特定技能とは?
特定技能とは、「外国人が日本で就労するための新たな在留資格」のことです。そもそも在留資格とは、外国人が日本に入国するための資格であり、これがなければ日本に住むことも働くこともできません。2019年4月1日、新たな制度としてスタートしたのが特定技能という在留資格です。
特定技能の大目的は、外国人労働者の受け入れ拡大です。中小企業や小規模事業者をはじめとして、深刻化する人手不足に対応するために施行されました。特定技能は現在、日本国内において特に人手不足が深刻化している14の業種に対して、外国人の就労を解禁しています。
特定技能を取得できる外国人の国籍は?
では、特定技能を取得できる外国人の国籍に制限は設けられているのでしょうか。
結論から言うと、原則としてどんな国籍の外国人であっても特定技能を取得することができます。
ただし、現在例外が1つだけ存在します。それはイラン・イスラム共和国です。イラン・イスラム共和国は、他国政府から退去や帰国を命じられた自国民の引き取りを一部拒む対応をしています。例としては、イラン・イスラム共和国からの労働者が在留期間を超えて不法滞在した場合が挙げられます。日本政府が彼らに対して強制退去を命じても、彼らを日本国内で長期収容せざるを得なくなる可能性があります。これを危惧して日本政府は、イラン・イスラム共和国の外国人の特定技能での来日を許可していません。
つまり、特定技能を取得できる外国人の国籍は、厳密には「退去や帰国の命令を下した場合、自国民を受け入れることができる国」に限定されます。
現在、日本は特定技能を取得した外国人の受け入れを推進するため、送り出す国との間で覚書(※1)を締結しています。原則としてどんな国籍の外国人であっても、特定技能を取得し日本での労働が可能だと前述しましたが、実際に日本で労働する外国人はこの覚書を締結した国籍を持つ外国人にある程度限定されます。
※1:特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)のこと。次の章で詳しく解説します。
特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)とは?
特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)は、特定技能を有する外国人を送り出す国と日本との間で締結されます。この特定技能に関する二国間の協力覚書の主な目的は以下の3つです。
1.特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れを確保
2.特定技能外国人の保護
3.特定技能外国人を送り出す・受け入れる国両方の利益を強化
では、なぜこのような二国間の協力覚書が重要になってくるのでしょうか。
大きな理由は2つあります。悪質な仲介業者の排除と外国人労働者の労働環境の改善です。実は協力覚書が制定されるまで、外国人が日本で働くに当たって多くの悪質な仲介業者が存在していました。彼らは、外国人労働者に対して不当な保証金や手数料を徴収したり、多額の借金を背負わせたりしました。また、外国人労働者が来日し日本の企業で働いたとしても、受け入れ企業によっては過度な残業や賃金の未払いなど不当な扱いを受けることがありました。
特定技能に関する二国間の協力覚書では、これらのことが繰り返し起こらないように、違法な行為の取り締まり・規制の強化を行っています。二国間で覚書を締結することによって、悪質な仲介業者を排除するとともに、特定技能外国人が日本で安心して働けるような環境を整備することを目指しています。
日本が特定技能に関する二国間の協力覚書を締結している国は?
2020年6月8日現在、日本は以下の12ヶ国と特定技能に関する二国間の協力覚書を締結しています。
・フィリピン
・カンボジア
・ネパール
・ミャンマー
・モンゴル
・スリランカ
・インドネシア
・ベトナム
・バングラデシュ
・ウズベキスタン
・パキスタン
・タイ
(協力覚書公表順)
今後も情勢に応じて、協力覚書を締結する国は増減する可能性があります。
最新の情報に関してはこちらをご覧ください。
国によって手続きは異なるの?
二国間の協力覚書を締結した国の外国人が特定技能に関する活動を行う場合、その国や日本において必要な手続きがあります。特定技能外国人を送り出す国によって手続きがかなり異なる部分もあるので、注意が必要です。
2020年6月8日現在、法務省のHPで手続きが公開されている国とその内容についてご紹介します。内容については、各国で特徴的な手続きに焦点を当てて記載しています。
カンボジア
・カンボジアから新たに受け入れる場合
カンボジア政府から認定を受けた現地の送出機関を通じて、人材の紹介や雇用契約の締結をする必要があります。日本側の受入機関は、カンボジア国籍の外国人に対し登録証明書の送付を依頼し、地方出入国在留管理官署に発行された登録証明書を添付の上、特定技能に関する在留資格認定証明書の交付申請を行います。
・日本に在留する方を受け入れる場合
必ずしもカンボジア認定送出機関を通じて行う必要はありません。日本の受入機関がカンボジア国籍の外国人に対して、直接採用活動を行うことができます。また、認定送出機関を通じて日本に在留するカンボジア国籍の方の紹介を受け、雇用契約を締結することも可能です。
インドネシア
・インドネシアから新たに受け入れる場合
受入機関は、インドネシア政府が管理する求人・求職のための「労働市場情報システム(IPKOL)」に登録して求人することが推奨されています。
インドネシア国籍の外国人は日本へ渡航するための査証申請を行う前に、インドネシア政府が管理する海外労働者管理システム(SISKOTKLN)に登録する必要があります。登録完了後、インドネシア政府からインドネシア海外労働者派遣・保護庁の移住労働者証(E-KTKLN)が発行され、これを取得した上で査証申請を行う必要があります。
・日本に在留する方を受け入れる場合
日本で就労するインドネシア国籍の外国人自らが、インドネシア政府が管理する海外労働者管理システム(SISKOTKLN)にオンラインで登録し、移住労働者証(E-KTKLN)を発行する必要があります。
ネパール
・ネパールから新たに受け入れる場合
特定技能外国人の雇用に当たり、日本の受入機関がネパール国籍の方に対して直接採用活動を行うほか、駐日ネパール大使館に求人申込を提出することも可能です。
・日本に在留する方を受け入れる場合
ネパール国籍の外国人が特定技能外国人として就労するためには、この外国人が地方出入国在留管理官署に対し、特定技能への在留資格変更許可申請を行う必要があります。
フィリピン
新たに受け入れる場合も、日本に在留する方を受け入れる場合にも共通してフィリピン特有の手続きがあるので、そちらを紹介します。
日本の受け入れ機関は、必要書類(労働条件等を記載した雇用契約書のひな形など)を駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(POLO)に郵送し、所定の審査を受け、雇用主(特定技能所属機関)としてフィリピンの海外雇用庁(POEA)に登録される必要があります。
審査後、受入機関の代表者または委任された従業員は、POLO等に赴き、労働担当官による英語での面接を受ける必要があります。また、必要に応じてPOLO等による受入機関への実地調査が実施されます。
審査及び面接の結果、POLO等によって受入機関がフィリピン自国民の雇用主として適正であると判断がなされた場合、雇用主としてPOEAに登録されるとともに、求人情報が登録されます。
登録の結果、受入機関はフィリピン国籍の外国人の採用活動に着手することができます。
ミャンマー
・ミャンマーから新たに受け入れる場合
ミャンマーの制度上、ミャンマー政府から認定を受けた現地の送出機関を通じて、人材の紹介や雇用契約の締結が求められます。
・日本に在留する方を受け入れる場合
日本に在留するミャンマー国籍の方と雇用契約を締結する場合、送出機関を通じて行う必要はなく、日本の受入機関がミャンマー国籍の方に対して直接採用活動を行えます。
タイ
・タイから新たに受け入れる場合
特徴的な手続きとしては、タイの送出機関を利用するかしないかで、雇用契約書の認証を受けるタイミングが異なることです。送出機関を利用しないで雇用する場合は、在京タイ王国大使館労働担当官事務所に、雇用契約書等とともに在留資格認定証明書を提供する必要があります。送出機関を利用して雇用する場合は、送出機関等からあっせんを受ける前に、在京タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書のひな形等を提出し、認証を受ける必要があります。
・日本に在留する方を受け入れる場合
タイの制度上、受入機関は在京タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書等を提出し、認証を受ける必要があります。
モンゴル
・モンゴルから新たに受け入れる場合
日本で特定技能外国人として就労を希望するモンゴル国籍の外国人は、GOLWSへ求職者として登録申請する必要があります。受入機関は、GOLWSのデータベースへのアクセスし「特定技能モンゴル人候補者表」を見ることで求職者情報を得ることができます。
・日本に在留する方を受け入れる場合
特徴的な手続きとして、日本側の手続きではありませんが、モンゴル国籍の外国人がGOLWSの連絡先に雇用契約書等を送付する必要があります。
まとめ
今回は、特定技能を取得できる外国人の国籍や特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)について解説してきました。この記事のポイントは以下の2点です。
1.特定技能外国人を取得する外国人の主な国籍はある程度決まっている
2.特定技能外国人を送り出す国によって必要な手続きが異なる
さらに詳しく外国人採用について知りたい方は、ぜひ関連記事もご覧ください。






