日本は現在、あらゆる業種で人手不足が深刻化されています。
飲食料品製造業も人手不足が深刻な産業の一つであり、2023年には7万3000人が不足すると予想されています。そんな中日本政府は人手不足の解決策として特定技能「飲食料品製造業」を施行しました。
今回dnusでは、特定技能「飲食料品製造業」について職種から取得方法まで徹底解説します。
飲食料品製造業の現状について
飲食料品製造業は、その名の通り加工食品や飲料水などを製造する産業のことを指します。
健康食品の需要やダイエットの普及など経済社会が変化していく中で、食料品製造業は国内需要が高く、日本の雇用と生産を支える産業として非常に重要な役割を果たしています。
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、全事業所における外国人労働者の割合が最も多かった事業は製造業の21.4%となっています。
そして、全事業所の中でも最も割合が高い「製造業」の中で、「飲食料品製造業」は事業所数及び従業員数が製造業の中で第1位となっています。
飲食料品製造業は国内事業の中でも大きな割合を占める一方、飲食料品製造業分野では年々労働者が不足している状況が続いています。
それでは、詳しく見ていきましょう。
有効求人倍率
(参考)飲食料品製造業分野における 外国人材受入れ拡大について
厚生労働省によると、平成29年度の飲食料品製造業に関連する職業分類における有効求人倍率は、2.78倍となっています。
全業種の有効求人倍率が1.54倍なので、全業種の有効求人倍率と比較しても大きく上回る結果となっています。
また、上グラフから分かるように全産業平均の有効求人倍率と比較しても、飲食料品製造業の有効求人倍率が年々高くなっていることがわかります。
欠員率
次に、飲食料品製造業の欠員率について紹介します。
まず、欠員率というのは、現在働いている労働者の数に対する不足している労働者を
表す割合のことを言います。
算出方法は以下のとおりです。
飲食料品製造業の欠員率を見てみると、年々増加していることから、人手不足が増加していることがわかります。
日本政府は、飲食料品製造業の人手不足の解消に向けて、生産性の向上や国内人材の確保に取り組んできました。
しかし人手不足が完全に解消されるのは難しく、農林水産省によると飲食料品製造業における人手不足の見込み数は、2023年までに7万3000人となっています。
特定技能1号「飲食料品製造業」について
そもそも特定技能とは?
そもそも特定技能とは何でしょうか?
特定技能は一言で言うと、「一定の知識や経験を持った即戦力となる外国人が持つ在留資格」のことです。
dnusでは特定技能に関する情報をひとつひとつ分かりやすく解説しています。
合わせてこちらの記事をご覧下さい。
【253 番の記事が挿入されます】
特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・船用工業の2業種です。特定技能「飲食料品製造業」は現時点ではその特定技能2号の2業種の1つに指定されていません。
特定技能「飲食料品製造業」の受入れ見込数
特定技能「飲食料品製造業」分野において、2023年までの受入れ見込数は最大3万4,000人とされています。
特定技能「飲食料品製造業」を取得した外国人を受け入れると共に、毎年約2%の生産性向上と、国内人材の確保による労働効率化(2023年までに2万7,000人程度)、また国内人材を2023年までに約1万2000人確保しても、なお不足すると見込まれています。
飲食料品製造業で求められる人材は?
飲食料品製造業で求められる人材はHACCP(ハサップ)を含む衛生管理の知識を持っている人材です。
HACCP(ハサップ)とは、「Hazard(危害)」、「Analysis(分析)」、「Critical(重要)」、「Control(管理)」、「Point(点)」の言葉の略語で、食品を製造する際に安全を確保するための管理手法のことを言います。
HACCPは日本語だと、「危害分析重要管理点」と訳され、今後飲食料品の製造現場において、上記のような衛生管理の知識を持った人材の確保が最優先に求められています。
また、飲食料品の製造工程で衛生管理ができる人材は以下のとおりです。
・主な食中毒菌や異物混入に関する基本的な知識や技能を持っている
食中毒菌の繁殖防止や殺菌の方法について正しい知識を身につけており、適切
に対応できる。
・食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識や技能を持っている
原料の選別・洗浄から製造・保管までの間、食品を常に衛生的に管理で
きる。
・施設設備の整備と衛生管理に関する基本的な知識や技能を持っている
施設内外の清掃・点検を的確に行い、施設設備の衛生状態を良好に管理
できる。
これらの知識や技能を持つ外国人材が、飲食料品製造業分野に求められています。
特定技能「飲食料品製造業」の対象となる業務は?
次に、特定技能「飲食料品製造業」で行われる業務について説明します。
特定技能「飲食料品製造業」の対象となる業務は7つに分類されます。
対象となる業務は以下のとおりです。
1.食料品製造業
2.清涼飲料製造業
3.茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
4.製氷業
5.菓子小売業(製造小売)
6.パン小売業(製造小売)
7.豆腐・かまぼこ等加工食品小売業
また、1.食料品製造業の内訳は以下のとおりです。
①畜産食料品製造業
②水産食料品製造業
③野菜缶
詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
④調味料製造業
⑤糖類製造業
⑥精穀・製粉業
⑦パン・菓子製造業
⑧動植物油脂製造業
⑨その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)
特定技能「飲食料品製造業」の外国人労働者が従事する業務は、飲食料品製造業全般の飲食料品の製造、加工、安全衛生の管理が挙げられます。しかし、飲食料品の中で酒類は対象外となっています。
また、上記に当てはまる業務に従事する日本人が普段従事する関連業務に、外国人労働者が付随的に従事することが可能です。
例えば、関連業務として、以下のものが予想されます。
・原材料の調達、受入れ、搬送作業
・製品の納品
・清掃
・事務所の管理の作業
(参照)農林水産省「飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について」
雇用形態は?
直接雇用のみ可能です。
派遣は認められていません。
外国人が特定技能「飲食料品製造業」を取得するには?
では特定技能1号「飲食料品製造業」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。
もう1つは、技能実習2号を修了して、無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。
ではそれぞれの方法について詳しく説明します。
1.「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格
特定技能評価試験について
まず、特定技能1号「飲食料品製造業」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「飲食料品製造業」では農林水産省の定める「飲食料品製造業技能測定試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、こちらをご覧ください。
【254 番の記事が挿入されます】
「飲食料品製造業技能測定試験」について
飲食料品製造業技能測定試験は、外国人が就労のため来日する前に、飲食料品製造業分野における技能や知識を確認・評価するための試験です。
飲食料品製造業技能測定試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」が施行されてから、農林水産省が選定した機関であるOTAFF(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)が実施している試験です。
飲食料品製造業技能測定試験では、主に食品等を衛生的に取り扱い、飲食料品の製造・加工作業の業務について、直ちにHACCPに沿った衛生管理に対応できる専門性や技能を持っているか確認します。
飲食料品製造業における「飲食料品製造業技能測定試験」の試験科目
飲食料品製造業における「飲食料品製造業技能測定試験」では、学科試験と実技試験があります。
学科試験は100満点のうち65点以上で合格とし、実技試験では100点満点で60点以上が合格基準となります。
学科試験の試験科目
実技試験の試験科目
レベルは技能検定3級と同じくらいです。技能検定3級は、技能実習2号修了に相当します。また、特定技能「飲食料品製造業技能測定試験」を取得する際に、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
(1)在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
(2)退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
(1)試験日において満17歳以上であること
※詳細はOTAFFの「特定技能1号技能測定試験飲食料品製造業技能測定試験」をご覧下さい。
日本語試験について
次にもう一つ、日本語試験として「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を試験するものです。
2.技能実習2号から特定技能「飲食料品製造業」へ移行
特定技能「飲食料品製造業」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
関連記事
【79 番の記事が挿入されます】
特定技能「飲食料品製造業」の外国人を受け入れるために
前章では、外国人労働者が特定技能「飲食料品製造業」を取得する方法について詳しく紹介しました。
次に、特定技能「飲食料品製造業」資格を持った外国人労働者の雇用(受入れ)を検討している企業の方が、どうすれば特定技能「飲食料品製造業」の外国人労働者を受入れることができるか説明します。
特定技能「飲食料品製造業」の外国人を受け入れるために、以下の点に注意する必要があります。
①食品産業特定技能協議会に入会すること
②食品産業特定技能協議会 p>
では、食品産業特定技能協議会について説明します。
食品産業特定技能協議会について
特定技能「飲食料品製造業」を取得した外国人労働者を雇う際、外国人の受け入れ事業者である特定技能所属機関は、「食品産業特定技能協議会」に入会しなければいけません。
「食品産業特定技能協議会」は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関、その他の関係者で構成されており、受け入れ事業者は、食品産業特定技能協議会に対して、必要な協力を行う必要があります。
詳細は、「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」をご覧ください。
特定技能「飲食料品製造業」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「飲食料品製造業」について詳しく紹介しました。
飲食料品製造業は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、技能実習生の受け入れ増加とともに、特定技能「飲食料品製造業」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、外国人労働者が増え、人手不足の状況が少しでもよくなればと思います。
特定技能に関して概要をまとめた資料はこちらからダウンロードできます。
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