日本は現在、あらゆる業種で人手不足が深刻化されています。
電気・電子情報関連産業も人手不足が深刻な産業の一つであり、2023年には6万2000人が不足すると予想されています。そんな中日本政府は人手不足の解決策として特定技能「電気・電子情報関連産業」を施行しました。
今回dnusでは、特定技能「電気・電子情報関連産業」について職種から取得方法まで徹底解説します。
電気・電子情報関連産業の現状について
電気・電子情報関連産業とは?
現在、自動車の電動化が進み、自動車産業はMASEなどの自動車革命が起きています。
そんな中、自動車の輸出大国である日本は自動車の電動化に伴い、電子部品の需要も拡大しています。
このような電子部品の製造を行う産業のことを「電気・電子情報関連産業」と呼びます。
「電気・電子情報関連産業」は、日本経済にとって必要不可欠な産業であり、社会のインフラ整備や幅広い生産財を供給する、日本の製造業の根幹を担っています。
産業別外国人雇用事業所の割合
(出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】)
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、全事業所における外国人労働者の割合が最も多かった事業は製造業の21.4%となっています。
製造業では、外国人労働者数が年々増加しており、上の図表のように外国人を雇用している事業所数も年々増加しています。
製造業の「素形材産業」と「産業機械製造業」に関する記事はこちらをご覧ください。
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現状と課題について
電気・電子情報関連産業において、自動車の電動化に伴い、電子部品の製造に対する需要が国内外問わず高まっています。
需要が高まる一方で、電気・電子情報関連産業における労働力は年々不足しており、早急に改善できる見通しが立っていません。
日本政府は、電気・電子情報関連産業の人手不足の解消に向けて、生産性の向上や国内人材の確保に取り組んできました。
しかし人手不足が完全に解消されるのは難しく、経済産業省によると電気・電子情報関連産業における人手不足の見込み数は、2023年までに6万2000人となっています。
有効求人倍率
厚生労働省によると、平成29年度の電気・電子情報関連産業に関連する職業分類における有効求人倍率は、2.75倍となっています。
職種における有効求人倍率は、例でいうと金属溶接・溶断工が2.50倍、プラスチック製品製造工が3.70 倍、製品包装作業員が3.60 倍となっています。
全業種の有効求人倍率が1.46倍なので、全業種の有効求人倍率と比較しても大きく上回る結果となっています。
特定技能1号「電気・電子情報関連産業」について
そもそも特定技能とは?
そもそも特定技能とは何でしょうか?
特定技能は一言で言うと、「一定の知識や経験を持った即戦力となる外国人が持つ在留資格」のことです。
dnusでは特定技能に関する情報をひとつひとつ分かりやすく解説しています。
合わせてこちらの記事をご覧下さい。
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特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・船用工業の2業種です。特定技能「電気・電子情報関連産業」は現時点ではその特定技能2号の2業種の1つに指定されていません。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の受入れ見込数
特定技能「電気・電子情報関連産業」分野において、2023年までの受入れ見込数は最大4,700人とされています。
特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得した外国人を受け入れると共に、毎年約1%の生産性向上と、国内人材の確保による労働効率化(2023年までに6万2,000人程度)、また国内人材を2023年までに約7,500人~8,500人確保しても、なお不足すると見込まれています。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の対象となる業務は?
次に、特定技能「電気・電子情報関連産業」で行われる業務について説明します。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の対象となる業務は全部で13業務あります。
対象となる業務は以下のとおりです。
①機械加工
②金属プレス加工
③工場板金
④めっき
⑤仕上げ
⑥ 機械保全
⑦電子機器組立て
⑧電気機器組立て
⑨プリント配線板製造
⑩プラスチック成形
⑪塗装
⑫溶接
⑬工業包装
それぞれの業務内容を説明します。
①機械加工
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や 切削工具を用いて金属材料等を加工する作業に従事します。
②金属プレス加工
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞り等を行い成形する作業に従事します。
③工場板金
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業に従事します。
④めっき
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で腐食防止等のため金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業に従事します。
⑤仕上げ
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で手工具や工作機械により部品を加工・調整し、精度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業に従事します。
⑥ 機械保全
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業に従事します。
⑦電子機器組立て
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で電子機器の組立て及びこれに伴う修理を行う作業に従事します。
⑧電気機器組立て
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で電気機器の組立てや、それに伴う電気系やメカニズム系の調整や検査を行う作業に従事します。
⑨プリント配線板製造
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で半導体等の電子部品を配列・接続するためのプリント配線板を製造する作業に従事します。
⑩プラスチック成形
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断でプラスチックへ熱と圧力を加える又は冷却することにより所定の形に成形する作業に従事します。
⑪塗装
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業に従事します。
⑫溶接
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で熱又は圧力若しくはその両者を加え部材を接合する作業に従事します。
⑬工業包装
指導者の指示を理解し、労働者自身の判断で工業製品を輸送用に包装する作業に従事します。
製造業「産業機械製造業」と異なる業務は、鋳造、鍛造、ダイカスト、鉄工、機械検査の5業種が、製造業「電気・電子情報関連産業」の業務に含まれないことです。
以下、製造業における特定技能3分野の対象業務になります。
(出典:経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」)
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特定技能 素形材産業
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特定技能 産業機械製造業
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また、上記に当てはまる業務に従事する日本人が普段従事する関連業務に、外国人労働者が付随的に従事することが可能です。
例えば、関連業務として、以下のものが予想されます。
・原材料や部品の調達・搬送作業
・各職種の前後における工程作業
・クレーンやフォークリフトなどの運転作業
・清掃や保守管理作業
(参照:電気・電子情報関連産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針)
雇用形態は?
直接雇用のみ可能です。
派遣は認められていません。
外国人が特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得するには?
では特定技能1号「電気・電子情報関連産業」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。
もう1つは、技能実習2号を修了して、無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。
ではそれぞれの方法について詳しく説明します。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の取得方法|①「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する
特定技能評価試験について
まず、特定技能1号「電気・電子情報関連産業」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「産業機械製造業」では経済産業省の定める「製造分野特定技能1号評価試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、こちらをご覧ください。
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「製造分野特定技能1号評価試験」について
製造分野特定技能1号評価試験は、外国人が来日する前に素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3つの分野における技能や知識を確認・評価するための試験です。
製造分野特定技能1号評価試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」が施行されてから、経済産業省が選定した機関が実施している試験です。
製造分野特定技能1号評価試験は、経済産業省が指定する19の業務区分毎に試験があります
19の業務区分は以下の通りです。
鋳造、鍛造、ダイカスト、機 械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処 理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリン ト配線板製造、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装
電気・電子情報関連産業における「製造分野特定技能1号評価試験」の試験科目
上記でも述べたように、製造分野特定技能1号評価試験は全部で19業種の試験があります。
電気・電子情報関連産業では、その中の18業務で試験が実施されます。
電気・電子情報関連産業の18業務は以下のとおりです。
①機械加工
②金属プレス加工
③工場板金
④めっき
⑤仕上げ
⑥ 機械保全
⑦電子機器組立て
⑧電気機器組立て
⑨プリント配線板製造
⑩プラスチック成形
⑪塗装
⑫溶接
⑬工業包装
電気・電子情報関連産業における「製造分野特定技能1号評価試験」では、学科試験と実技試験があります。
学科試験は100満点のうち65点以上で合格とし、実技試験では100点満点で60点以上が合格基準となります。
レベルは技能検定3級と同じくらいです。技能検定3級は、技能実習2号修了に相当します。
また、特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得する際に、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
②退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①試験日において満17歳以上であること
※詳細は経済産業省の「製造分野特定技能1号評価試験実施要領」をご覧下さい。
電気・電子情報関連産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
日本語試験について
次にもう一つ、日本語試験として「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を試験するものです。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の取得方法|②技能実習2号から特定技能「電気・電子情報関連産業」へ移行する
特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
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特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人を受け入れるために
前章では、外国人労働者が特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得する方法について詳しく紹介しました。
次に、特定技能「電気・電子情報関連産業」資格を持った外国人労働者の雇用(受入れ)を検討している企業の方が、どうすれば特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人労働者を受入れることができるか説明します。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人を受け入れるために、特に以下の2項目に注意する必要があります。
①業務
②協議会への加盟
それぞれ説明します。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人を受入れるために|①業務
1つ目に、特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得した外国人労働者が行う作業内容が、電気・電子情報関連産業に該当する業務である必要があります。
電気・電子情報関連産業の対象業務となる範囲は以下のとおりです。
(出典:経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受入れについて」)
また、特定技能「電気・電子情報関連産業」を取得した外国人労働者が業務する事業場は、上記の産業内において、直近1年間で「製造品出荷額等」が発生している必要があります。
製造品出荷額等とは、直近1年間の製造品出荷額、加工賃収入額、くず廃物の出荷額およびその他収入額の合計のことで、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税及び地方揮発税を含んだ額のことを言います。
詳細は、法務省の「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領」をご覧ください。
特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人を受入れるために|②協議会への加盟
2つ目の注意点として、経済産業省が組織する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する必要があります。
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会には必ず加入する必要があり、協議・連絡会では、以下の活動を行い、構成員の連携強化や事業者の情報把握などを目的としています。
活動内容
・特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人を受け入れる制度の趣旨や優良事例の周知
・ 特定技能所属機関等に対して法令遵守の啓発を行う
・就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報把握及び分析
・ 地域別の人手不足の状況の把握及び分析
・特定技能外国人受入れに必要なその他の情報・課題等の共有・協議
特定技能「電気・電子情報関連産業」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「電気・電子情報関連産業」について詳しく紹介しました。
電気・電子情報関連産業は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、技能実習生の受け入れ増加とともに、特定技能「電気・電子情報関連産業」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、外国人労働者が増え、人手不足の状況が少しでもよくなればと思います。
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