外国人が帰化申請をする際、名前の変更について悩むことがあります。
通常、通名(「つうめい」または、「とおりな」)を使用している場合はそのまま使うことができるため、あまり悩まない人もいますが、日本国籍を取得して新たな名前を考える人もいます。もし新しい名前を名乗る場合は、どのようなルールや注意点に気をつければよいのでしょうか。
この記事では、外国人が帰化申請する際の名前の変更に関するルールや注意点について紹介していきます。
帰化とは
帰化とは、外国籍の方が日本国籍を取得することを指します。帰化が許可されると、日本人として戸籍が作成され、選挙権や被選挙権など日本国民としての権利を得ることができます。一方で、原則として元の国籍を失うことになります。
帰化申請は、申請者の住所地を管轄する法務局で行います。申請から許可までの期間は通常9か月から1年半程度かかり、書類審査や面接、法務局による調査などが実施されます。2026年1月現在、帰化申請には約60種類もの書類が必要となるケースもあり、準備には相当の時間と労力が求められます。
帰化を検討する際に多くの方が気になるのが、帰化後の名前についてです。日本国籍を取得するということは、日本の戸籍に氏名が記載されることを意味します。そのため、帰化申請の段階で新しい名前を決めておく必要があります。
帰化後の名前の決め方
帰化後の名前は、一定のルール内であれば申請者が自由に決めることができます。帰化許可申請書には「帰化後の氏名」を記載する欄があり、この段階で新しい名前を確定させる必要があります。
主な名前の決め方として、以下の3つのパターンがあります。
通称名をそのまま使用する
在日韓国人・在日朝鮮人の方など、すでに通称名(通名)を日常的に使用している場合は、その通称名をそのまま帰化後の正式な氏名として登録することが可能です。周囲への影響も少なく、最もスムーズな方法といえます。
本国の名前をカタカナ表記にする
欧米圏など漢字文化圏以外の国出身の方は、本国での名前をカタカナ表記にして使用することができます。例えば「Tom Cruise」さんであれば「クルーズ・トム」のようにカタカナで表記します。元大相撲力士の錦島親方(元バダルチ・ダシニャム)のように、モンゴル人の方がカタカナ表記で帰化するケースもあります。
新しい日本風の名前を付ける
心機一転、全く新しい日本風の名前を付けることも可能です。元ブラジル人のラモス瑠偉さんのように、元の名前「ルイ」に当て字を使うケースや、尊敬する人物や恩師の名前にちなんで名付けるケースもあります。女子ソフトボールで活躍した宇津木麗華さんは、師と仰ぐ宇津木妙子氏の名前をいただいて帰化しました。
帰化後の名前を決める際のルール
帰化後の名前は比較的自由に決められますが、いくつかの重要なルールがあります。
使用できる文字の制限
帰化後の名前に使用できる文字は、戸籍法施行規則第60条により以下に限定されています。
- 常用漢字
- 人名用漢字
- ひらがな
- カタカナ
- 漢数字、長音符号(ー)、繰り返し記号(々、ゝ、ゞ)
アルファベット、中国の簡体字・繁体字、ハングルなどは使用できません。そのため、通称名でこれらの文字を使用していた場合は、帰化時に日本で使用可能な文字に置き換える必要があります。
なお、以前は韓国・朝鮮人の姓でよく使われる「趙」や「姜」などの漢字が使用できないとされていましたが、現在は使用可能です。また、「渡邉」の「邉」や「小澤」の「澤」などの旧字体も使用できるようになっています。
使用可能な漢字かどうかは、法務省の「戸籍統一文字情報」サイトで確認できます。
同じ戸籍内での同一漢字の制限
あまり知られていないルールですが、同じ戸籍に入っている親や兄弟と全く同じ漢字の名前は使用できません。例えば、父親が「大海(ひろみ)」という名前の場合、子どもも「大海」という漢字を使うことはできません。
ただし、読み方が同じでも漢字が異なれば問題ありません。父が「大海(ひろみ)」、子が「浩美(ひろみ)」や「博己(ひろみ)」とすることは可能です。どうしても親子で同じ漢字の名前を付けたい場合は、分籍届を提出して別の戸籍を作成する方法があります。
夫婦同時帰化の場合は同姓が必要
外国人夫婦が同時に帰化申請を行う場合、日本の民法第750条に基づき、夫婦同姓を選択する必要があります。これまで国際結婚や外国人夫婦として夫婦別姓だった場合でも、帰化により日本人夫婦となった時点で、夫または妻いずれかの氏に統一しなければなりません。
なお、日本にはミドルネームの概念がないため、名字と名前の間にミドルネームを入れることはできません。スペースを含む名前は帰化審査の段階で却下されます。
通名(通称名)とは
帰化後の名前を考える上で、多くの外国人の方が利用している「通名」について詳しく解説します。
通名の定義と法的根拠
通名(つうめい)または通称名(つうしょうめい)とは、本国名とは別に日本国内で日常的に使用している氏名のことです。在日韓国人・在日朝鮮人の方が日本名を使用するケースが代表的ですが、いかなる国籍の外国人でも通名登録が可能です。
通名の法的根拠は、2012年7月の住民基本台帳法改正により明確化されました。住民基本台帳法施行令第30条の25第1号により、外国人住民は本名による住民票に通称を併記登録することができます。
2013年11月15日以降は、安易な通名変更が禁止され、登録可能な通名は一度に一つのみとなっています。これにより、通名制度の厳格化が図られています。
通名が記載される書類
通名を登録すると、以下の書類に本名と通名が併記されます。
- 住民票の写し
- マイナンバーカード
- 住民基本台帳カード
- 印鑑登録証明書
- 各種被保険者証
- 運転免許証(本人申請により併記可能)
一方、在留カードや特別永住者証明書には通名は記載されません。パスポートも本名のみの記載となります。
通名を登録すると、登記などの公的手続きや契約書など民間の法的文書にも有効に使用することができます。就労時の雇用保険や年金手続きも通名で行うことが可能です。
通名の申請方法【2026年最新】
2026年1月現在の通名申請方法について詳しく解説します。
申請先と届出人
通名の届出は、お住まいの市区町村役場の戸籍住民課(外国人住民窓口)で行います。届出できるのは以下の方です。
- 本人
- 同一世帯の方(同一住所でも別世帯の方は不可)
- 法定代理人(親権者、成年後見人等)
上記以外の方が届け出る場合は委任状が必要です。申請は随時受け付けており、特定の期間に限定されていません。
必要書類
通名を新規登録する際に必要な書類は以下の通りです。
- 通称記載申出書(各市区町村役場の窓口に備え付け)
- 本人確認書類(在留カード、特別永住者証明書、運転免許証、パスポートなど)
- マイナンバーカードまたは住民基本台帳カード(お持ちの場合)
- 通称を社会生活において日常的に使用していることを証する資料(2点以上)
重要なポイントは、「日常的に通名を使用していることの証明」が必要という点です。自由に好きな名前を登録できるわけではなく、実際に社会生活で使用している実績が求められます。
日常使用の証明資料として認められるもの
証明資料は発行元が異なる2点以上が必要です。同じ発行元からの資料(例:同じ会社発行の社員証と在職証明書)は1点としてカウントされません。
【資料A(有力な証明資料)】
- 勤務先発行の社員証・職員証(通名と住所が記載されたもの)
- 学校発行の学生証・生徒手帳(通名と住所が記載されたもの)
- 勤務先発行の健康保険資格確認書・在職証明書(住所記載のもの)
- 学校発行の在学証明書(住所記載のもの)
【資料B(補助的な証明資料)】
- 公共料金の領収書・請求書
- 郵便物(差出人が第三者のもの)
- 年賀状など
資料Aを2点、または資料A1点と資料B1点の組み合わせが必要です。資料Bのみ2点では登録できないため注意が必要です。
なお、銀行の預金通帳はマイナンバーと住民票が紐づいているため、新規の通名入り通帳は作成できなくなっています(2026年1月現在)。
証明資料なしで通名登録できるケース
以下のケースでは、日常使用の証明資料がなくても通名を登録できます。ただし、親子関係や婚姻関係を確認できる書類(戸籍謄本、出生証明書、住民票の写しなど)の提示が必要です。
- 日本人配偶者の氏を通名とする場合
- 外国人配偶者の通称の氏を通名とする場合
- 日本人親または外国人親の通称の氏を通名とする場合
- 日系外国人が本名の日本式氏名部分を通名とする場合
例えば、日本人と結婚した外国人の方が配偶者の姓を通名として登録する場合は、婚姻関係を証明する書類があれば日常使用の証明は不要です。
通名の変更・削除について
2013年11月15日以降、通名の安易な変更は原則として認められなくなりました。変更が認められるのは、以下の限定的なケースのみです。
- 婚姻等の身分行為により、相手方の日本人の氏、外国人の氏名または通称の氏に変更する場合
通名の削除は本人の意思により可能ですが、一度削除すると原則として再記載はできません。削除を検討する際は慎重に判断する必要があります。
帰化後は通名が使えなくなる
帰化を検討している方にとって重要なポイントが、帰化後は通名が使えなくなるという点です。
住民基本台帳法では、外国人住民に対して通名の記載が認められていますが、日本国籍を取得した時点で「外国人住民」ではなくなります。そのため、帰化許可を受けて日本人となった場合、これまで使用していた通名は法的効力を失い、使用できなくなります。
ただし、帰化申請時に通名を「帰化後の正式な氏名」として登録することは可能です。長年使い慣れた通名がある場合は、その名前を帰化後の戸籍上の氏名として採用することで、周囲への影響を最小限に抑えることができます。
帰化後の名前を決める際は、通名をそのまま採用するのか、新しい名前にするのかを慎重に検討することが重要です。
帰化後の名前変更が難しい理由
帰化が許可されて戸籍が作成されると、その後の氏名変更は非常に困難になります。これは帰化した方に限らず、日本人全般に適用されるルールです。
氏名を変更するには、家庭裁判所に「氏の変更許可」または「名の変更許可」の申立てを行い、「やむを得ない事由」または「正当な事由」があると認められなければなりません。帰化の場合、自分の意思で名前を決めているため、「やむを得ない事由」と認められるハードルは特に高くなります。
変更が認められる正当な理由
一般的に、以下のような理由であれば名前の変更が認められる可能性があります。
- 外国人と紛らわしい名前で、日常生活に支障がある
- 同姓同名の人物が近くにおり、混同が生じている
- 難読で社会生活上不便がある
- 通称名を長年使用しており、戸籍名との乖離が大きい
ただし、帰化者の場合は自分で名前を選択しているため、「外国人と紛らわしい」という理由での氏の変更は認められにくい傾向があります。名の変更(下の名前の変更)については比較的認められやすいですが、帰化前の名前への変更は難しいとされています。
帰化で離婚した場合の特例
外国籍の夫婦が同時に帰化申請を行い許可された場合、夫の戸籍が作られ妻はその戸籍に入ります。その後離婚した場合、日本人であれば旧姓に戻すことができますが、帰化者には「旧姓」が存在しません。
そのため、離婚時に新たな姓を選択することが認められています。通名を持っていた場合は通名の姓に戻すことも可能ですし、全く新しい姓を付けることもできます。これは帰化者特有のルールであり、一般の日本人にはない選択肢です。
ただし、自由に決められるからといって、社会生活で不自然な名前を付けると後々困ることになりますので、慎重に検討することをお勧めします。
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外国人労働者を雇用している企業にとって、在留資格や在留期限の管理は重要な業務です。特に、通名を使用している従業員については、在留カードの本名と通名の両方を正確に管理する必要があります。
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まとめ
外国人が帰化する際の名前について、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 帰化後の名前は、帰化申請時に決めておく必要がある
- 使用できる文字は常用漢字、人名用漢字、ひらがな、カタカナに限定される
- 通名をそのまま帰化後の正式名にすることも可能
- 帰化後は通名としての使用はできなくなる
- 一度戸籍に登録された名前の変更は非常に困難
帰化は人生の大きな決断であり、名前は一生使い続けるものです。帰化申請前から十分に検討を重ね、家族や周囲の意見も参考にしながら、後悔のない名前を選びましょう。
外国人従業員を雇用している企業の人事・総務担当者の方は、従業員の在留資格や通名の管理も適切に行うことが求められます。在留カード管理システムの導入も併せてご検討ください。
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