なかなか進まない特定技能。実はもっと負担なく人手確保が出来る方法とは?

執筆者 5月 28, 2020ニュースコメント0件

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皆さん、こんにちは。外国人人材の派遣・紹介をしている(株)藤伸興業です。

 

前回は日本に住んでいる外国人の派遣についてお話しましたが、今回はなかなか進んでいない特定技能の制度と費用、運用上のリスクについて詳しくお話したいと思います。

 

前回の記事はこちら

【247 番の記事が挿入されます】

 

今回、コロナ感染が世界全体で拡大したことにより、特定技能協定国からの受入れにも大きく遅れが生じています。

 

生産を遅らせる必要があり、売り上げに影響する事態になっている企業もあるのではないでしょうか。

 

多くの改善点が叫ばれる特定技能の制度とは、一体どんなものなのでしょうか?

 

特定技能・技能実習・人材派遣など、どのやり方が自社に合っているのか判断する上で、本記事を是非ご参考ください。

 

 

特定技能が制定されてから今まで

厚生労働省によれば、2030年までに644万人の労働力が不足すると予想され、すでに運輸業や外食、介護、宿泊、建設業などの分野で人手不足が顕著になってきました。

 

これは、女性の社会進出や定年退職後のシニア世代の労働力を加味してもなお、不足すると考えられる数値です。

 

つまり、今後さらに進行する少子高齢化により、労働人口不足が日本経済と社会基盤の持続可能性を阻害し得る状況にまでなってきているということなのです。

 

そこで政府は、その危機感からハイピッチで2018年12月8日に参議院本会議で改正出入国管理法を可決し、2019年4月から施行を開始しました。

 

外国人が日本で働くための就労ビザは、元々エンジニアや通訳・翻訳、広報、医者、貿易などの“ハイスキルな職種”でしか取得ができませんでした。

 

「特定技能」は、外食、農業、建築、宿泊、介護など14業種へ9か国から(ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴル)外国人を受け入れ、5年間の就労を許可するものです。

 

いわゆる単純労働を外国人に開放した、という新たな取り組みになります。

 

一方、技能実習とは、日本で習得した技術を母国に帰り、国の成長のために役立てるという「国際貢献」を名目とした制度で、特定技能に先だってスタートした施策です。

 

3~5年まで滞在が可能で、所定の試験を受けることで特定技能ビザへの更新が可能になりました。

 

特定技能では、当初5年間で約34.5万人、初年度で最大4万人程度を受け入れる見込みを立てていましたが、特定技能での在留外国人数は1019人に留まっています(2019年11月末時点)。

 

なぜ、特定技能は進まないのか?

単純に特定技能のビザが下りている人数だけ見ても、特定技能がなかなか進んでいない現状は一目瞭然です。何がネックになっているのでしょうか。

 

複雑な申請書類と厳しい審査基準

 

 1人あたりに必要な提出書類は150枚近くあり、煩雑であることや、送り出し元の国とのやりとりに時間がかかることから、許認可までのプロセスに時間がかかり、受け入れが滞っています。 

 

 また、技能実習で約3年の実習経験を経ると無資格で特定技能の資格を取得できることから、現時点では特定技能取得者の大半が移行組であり、ビザ移行に際する審査に時間を要しているようです。

 

 

5年したら帰国しなければならない

 

 特定技能には1号と2号という2種類あり、1号が通算5年までしか日本にいられないビザなのに対して、2号(建設業と造船・船用工業)には日本滞在の期間に制限がありません。

 

多くの外国人は1号が終了すると本国に帰国しなければならないため、最初から特定技能を取るのではなく、まず技能実習から日本で就労をスタートさせ、その後特定技能への移行を見越しているケースが多いようです。

 

 

2種類の試験(①各業界の知識を問う試験+②日本語能力試験(N4以上))に合格しなければならない

 

 急ピッチで進められた施策のため、送り出し機関との連携や体制が整っていない中でのスタートとなったこともあり、日本語試験の開催国は昨年時点で日本語試験は4カ国、技能試験は6カ国で開催されたに過ぎず、開催回数が少ない現状があります。

 

日本企業は人を受け入れたくても、国によって制度の整備に差があり、そもそも申請のスタートラインに立てていない状況です。

受入れ費用を賄える企業の資金力・運用力

 

 最低でも、送り元の現地人材紹介会社への紹介料は1名につき20~40万円、受入れ後も登録支援機関へ月3~5万円はかかります。

 

特定技能制度を使って海外から人材を確保するには、そもそも企業の資金力や運営基盤が必要であり、就労期間に制限があることを考えれば、長期的なオペレーションをするには体力が必要です。

 

中小企業にはハードルが高い制度と言えるでしょう。

 

 渡航リスク

 

 地震、津波による被害や新型ウィルスの感染拡大の影響など予想不可能な自体が起きた場合、渡航自体をキャンセル・延期したり、採用を辞退する可能性があります。

 

実際、今回の新型コロナウィルスの影響により、数百人規模で送り出しが先送りになる事態が発生しています。

 

家族帯同不可という制限

 

 1号は5年で帰国することが前提なので、日本に家族を連れてくることはできません(これは、技能実習も同様です)。

 

2号は、回数制限のない更新に道が開かれているため、本国から家族を日本に連れてくることができます。

特定技能は、雇用者側が抱えるリスクが大きい

受入れを希望する企業の意に反して、現状は特定技能受入れにあたる国家間の制度の整備に差があることや、審査に時間を要していることがそもそもボトルネックになっている状況です。

 

それだけでなく、受入れにあたって雇用側のリスクや負担も大きく、そもそも受け入れるべきかどうか、検討要素がいくつかあります。

 

 

同一業種であれば転職が可能

 

 例えば介護分野で特定技能のビザを取得すると、介護業種であれば本人の希望で転職が可能とされています。

 

企業側には拘束力はありませんので、せっかく時間と多額の費用をかけて受け入れをしても、骨折り損になることも十分に考えられます。

 

実際、すでに特定技能を取得したが入国前にはすでに斡旋会社からアプローチを受けていたのか、企業が受け入れを開始してから1か月も経たないうちに半数以上が他社へ転職してしまったというケースもあるようです。

 

 ※素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の一部業務は区分を超えて転職可

 

 

直接雇用が原則。自社の勝手な都合で解雇することは出来ない。

 

 例えば、今回の新型コロナウィルスのような影響で工場の生産が落ちてしまい、経営の先行きが見えなくなるというような事態が起こるとします。

 

特定技能は直接雇用であり、日本人と同等以上の待遇が求められますので、会社側の都合により解雇をすることはできません。

 

また、一定の生産量がなく、シーズンに合わせて人員の増減が見込まれるような業務の場合、特定技能制度はあまり向かないかもしれません。

 

受入れにかかる多額の費用

 

 こちらは後述しますが、長期で見ると技能実習や在留外国人派遣よりも費用がかかります。

 

 

受け入れまでに1年近くを要する

 

 実際に受入れを決めてから実際に日本での就労開始までには、1年以上かかると見ておくのがよいでしょう。

 

その間には、登録支援機関と現地送り出し機関の決定、志願者が2つの試験に合格すること、採用、入国管理局への申請・審査、入国後オリエンテーションなど、長いプロセスがあります。

 

よって、長期的な採用計画が可能でなく、人材確保が急務である場合はあまり向かない制度です。

 

来日日程がなかなか読めず、採用計画が立てられない

 

 先述の通り、日本だけでなく送り出し元の国で地震、津波による被害や新型ウィルスの感染拡大の影響など、予想不能な自体が起きた場合、渡航や採用自体をキャンセル・延期するようなことも考えられます。

 

今回のコロナ感染拡大は、予測不能な事態であり、採用計画に大きく影響している企業も多いと思われます。

 

また、審査がなかなか通らない、審査が通らなかったという場合は、予想よりも長くかかる可能性もあり、いつから就労可能なのか目途がなかなか立てられない不便さもあります。

上記は特定技能についてお話しましたが、技能実習もしかり、企業側が考慮しなければいけない点は多々あるのです。

海外から受け入れるしか方法はないのか?

 いわゆる単純作業の業務には、特定技能で人員を確保していくまでには前述のような課題が多く存在し、非常に受け入れのハードルが高いということが分かったかと思います。

 

一方、すでに日本にいて、日常会話レベル以上が話せる外国人といえば、多くの場合「留学生」や「高度スキルを持つ就労ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザなど)」が思い浮かぶと思います。

 

特に留学生に関しては、もともと日本での就労に意欲があり、日本の文化や慣習に興味・理解があるだけでなく、日本語も日常会話以上を理解できる人材であるため、企業としても長期的に育てていきたい人材になり得ます。

 

ただ、そういった留学生は、日本語レベルが高ければ高いほど争奪戦になるので、自分で日本語が生かせる仕事を得ます。

 

単純作業の業種には、そういった人材はやってこないのです。

 

多くの場合、アルバイト先で正社員として雇用されるケース(「技術・人文知識・国際業務ビザ」の業務に相応しないものの、申請が通っているもの)や、一旦卒業後に自国へ帰り、技能実習生として再び日本に戻ってくる、もしくは特定技能制度を利用して日本で働くパターンのようです。

 

今後、ゆっくり特定技能ビザによる受け入れ人数は増えていくでしょうが、5年後に帰国が原則であることや転職のリスクがあること、企業の費用負担が大きいことを考えると、企業側がそこまで負担を強いられなくても、他に方法はないのか?と思うのではないでしょうか。

 

そこに、メディアで取り上げられているのが留学生ばかり、という盲点があります。

 

人材派遣で在留外国人を採用する

 前回の記事でもお伝えした通り、日本に数年~数十年住んでいる在留外国人で、労働人口に外国人労働者数は1,658,804人、そのうち「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分に基づく在留資格の保持者は531,781 人 (全体の 32.1%) です。

 

技能実習生の383,978 人 (同 23.1%) を大幅に上回る労働力なのです。

 

弊社では、就労制限なく働ける’身分系在留資格’と資格外活動許可の下りた「特定活動(難民申請中)」、週28時間以内であれば働ける「家族滞在」「留学生」の在留資格などが、軽作業系の業務~接客などの業務で活躍しています。

 

詳細は、前回記事をご参考ください。人材派遣で在留外国人スタッフを受け入れるメリット・デメリットについてお分かりいただけるかと思います。

 

前回の記事はこちら

【247 番の記事が挿入されます】

 

また、こういった人材は長年日本に住んでいるため、N4レベル以上とされる特定技能よりも、それ以上の日本語能力や日本の慣習・文化への理解がある場合もあります。

 

この在留外国人たちはすでに日本の労働市場では即戦力になってきており、特定技能や技能自習と併せて検討すべき選択肢になってきているのです。

 

費用面では、特定技能や技能実習と比べてどうでしょうか?

 

特定技能・技能実習・人材派遣の費用比較 ~人材派遣とあまり変わらない!~

以下は、特定技能・技能実習・人材派遣をそれぞれ3年間行った場合、1人あたりにかかる費用の概算です。

 

※国家間の協定により費用負担の相場も異なり、支援費についても登録支援機関も現状は手探り状態のためあくまで予想値となります。(社労士の助言を基に作成)

 

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特定技能と技能実習は、上記項目以外にも登録支援機関や送り出し機関で費用が発生する可能性があります。

 

 

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※工場での軽作業など業務で、社保を含まない週28時間以下の勤務者でシフトを埋めたことを想定し、仮に派遣単価1,500円としています。

 

上記の表をご覧いただくと、費用面ではそう大きく変わらないことがことが分かると思います。

 

 

長期的に見ると3つの受け入れ方法、どちらが良いの?

 

受入れ人数に制限がない、欲しいタイミングで採用が出来る、長期的に見れば海外から人を連れてくるのとそう費用的に変わらない、日本語レベルもN4以上の方たちが採用出来るかもしれない、既に日本で就労経験がある、ビザの問題がない、将来的に長期雇用の可能性もあり・・・

 

こういった点では、在留外国人の派遣は、十分特定技能や技能実習に変わる即戦力となりえるのではないでしょうか。

 

むしろ、2020年4月より施行される同一労働・同一賃金により、外国人も日本人と同等以上の待遇が求められ、日本人と変わらない労働力であることを忘れてはいけません。

 

特定技能(1号)や技能実習には就労期間が最大5年という制限があり、特定技能に関しては転職の可能性もあるため、受入れにおける手続き・費用・オペレーション上の負担やコストは検討の余地があると思います。

 

もちろん、勤務先の地域によっては、周辺にそもそも外国人が住んでおらず、特定技能や技能実習制度に頼らざるを得ない企業や、業務内容によって派遣では対応が難しいものもあるかと思いますが、今後人手不足解消のために在留外国人人財を活用していくという視点も是非持っていただきたいです。

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著者 アドミン

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