得すると、在留カードを携帯する必要がなくなります。在留資格の場合、在留カードを持ち歩く必要がありますが、日本国籍を持つと、在留カードは必要ありません。
日本国籍を取得すると、在留資格とは異なり、更新手続きが必要ありません。在留資格の場合、更新時に審査を受ける必要がありますが、国籍を取得すると更新の必要はありません。ただし、国籍取得には発行手続きが必要なため、手続きに時間がかかることがあります。
日本国籍を取得するデメリット
日本国籍を取得するメリットを考えるためには、デメリットを理解しておく必要があります。ここでは日本国籍を取得するデメリットをご紹介します。
母国の国籍を失う
日本では二重国籍が禁止されています。そのため母国の国籍を失うことになるのです。これまで生まれてすごしてきた国の国籍を失うので相当な覚悟が必要となります。またその覚悟がないと、審査に通ることもないでしょう。
日本の国籍を得たあと、母国に行くためにビザが必要になることになり、最初は違和感を感じることもあるでしょう。日本に期限なく住むことができるのは、日本国籍を取得するか永住ビザを得ることになるのですが、永住ビザはパスポートは母国のままです。国籍法には以下の様に定めています。
第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
引用 国籍法
日本の国籍を得るまでに時間がかかる
日本の国籍を得るために帰化申請をしてから、実際に許可を得るまで時間がかかります。まずなんといっても必要書類が多いのです。
・帰化許可申請書(申請者の写真が必要となります。)
・親族の概要を記載した書類
・帰化の動機書
・履歴書
・生計の概要を記載した書類
・事業の概要を記載した書類
・住民票の写し
・国籍を証明する書類
・親族関係を証明する書類
・納税を証明する書類
・収入を証明する書類
・在留歴を証する書類
引用 法務省
さらにこれらの書類は全て日本語で提出する必要があるのですが、外国人にとってはそれだけで大変だと思うこともあるでしょう。しかし書類が揃わなければ、日本国籍を所得することはできません。そこで行政書士などプロに依頼することも一つの方法だといえます。
審査条件
日本国籍を取得するためには、厳しい条件があります。
・在留資格を持ち5年間日本に滞在し、80%以上滞在期間がある
・年齢が20歳以上
・素行に問題がないこと
犯罪に関与したことがないのはもちろんですが、年金に未加入の場合もNGです。
・生計
日本で暮らしていくだけの経済力が必要となります。
・日本語能力
日本人の7~8歳レベルの日本語の読み書きが必要になります。ひらがな、カタカナだけでなく小学校1年生で習うような漢字は知っている必要があります。
日本国籍の取得方法
日本国籍を取得する為には、申請書と上記に記載した必要書類を帰化申請をしようとしている住所地を管轄する法務局もしくは地方法務局に申請をします。
・日本国籍を取得した申請数
帰化許可申請する数は年々増えています。昭和44年では2,153人だったのが、平成5年に10,452人と1万人を超え、毎年安定してほぼ1万人以上の外国人が日本国籍を取得しています。
年 |
帰化許可申請者数 |
帰化許可 |
昭和44年 |
5,372人 |
2,153人 |
平成5年 |
12,706人 |
10,452人 |
平成20年 |
15,440人 |
13,218人 |
平成30年 |
9,942人 |
9,074人 |
参考 法務省
永住ビザではできないこと
外国人が日本に長期間滞在するには、日本国籍を取得する以外に永住ビザを取る方法があります。日本国籍の取得と異なり、永住ビザではできないことがあります。
日本国籍を取得すると、パスポートや戸籍は日本であり、完全に日本人と同じ扱いになります。役所手続きや届け出、公的書類をとるときは日本人と同じですし、在留カードを所持する必要もありません。
また大きく違うのが、永住ビザであっても退去強制の可能性はゼロではないのですが、日本国籍を取得すると完全にゼロになります。
永住ビザがあれば、退去強制までいかなくても一度出国をすると再入国許可が必要になります。みなし再入国の場合は1年、再入国許可の場合は5年と期間が決まっているのですが、この時期を超えてしまうと永住ビザがあっても消滅してしまうのです。
日本国籍を取得している場合は、こんなことはありません。資格が消滅するという事自体がないのです。
日本国籍を取得するメリットまとめ
外国人が日本に長期滞在をするためには、在留ビザが必要となります。しかし滞在内容や期間などが定められており、この内容以外で滞在をすると、不法滞在となり強制帰国となります。
そのため、仕事内容に縛られず、滞在期間も無期限にするためには永住権をとるか国籍をとるかになります。日本国籍をとると、完全に日本人と同じことができるようになります。たとえば永住権取得ではできない、選挙に立候補するなど行動が縛られることはありません。
しかし日本国籍をとるためには、母国の国籍を捨てることになるのでそれだけの覚悟が必要となります。
また収入や国籍、親族関係などさまざまな証明をする書類が必要となるので、しっかりと時間をかけて準備をすることが大切です。
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