日本は現在、あらゆる業種で人手不足が深刻化されています。
自動車整備も人手不足が深刻な産業の一つであり、2023年には7万3000人が不足すると予想されています。そんな中日本政府は人手不足の解決策として特定技能「自動車整備」を施行しました。
今回dnusでは、特定技能「自動車整備」について職種から取得方法まで徹底解説します。
自動車整備の現状について
自動車整備は、その名の通りガソリン車やディーゼル車などの自動車を整備することを指します。
近年、ハイブリッド車や電気自動車、また今後は水素自動車がますます普及していきますが、そういった状況の中で自動車を安全にかつ快適に運転できるように、自動車を点検・修理する仕事を自動車整備が担います。
しかし、様々な理由から自動車整備分野では年々人手不足が深刻になっています。
詳しく見ていきましょう。
有効求人倍率
(出典:厚生労働省「職業安定業務統計」)
厚生労働省によると、平成29年度の自動車整備に関連する職業分類における有効求人倍率は、3.73倍となっています。
全業種の有効求人倍率が1.54倍なので、全業種の有効求人倍率と比較しても大きく上回る結果となっています。
また、上グラフから分かるように全産業平均の有効求人倍率と比較しても、自動車整備の有効求人倍率が年々増加していることがわかります。
高等学校卒業者数及び自動車整備学校入学者数の推移
(出典:全国自動車大学校・整備専門学校協会調べ)
自動車整備要員の平均年齢の推移
(出典:日本自動車整備振興会連合会編「自動車整備白書」)
また、上の2つの表は、高等学校卒業者数及び自動車整備学校入学者数の推移と自動車整備の労働者の平均年齢の推移を表しています。
自動車整備学校への入学者数を見てみると、近年大きく減少していることが分かります。そして、自動車整備の労働者の平均年齢も年々増加しています。
このことから、自動車整備を目指す若い学生が減少しており、平均年齢の高齢化から今後ますます人手が足りなくなることが予想されます。
一方で、自動車の保有台数は、国土交通省によると横ばいであることから、自動車の台数に対する自動車の点検や整備をする人の割合が年々減少しています。
日本政府は、自動車整備の人手不足の解消に向けて、生産性の向上や国内人材の確保に取り組んできました。
そのための施策として、作業効率向上に向けた設備機器の導入や若者への広報啓発のための、自動車整備士のPR動画やポスターの作成があります。
しかし若者の整備士の減少だけでなく、少子化や若者の車離れ、職業選択の多様化も作用し、人手不足が完全に解消されるのは、ますます難しい状況となっています。
国土交通省によると自動車整備における人手不足の見込み数は、2023年までに1万3000人となっています。
特定技能1号「自動車整備」について
そもそも特定技能とは?
そもそも特定技能とは何でしょうか?
特定技能は一言で言うと、「一定の知識や経験を持った即戦力となる外国人が持つ在留資格」のことです。
dnusでは特定技能に関する情報をひとつひとつ分かりやすく解説しています。
合わせてこちらの記事をご覧下さい。
【253 番の記事が挿入されます】
特定技能は全部で14業種あり、特定技能1号と特定技能2号の2つに区分されます。
14業種ある特定技能のうち、特定技能2号に指定されている業種は現在(2020年4月20日時点)で建築業と造船・船用工業の2業種です。特定技能「自動車整備」は現時点ではその特定技能2号の2業種の1つに指定されていません。
特定技能「自動車整備」の受入れ見込数
特定技能「自動車整備」分野において、2023年までの受入れ見込数は最大7,000人とされています。
特定技能「自動車整備」を取得した外国人を受け入れると共に、毎年約1%の生産性向上と、国内人材の確保による労働効率化(2023年までに4,000人程度)、また国内人材を2023年までに約2500人確保しても、なお不足すると見込まれています。
特定技能「自動車整備」の対象となる業務は?
次に、特定技能「自動車整備」で行われる業務について説明します。
特定技能「自動車整備」の対象となる業務は自動車の定期点検整備と自動車の分解整備の2つあります。
それぞれ解説します。
自動車の定期点検整備
まず、特定技能「自動車整備」の外国人材が従事する業務として自動車の定期点検整備があります。
自動車の定期点検整備では、道路運送車両法に基づく法定点検整備が行われます。
定期点検項目は以下のとおりです。
(出典:国土交通省「自動車整備分野における外国人の受入れ」)
1.ステアリング装置
自動車のハンドル操作の不具合を防止するために、ロッドの緩みやステアリング・ギヤ・ボックスの取り付けの緩み、がた、損傷等を点検します。
2.ブレーキ装置
自動車のブレーキの効き不良を防止するために、ホイール・シリンダの機能やブレーキディスクの摩耗および損傷等を点検します。
3.走行装置
自動車のホイールの脱落等を防止するために、ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み等を点検します。
4.動力伝達装置
自動車の走行時の振動や動力伝達不良を防止するために、プロペラシャフト連結部の緩み等を点検します。
5.電気装置
自動車のバッテリーの充電不良や各電子機器の動作不良、もしくは排気ガスの酸化を防止するために、バッテリ・ターミナル部の接続状態や点火プラグの状態等を点検します。
6.エンジン
自動車のエンジン出力低下や排気ガスの漏れ等の不具合を防止するために、シリンダ・ヘッド及びマニホールド各部の締付け状態、冷却装置の水漏れ等を点検します。
7.サスペンション
自動車のサスペンションの異音の発生や不具合を防止するために、リーフ・サスペンションの取付部及び連結部の緩み、がた、損傷等を点検します。
8.ばい煙・悪臭のあるガス・有害ガスなどの発散防止装置
自動車の排気ガスの漏れによる大気汚染を防止したり、熱害による火災発生等を防止するために、排出ガス減少装置の取付の緩みおよび損傷等を点検します。
自動車の分解整備
また、もう1つ特定技能「自動車整備」の外国人材が従事する業務として自動車の分解整備があります。
自動車の分解整備では、以下の重要部品や装置を取り外して行う整備や改造のことをいいます。
(出典:国土交通省「自動車整備分野における外国人の受入れ」)
・原動機
・動力伝達装置(クラッチ、トランスミッション、プロペラ・シャフト、ディファレンシャル)
・走行装置(フロントアスクル、シャフト等)
・かじ取り装置(ギヤボックス、リンク装置等)
・制動装置(マスタシリンダ、ブレーキディスク、バルブ類等)
・緩衝装置(シャシばね)
・連結装置(トレーラー・ヒッチ、ボール・カプラー)
自動車整備で求められる人材は?
特定技能「自動車整備」の外国人材に求められるものは、上記の自動車の定期点検整備と自動車の分解整備が1人で適切に行うことができる技能・スキルです。
この技能の水準は、3級自動車整備士と同じ水準と言われています。
これらの知識や技能を持つ外国人材が、自動車整備分野で働く外国人材に求められています。
雇用形態は?
直接雇用のみ可能です。
派遣は認められていません。
外国人が特定技能「自動車整備」を取得するには?
では特定技能1号「自動車整備」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。
1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。
もう1つは、技能実習2号を修了して、無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。
ではそれぞれの方法について詳しく説明します。
特定技能「自動車整備」の取得方法|①「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する
特定技能評価試験について
まず、特定技能1号「自動車整備」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「自動車整備」では国土交通省の定める「自動車整備分野特定技能測定試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、こちらをご覧ください。
【254 番の記事が挿入されます】
「自動車整備分野特定技能測定試験」について
自動車整備分野特定技能測定試験は、外国人が就労のため来日する前に、自動車整備分野における技能や知識を確認・評価するための試験です。
自動車整備分野特定技能測定試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」が施行されてから、国土交通省が選定した機関である一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会が実施している試験です。
自動車整備分野特定技能測定試験では、道路運送車両法に基づく「日常点検整備」、「定期点検整備」及び「分解整備」に関する専門性や技能を持っているか確認します。
これらの知識の水準は、道路運送車両法の第55条に基づき「自動車整備士技能検定試験3級」と同等の水準となっています。
自動車整備における「自動車整備技能測定試験」の試験科目
自動車整備における「自動車整備技能測定試験」では、学科試験と実技試験があります。
学科試験は全30問のうち65%以上の正解率で合格とし、実技試験では3課題の内得点合計が60%以上で合格となります。
学科試験の試験科目
①構造、機能及び取扱法に関する初等知識
②点検、修理及び調整に関する初等知識
③整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識
④材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識
実技試験の試験科目
①簡単な基本工作
②分解、組立て、簡単な点検及び調整
③簡単な修理
④簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
先ほども述べたように、水準は「自動車整備士技能検定試験3級」と同等の水準となっています。技能検定3級は、技能実習2号修了に相当します。
また、特定技能「自動車整備技能測定試験」を取得する際に、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
②退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
①試験日において満17歳以上であること
※詳細は国土交通省の「自動車整備分野特定技能評価試験実施要領」をご覧下さい。
日本語試験について
次にもう一つ、日本語試験として「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を試験するものです。
特定技能「自動車整備」の取得方法|②技能実習2号から特定技能「自動車整備」へ移行する
特定技能「自動車整備」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。
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【79 番の記事が挿入されます】
特定技能「自動車整備」の外国人を受け入れるために
前章では、外国人労働者が特定技能「自動車整備」を取得する方法について詳しく紹介しました。
次に、特定技能「自動車整備」資格を持った外国人労働者の雇用(受入れ)を検討している企業の方が、どうすれば特定技能「自動車整備」の外国人労働者を受入れることができるか説明します。
特定技能「自動車整備」の外国人を受け入れるために、以下の点に注意する必要があります。
①地方運輸局長の認証を受けた事業場であること
②自動車整備分野特定技能協議会に入会すること
詳しく説明します。
①地方運輸局長の認証を受けた事業場であること
まず、特定技能の外国人を受け入れるまでに、受け入れ先の企業は道路運送車両法第78条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場である必要があります。
地方運輸局長の認証は、限定認証や二輸のみも含みます。
②自動車整備分野特定技能協議会に入会すること
もう一つ、特定技能「自動車整備」を取得した外国人労働者を雇う際、外国人の受け入れ事業者である特定技能所属機関は、「自動車整備分野特定技能協議会」に入会しなければいけません。
「自動車整備分野特定技能協議会」は、平成31年3月に、特定技能外国人を適切に受入れるために設置されました。
自動車整備分野特定技能協議会は、国土交通省、学識者、登録支援機関、自動車整備事業者及び団体、その他の関係者で構成されており、受け入れ事業者は、自動車整備分野特定技能協議会に対して、必要な協力を行う必要があります。
自動車整備分野特定技能協議会に関する詳しい情報は、国土交通省のホームページ「自動車整備分野特定技能協議会」をご覧ください。
特定技能「自動車整備」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「自動車整備」について詳しく紹介しました。
自動車整備は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、技能実習生の受け入れ増加とともに、特定技能「自動車整備」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、外国人労働者が増え、人手不足の状況が少しでもよくなればと思います。
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