出入国管理法の外国人受け入れ拡大法案の概要とは?課題や問題点は?

執筆者 6月 30, 2019ニュースコメント0件

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平成30年、深刻な人手不足への対応策として、総理大臣から専門的な分野にて外国人の受け入れ制度の改正を進める指示があったことがきっかけとなり「外国人受け入れ拡大法案」の施行まで短時間で進みました。今回は、その出入国管理法の改正(外国人受け入れ拡大法案)の概要についてまとめたいと思います。

 

外国人受け入れ拡大法案の前に!日本の労働者の状況をおさらい

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日本では高齢化や少子化が進んでおり、労働者不足が深刻な状況となっています。15歳~64歳の生産年齢人口は、20年以上減少が続いてる状態です。

 

1-1.労働力が不足している業界

それでは、業界別に2002年と2018年の労働者の増加や減少を見てみましょう。

 

業種別 就業者数(万人)

 

2002年3月

2018年3月

総数

6297

6620

323

農業,林業

242

204

-38

非農林業

6055

6416

361

建設業

628

501

-127

製造業

1238

1081

-157

情報通信業

156

225

69

運輸業,郵便業

323

337

14

卸売業,小売業

1081

1053

-28

金融業,保険業

161

167

6

不動産業,物品賃貸業

99

133

34

学術研究,専門・技術サービス業

207

235

28

宿泊業,飲食サービス業

397

417

20

生活関連サービス業,娯楽業

246

232

-14

教育,学習支援業

266

312

46

医療,福祉

467

799

332

複合サービス事業

76

58

-18

サービス業(他に分類されないもの)

375

455

80

公務(他に分類されるものを除く)

218

233

15

 

出典:日経ビジネス

・建築業、製造業

建築業、製造業が16年間で大幅に就業者数が減っていることがわかります。これらの技術を要する業界は、労働者の高齢化が進んでいることが問題となっています。高齢者が進んでいるにもかかわらず、労働条件などの理由で後継者が足りていません。

 

日本が世界に誇るものつくりなのですが、このように就業者が足りていないのが現状です。

 

・医療、福祉

以外にも就業者が最も増えているのは、「医療と福祉」です。しかし高齢化が進む今、必要な就業者は現在増えている就業者以上なのです。今後もさらに必要性が高くなるため、深刻な問題です。

 

介護業界は、労働力が足りず入居待ちの状態が続いたり、経営が難しくなっていたりする事務所も珍しくはありません。今後はさらに高齢化社会が加速し需要が増える一方、労働力が足りない状況となるのです。

 

平成29年10月時点で、日本の全人口1憶2,671万人のうち、27.7パーセントにあたる3,515万人の65歳以上の高齢者と呼ばれる方がいるのです。

出典:平成30年版高齢社会白書

 

介護労働安定センターのアンケート結果では、多くの事業所が「不足している」と回答しており、中でも訪問介護員が不足している状況です。

 

このような状況になっている要因のひとつに、親と同居しないケースが増えることから、介護サービスが普及して介護保険制度が出来上がったのです。さらに特別養護老人ホームでは、入所者3人に対して、介護職員もしくは看護職員が必要になるなど、様々な規定があるのですが、現状現場が上手く回っていないことが多くあります。

 

スタッフが体調を壊したり、退職したりした場合を考え、実際には必要な人数よりも多くのスタッフを採用する必要がるのです。しかし多くのスタッフをかかえる余裕はないのが現状なのです。

 

・サービス業

サービス業も16年間で就業人数は増えていますが、2020年に東京オリンピックを控えなど、サービス業も人手が足りていない状態です。

 

・運送業界

Amazonや楽天など、ネットショップの発展が加速化しており、運送業界の人出不足へとつながっています。さらには「再配達問題」など多くの問題を抱えている状況です。

 

以上のように、様々な業界で人手不足となっているのですが、原因は労働人口の現象や、優秀な人材を採用、また育てることの難しさにあります。またこれらをするにはコストも必要になるのです。

 

1-2.労働力が不足しているエリア

都道府県別の就業者の増加を見てみましょう。就業者が増えているのは、以下のエリアとなります。

 

就業者数と人口の推移 増加数上位10都道府県

 

就業者数(千人)

2017年人口

(千人)

 

2002年

2017年

増加数

東京都

6,330

7,682

1,352

13,515

神奈川県

4,387

4,851

464

9,126

愛知県

3,715

3,964

249

7,483

埼玉県

3,621

3,792

171

7,267

千葉県

3,103

3,251

148

6,223

大阪府

4,208

4,339

131

8,839

兵庫県

2,592

2,710

118

5,535

福岡県

2,383

2,501

118

5,102

沖縄県

573

691

118

1,434

京都府

1,271

1,313

42

2,610

出典:日経ビジネス

 

東京や神奈川、大阪、福岡などの大都市にて就業者が増加しているのが、わかりやすい数値となっています。それでは他のエリアはどうなのでしょうか。逆に就業者が減少しているエリアは以下のようになっています。

 

就業者数と人口の推移 減少数上位10都道府県

 

就業者数(千人)

2017年人口

(千人)

 

2002年

2017年

減少数

北海道

2,665

2,576

-89

5,382

新潟県

1,250

1,165

-85

2,304

長野県

1,187

1,110

-77

2,099

秋田県

564

488

-76

1,023

福島県

1,040

978

-62

1,914

山形県

627

566

-61

1,124

青森県

697

648

-49

1,308

岩手県

703

655

-48

1,280

山口県

728

684

-44

1,405

長崎県

705

664

-41

1,377

出典:日経ビジネス

 

以上の様に、北海道や新潟、長野、長崎など大都市圏を除いた場所が北海道から九州まで就業者が減っていることがわかります。

 

以上のように、都心部では就業者が増加し、人口の少ないエリアで就業者が足りていない状況です。現在の日本では、業界別、そしてエリア別のいずれも労働者不足の問題を抱えているのです。

 

外国人受け入れ拡大法案とは?

上記のように、現在日本では労働者が足りていない状況です。しかし少子化が進み若い労働力が十分ではない中、外国人労働者の就業可能範囲を広げることにより、人手不足の解消を考えたのです。そのための法案が、外国人受け入れの拡大法案なのです。

 

2018年11月2日に、政府は入管法改正案を閣議決定し、27日には可決され、2019年の4月に施行されることが決まったのです。 

 

2-1.特定技能を盛り込んだ改定出入国管理法

労働力が現状足りていない、14の産業分野に外国人労働者を入れることにより労働者不足を解消するのが大きな目的です。

 

・在留期間

在留期間は、条件にもよりますが最長5年となっています。つまりこれはまでの技能に実習制度では最長5年間研修を受けることができるのですが、さらに5年間就労できるということです。

 

・家族の帯同

特定技能1号は家族の帯同を認めていません。

 

・雇用形態

直接雇用が原則となりますが、一部派遣形態が認められることがあります。

 

・対象

第1号はそれぞれの業務内容に対して、知識や経験が必要な技能と、業務に支障がでないような日本語力が必要となります。

 

・宿泊分野に関して

2-2.技能評価試験とは

技能実習1号として、日本で就業をするためには技能評価試験を受ける必要があります。たとえば宿泊業として就業するためには、「宿泊業技能測定試験」を受験する必要があります。国内だけではく、海外でも受験することができ、在留資格を取得するために必要な内容を、旅館・ホテル業団体が説立した機関が問題を作成しています。

 

2-3.受け入れ対象の業種

・宿泊業

ホテルや旅館ののフロント、広報、接客、レストランでの書くサービスなどが対象となります。対象となるのは、2019年度より5年の間で、最大2万2千人となっています。

外国人受け入れ拡大法案の問題点

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外国人受け入れ拡大法案には、いくつもの問題点が残っています。それぞれの項目にわけて、詳しくご紹介します。

 

3-1.外国人技能実習制度

特定技能1号で就業する場合は、同じ仕事をする日本人と同じか、賃金をあげる必要があります。しかし現状の外国人技能実習制度の中で、低賃金や重労働過ぎる課題が残っており、この問題点が解消されないままに、受け入れ拡大を行っている点は否めません。

 

今回の政府の「外国人受け入れ拡大法案」に対して、疑問を持っている人の多くは、現状の外国人技能実習制度を見直すべきではないかと考えているのです。

 

3-2.日本語力が必須となる

 

また外国人に求められるのは、技術だけでなく日本語でのコミュニケーションも必要です。しかし十分に日本語習得などの支援ができるのか疑問が残ります。「外国人受け入れ拡大法案」には、受け入れ側の企業にとっても、しっかりとした支援をするなど必要なことが多くなるのです。

 

3-3.治安面で心配

 

外国人が増えることにより、治安が悪くなるのではないかと不安に思っている人も多いでしょう。特に地方で外国人を多く雇用する場合は、環境作りも大切となります。

 

3-4.日本人の雇用の妨げにならないか

現在日本でも失業している人達は大勢います。どこの国でも、まずは自国の雇用を優先するのですが、外国人を多く採用することで、時間やコストを多くかける必要があり、日本人の雇用の妨げにならないか懸念されています。

 

このように、外国人受け入れ拡大法案にはいくつもの問題点が残ります。

 

外国人受け入れ拡大法案のまとめ

 

建設業界や、介護業界、運送業界など人手が大きく足りていない業界があることは間違いありません。今回の「外国人受け入れ拡大法案」は人手不足の解消が大きな目的となっています。

 

しかし外国雇用に関しては、現状の「外国人技能実習制度」でも過酷な労働や、低賃金などが問題となっており、問題を解決しないまま認可された法案であるとの考え方も多くあります。また外国人労働者に対して、日本語や日本で暮らすための支援をするなど受け入れ態勢も大切な要素となるのです。

 

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著者 アドミン

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