『EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の雇用方法を徹底解説!(前半)』では、「EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士受入れ枠組みの概要」「受け入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)の要件」「外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の要件」「採用選考」「雇用契約」までを解説いたします。
EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士受入れ枠組みの概要
外国人受入れの枠組み
EPA(経済連携協定)の発効により、看護師や介護福祉士の国家資格取得を目指す候補者としての外国人の受入れが開始しました。
・2008年度 インドネシア
・2009年度 フィリピン
・2014年度 ベトナム(交換公文に基づく受け入れ)
この制度は、一定の要件(母国の看護師資格を保有 等)を満たす外国人が、日本の国家資格の取得を目指すことを条件に、一定の要件を満たす病院・介護施設(受入れ施設)において就労・研修することを特例的に認めるものという枠組みです。(滞在期間:看護3年、介護:4年)
また、看護師・介護福祉士の国家資格の取得後は、在留期間の更新回数に制限が無くなり、1 回の在留期間の上限は3年となります。
外国人受入れの趣旨と背景
この制度は、日本とインドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携の強化をしたいという各国間の思惑からできた制度です。そのため、この制度の注目すべきポイントは、単に外国人労働者の雇用を増やすためのものではないということです。
日本政府の狙いとしては、この受入れ枠組みにおいて、一人でも多くの外国人看護師・外国人介護福祉士候補者が、看護師・介護福祉士の国家試験に合格し、その後、継続して日本に滞在することを期待しています。
そのため、外国人看護師・外国人介護福祉士候補者が、看護師・介護福祉士の国家試験資格の取得に必要な知識・技術の修得に精励するのはもちろんのこと、受入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)も外国人看護師・外国人介護福祉士候補者が一人でも多く国家資格の取得をできるように適切な研修を実施することが責務とされています。
外国人受入れ最大人数
EPAに基づく外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の受入れにおいては、受入れ最大人数が設定されています。
看護師候補者の最大受け入れ人数
・インドネシア 200人
・フィリピン 200人
・ベトナム 200人
介護福祉士候補者の最大受け入れ人数
・インドネシア 300人
・フィリピン 300人
・ベトナム 300人
受け入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)の要件
ここで使われる「受け入れ機関」とは、看護師・介護福祉士候補者または、 EPA看護師・EPA介護福祉士を受け入れている日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関を指します。
受け入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)は、の「1. 受入れ機関・施設の要件」「2. 研修の要件」「3. 雇用契約の要件」「4. 宿泊施設の確保等」「5. 報告」「6. 巡回訪問への協力」「7. JICWELS からの助言を踏まえた改善措置の実施」7つの要件を満たす必要があります。
1. 受入れ機関・施設の要件
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』によると、下記のように要件を定められています。
(1)看護師コース
看護師学校養成所の臨地実習受入れ病院と同等の体制が整備されている病院(医療保険が適用される病床を有するものに限る。)であって、次の①から⑨の要件を満たすこと。
①受入れ施設において、原則として、看護学生の臨地実習に係る実習指導者(厚生労働省又は都道府県が実施する実習指導者講習会等を受けた者をいう。)が配置されていること。
②受入れ施設において、看護師及び准看護師の員数が、入院患者の数が3又はその端数を増すごとに1以上であること。ただし、精神病床においては、入院患者の数が4又はその端数が増すごとに1以上、療養病床においては、入院患者の数が6又はその端数が増すごとに1以上であること。
③受入れ施設において、看護職員の半数以上が看護師であること。
④受入れ施設において、看護の組織部門が明確に定められていること。
・ 病院の組織の中で、看護部門が独立して位置付けられていること。
・ 看護部門としての方針が明確であること。
・ 看護部門の各階級及び職種の業務分担が明確であること。
・ 看護師の院内教育、学生の実習指導を調整する責任者が 2.研修の要件の(1)の①の看護研修計画に明記されていること。
⑤受入れ施設において、看護基準(各病院が提供する看護内容を基準化し、文章化したものをいう。)が、使用しやすいように配慮し作成され、常時活用されていること及び看護手順(各病院で行われる看護業務を順序立てて、一連の流れとして標準化し、文章化したものをいう。)が作成され、評価され、かつ、見直されていること。
⑥受入れ施設において、看護に関する諸記録が適正に行われていること。
・ 看護記録が正確に作成されていること。
・ 各患者に対する医療の内容が適正かつ確実に記録されていること。
・ 患者のケアに関するカンファレンスが行われ、その記録が正確に作成されていること。
⑦受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA看護師又はEPA介護福祉士の受入れにおいて、虚偽の求人申請、二重契約その他の不正の行為をしたことがないこと。また、過去 3 年間に、外国人の就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
⑧受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又は EPA 介護福祉士の受入れにおいて、受入れ機関に義務付けられた 5.の報告を拒否し、又は不当
に遅延したことがないこと。
⑨受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA 看護師又は EPA 介護福祉士の受入れにおいて、6.の巡回訪問の際に求められた必要な協力を拒んだことが
ないこと。
(2)介護福祉士コース
介護福祉士候補者の受入れ施設は、「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」に掲げる介護施設であり、次の①から⑥の要件を満たしていなければなりません。また、この際、「介護福祉士候補者受入れ機関の施設要件」の 1~5の施設については定員が30名以上(指定介護療養型医療施設は介護保険の指定を受けた病床数が 30 床以上)、6~9の施設については、当該介護施設の本体施設の定員が30名以上、10~15の施設については、1~9の介護施設と同一の敷地内において一体的に運営されているものであることが必要です。
(引用)『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』|公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)
① 受入れ施設において、介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されていること。
② 受入れ施設において、介護職員の員数が、法令に基づく職員等の配置の基準(以下「配置基準」という。)を満たすこと。
③ 受入れ施設において、常勤介護職員の 4 割以上が介護福祉士の資格を有する職員であること。
④受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA看護師又は EPA 介護福祉士の受入れにおいて、虚偽の求人申請、二重契約その他の不正の行為をしたことがないこと。また、過去 3 年間に、外国人の就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
⑤受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA看護師又はEPA介護福祉士の受入れにおいて、受入れ機関に義務付けられた報告を拒否し、又は不当に遅延したことがないこと。
⑥受入れ機関において、過去 3 年間に、経済連携協定等の枠組みによる看護師・介護福祉士候補者、EPA看護師又はEPA介護福祉士の受入れにおいて、巡回訪問の際に求められた必要な協力を拒んだことがないこと。
2. 研修の要件
(1)看護師コース
病院における研修は、以下の①から⑤までの要件を満たしていなければなりません。
①研修内容は、看護師国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための看護研修計画が作成されていること。
②看護研修計画の立案、研修の統括、さらには外部機関との連絡・調整等、研修を統括する研修責任者並びに専門的な知識及び技能に関する学習の支援、日本語学習の支援、生活支援等を行う研修支援者が配置され、看護研修計画を実施するために必要な体制が整備されていること。
③研修責任者は、原則として看護部門の教育責任者とし、研修支援者は、原則として3年以上の業務経験のある看護師とすること。
④日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設けること。
⑤研修が行われる病床は、医療保険が適用されるものに限ること。
(2)介護福祉士コース
介護施設における研修は、以下の①から④の条件を満たしていなければなりません。
① 研修内容は、介護福祉士国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための介護研修計画が作成されていること。
② 介護研修計画の立案、研修の統括、さらには外部機関との連絡・調整等、研修を統括する研修責任者、並びに専門的な知識及び技術に関する学習の支援、日本語学習の支援、生活支援等を行う研修支援者が配置され、介護研修計画を実施するために必要な体制が整備されていること。
③ 研修責任者は原則として5 年以上介護業務に従事した経験があって介護福祉士の資格を有する者とすること。
④ 日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設けること。
3. 雇用契約の要件
雇用契約は、直接契約となります。また、EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の採用に限らず、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬水準にすることが必要です。
日本国内で就労する限り、日本人、外国人を問わず、原則として労働関係法令の適用があります。
・労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法 等については、外国人労働者にも適用されます。また、労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しています。
・雇用保険法についても、日本国で就労する外国人の方については、原則として、国籍のいかんを問わず被保険者として取り扱うこととしています。
(引用)外国人労働者に対する労働関係法令の適用|愛媛労働局
4. 宿泊施設の確保等
外国人看護師・介護福祉士候補者のための宿泊施設を確保しすることが必要です。さらに、外国人看護師・介護福祉士候補者の帰国費用の確保等帰国担保措置をする必要があります。
5. 報告
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)を通して、地方出入国在留管理官署や厚生労働省に対して、所定の定期報告と随時報告を行うことが必要です。
6. 巡回訪問への協力
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)による巡回訪問について必要な協力を行うことが必要です。
7. 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)からの助言を踏まえた改善措置の実施
「5. 報告」「6. 巡回訪問への協力」の結果を踏まえ、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)から助言があった場合な改善を行うことが必要です。
外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の要件
日本語能力の要件
候補者は、訪日前日本語研修修了時に一定の日本語能力に達していることが入国の要件となっており、国籍(インドネシア、フィリピン、ベトナム)別、職種(看護師・介護福祉士)別で基準が定められています。
また、日本語能力試験(JLPT)認定の目安としては、下記のように定められています。
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
N4 基本的な日本語を理解することができる。
N5 基本的な日本語をある程度理解することができる。
(引用)N1~N5:認定の目安|日本語能力試験 JLPT
外国人看護師候補者の要件
インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人の看護師候補者としての要件は以下の通りです。
(引用)『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』|公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)
外国人介護福祉士候補者の要件
インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人の介護福祉士候補者としての要件は以下の通りです。
(引用)『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』|公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)
就労希望者の採用選考
EPA(経済連携協定)に基づく就労希望者(外国人看護師・外国人介護福祉士候補者)の採用選考は、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が情報提供等の支援を行なっており、6つの選考フローになっております。
1. 求人登録申請
2. JICWELSによる受入れ希望機関の要件確認
3. 送り出し調整機関による就労希望者の募集・審査・選考
4. 現地面接・合同説明会
5. マッチング
6. 採用内定
各ステップの詳しい内容は、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』をご確認ください。
雇用契約
採用内定後、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)は求人登録申請時の求人情報をもとに、所定の様式による雇用契約書を作成します。受入れ希望機関は、採用が内定した就労希望者との間で、所定の日本語等研修修了を条件とする上記の雇用契約を締結します。候補者は日本語等研修の修了後、この雇用契約に基づき、受入れ施設において就労・研修を開始することとなります。
なお、インドネシア人及びフィリピン人候補者のうち、訪日後の日本語研修を免除される者は、日本へ入国後に公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が行う看護・介護導入研修(10日間程度の予定)の修了次第、受入れ施設での就労を開始します。ベトナム人候補者が日本語能力試験N2以上を取得している場合については、訪日前日本語研修は免除されますが、訪日後の2.5か月間の研修は受講する必要があります。
(引用)『2022年度受入れ版 EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 受け入れパンフレット』|公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)
なお、所定の様式による雇用契約が公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の紹介によって締結されていることが、採用予定者への査証の発給や入国及び滞在の許可の要件の一つになっており、就労開始時に安易に変更することはできません。特に、労働条件等を候補者に対して不利益となる形に変更した場合は、厚生労働省告示に定める受入れ施設要件の「虚偽の求人申請」に該当する場合があります。「虚偽の求人申請」に該当した場合、当該受入れ施設は3年間の受入れ停止及び現在受入れ中の候補者の受入れ機関変更の対象となります。
まとめ
・EPA(経済連携協定)は、一定の要件(母国の看護師資格を保有 等)を満たす外国人が、日本の国家資格の取得を目指すことを条件に、一定の要件を満たす病院・介護施設(受入れ施設)において就労・研修することを特例的に認めるものという枠組み。
・看護師候補者の最大受け入れ人数は、各国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)200人です。
・介護福祉士候補者の最大受け入れ人数は、各国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)300人です。
・受け入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)は、の「1. 受入れ機関・施設の要件」「2. 研修の要件」「3. 雇用契約の要件」「4. 宿泊施設の確保等」「5. 報告」「6. 巡回訪問への協力」「7. JICWELS からの助言を踏まえた改善措置の実施」7つの要件を満たす必要があります。
『EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の雇用方法を徹底解説!(後半)』はこちらからお読みください。
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