外国人が帰化申請をする際、名前の変更について悩むことがあります。
通常、通名(「つうめい」または、「とおりな」)を使用している場合はそのまま使うことができるため、あまり悩まない人もいますが、日本国籍を取得して新たな名前を考える人もいます。もし新しい名前を名乗る場合は、どのようなルールや注意点に気をつければよいのでしょうか。
この記事では、外国人が帰化申請する際の名前の変更に関するルールや注意点について紹介していきます。
日本人としての戸籍が与えられる際に新たな名前を名乗れる!
外国人は日本国籍を取得することで、自らの戸籍を作成できます。その際、名前がなくては管理ができないので、戸籍が作成される際に新たな名前を付けられます。
在日韓国人、在日朝鮮人は通名を使っていたり、中国人であれば本名をそのまま用いたりすることが可能です。その方が混乱も少なく、逆に名前を一変させてしまうと逆に周囲が戸惑ってしまいます。
問題はヨーロッパや南米など漢字の文化がない国の人の名前です。
例えば、元々ブラジル人だったラモス瑠偉さんは、元の名前がルイだったので当て字を使っています。また大相撲は帰化しなければ日本相撲協会に残れず、親方になれないため、親方になりたい外国人力士は帰化せざるを得ません。その名前を見てみると、四股名をそのまま本名にする力士、名前を変えない力士、親方の名字を使う力士、奥さんの戸籍に入り、下の名前だけ決める力士など様々。
こうしたケースからもわかるように、帰化をすればある程度自由に名前を決めることができ、特に理由は問われません。
そう考えると、とても気楽に氏名を決められますが、今後長い間ずっと使うものでもあるため、人によっては占い師に聞いて決めるなど、こだわりを持って悩みぬいて決める人もいるぐらいです。
帰化後、新しい名前を名乗る際に気を付けるべきことは?
自由に決めやすい帰化後の新しい名前ですが、全くルールがないわけではありません。ここでは、新しい名前を名乗る際のルールなどをまとめました。
常用漢字など人名に使える名前を使用する
例えば、自分の子供に名前を付ける場合、常用漢字表や人名用漢字表に掲載されている漢字が使え、他にはひらがな、カタカナを用いることが出来ます。これは帰化をする外国人も同じで、日本国籍を取得する以上は、そのルールに従わなければなりません。
ただ、無理やり当て字を使う必要はなく、元関脇朝赤龍の錦島親方のように、モンゴル人時代の本名バダルチ・ダシニャムをそのまま日本名として用いています。
以前は、朝鮮人や韓国人の姓で使われる趙や姜を使うことができないとされていましたが、現在は名字として用いることが可能です。また、渡邉の邉、小澤の澤のような旧字体も以前は認められていませんでしたが、こちらも名字として使えます。
ネット上では、帰化した人物は旧字体を使えないので、旧字体を使っている人は全員日本にルーツがある人という、間違った解釈が広まっています。実際は帰化した人でも旧字体や朝鮮民族がよく使う姓をつけられます。
今まで使えた通名が使えなくなる
在日韓国人や在日朝鮮人には民族名と日本名の2つを持つ人がいます。民族名が本来の本名、日本名は通称名、通名と呼ばれ、日本でのみ使われる氏名です。日本で生活する以上は日本の名前にしないといけないということで、通名を使っていた方が多くいました。通名は公的書類にも使えたため、運転免許証には通名が載り、民族名が載っていない人も珍しくありません。
そんな通名ですが、日本国籍を取得する際に日本名を定めれば、それまでの通名は使えなくなります。住民基本台帳法では外国人に関して通名の記載が可能であると定められている一方、日本国民になってしまえば通名の使用は不可能になります。もし通名を、帰化しても同じように使うのであれば、日本名を定める際にそのまま使うしかありません。
同じ戸籍の中で、同じ漢字の名前は使えない
あまり知られていないルールとして、同じ戸籍に入っている親、兄弟の中で同じ漢字を使う名前はダメというものがあります。例えば、「大海」と書いて、「ひろみ」と読めることもあれば、「たいかい」とも読めます。家族で帰化をする場合、自らを「大海(ひろみ)」、息子を「大海(たいかい)」と読むようにして、父子で「大海」と同じ漢字を用いることは、残念ながらできません。
ただし、父と子で同じ読み方にするのは可能で、父と子で読み方を「ひろみ」にする場合、息子に「大海」、父親は「浩美」や「博己」にすれば問題ありません。どうしても、親子で同じ漢字の名前をつけたいのであれば、子供が成人をしてから帰化させるなどして、別々の戸籍を作ることにすれば大丈夫です。読み方はあまり考慮されず、漢字の部分を厳しく問われるようなイメージでいいでしょう。
帰化後の名前は帰化申請を行う際に決めなければならない
ここまでは名前の決め方、ルールについてご紹介してきましたが、帰化した後の新しい名前をどのようにするかは、帰化申請の書類を提出するまでに決めなければなりません。
帰化はしたいんだけど、名前についてはとことん考え抜いてから決めたいと思っていても、それは無理です。名前を決めてからでなければ帰化申請は行えません。実際、帰化の申請を行う前に、法務局などに事前の相談を行い、許可の可能性が高いと判断されて初めて申請書の準備が始まります。つまり、事前相談の段階で名前を決めておくのがいいかもしれません。
ちなみに、実際に帰化が成立するまでにかかるのは、早くても半年、遅くても1年です。適当に決めてしまった場合、半年から1年の間に、やっぱりあの名前は嫌だと思っても、もう止められません。申請の取り下げこそできますが、それをやってしまえばまた一からやり直しです。帰化後の新しい名前で一生涯、日本で日本人としての生活を送る以上は、この名前にしてよかったと力強く断言できるようにしておきましょう。
帰化後の名前は最低限のルールさえ守れば自由に決められる!
細かなルールがあった、帰化後の新しい名前についてですが、実際のところはかなり自由に決められることがわかりました。ここではユニークなケースや注意しておきたいことをまとめました。
離婚をしたら名字を自由に決められるケースがある
基本的に1度決めた氏名は、変更するのはやむを得ない正当な理由がない限り、変えることはできません。
ただ、例外も残されています。例えば、外国籍を持つ夫妻が同時に帰化申請を行い、認められたとします。この場合、夫の戸籍が作られ、妻は夫の戸籍の中に入ります。しかし、急に仲が悪くなり、離婚をするとなれば、夫の戸籍から妻は抜けます。
ここで浮上するのが名字の問題です。日本人であれば旧姓に戻せますし、離婚して間もない時期に手続きをすれば、結婚していた時期の名字にしても問題ありません。ところが、同時に帰化した場合、旧姓にあたるものが妻にはありません。そのため、離婚をしたタイミングで新しい名字を名乗ることができます。
通名を既に持っている人は通名の時に使っていた名字に戻せますし、それもなかった場合には、名前に合わせて名字をつけることも可能です。帰化した人ならではのルールですが、自由に決めていいからとかっこよさを重視して後悔しても遅いので、帰化した際に新しい名前を決めた時同様、この名字になって本当に良かったと思えるものにしましょう。
歴史上の偉人やアスリートにちなんだ名前もつけられる
子供の名前をつけるように、真剣に新しい名前を考える人も当然いますが、日本に来るきっかけになった人物の名前にするケースもあります。例えば、女子ソフトボールで活躍した宇津木麗華さんは、師と仰ぎ、親子同然の間柄となる宇津木妙子さんから宇津木の姓を拝借した形でつけられています。豊臣秀吉が好きだから、名前を秀吉にする、名字を羽柴にするなどのこともルール上はセーフです。
好きなアスリートがいればそのアスリートにちなんだ名前でもいいですし、特定のアーティストやモデルでも大丈夫です。究極の話、同姓同名でもルール上は大丈夫なので、熱意を示すために同じ名前にしてしまうこともアリといえばアリです。
一度名前を決めると、後になって変更するのは大変なので注意
例えば、勢いで、その当時好きだったアイドルの名前をつけて、帰化申請の書類を出したとします。勢いだったので、段々と熱が冷め、この名前にするのは嫌だと思っていた矢先に帰化の許可が下りたら、もう後には引き戻れません。これから先、名前を変更するのであれば、家庭裁判所の許可を得て変更の手続きをすることになります。
しかも、簡単に変えられるわけではなく、やむを得ない事情がなければダメです。そもそも自分の意思で名前を決めているため、やむを得ない事情となるにはそれ相応の理由が必要になります。特に名字は日本人でもなかなか変えることはできないため、自分の意思でつけた場合には、よほどの理由がない限り、変更は難しいでしょう。だからこそ、一生涯背負っていけるような名前にしなければなりません。
まとめ
帰化を行う事で日本人として心機一転頑張ろうと思い、新たな名前で再出発しようとする行為は素晴らしいです。
しかしながら、新しい名前をつけたものの、後で迷いが生じてしまうと、せっかくの新しい名前に嫌気が差します。両親がつけた名前であれば、変えられる可能性は高いですが、帰化の場合は自分で名前を決められるため、はっきり言えば自己責任となります。
後悔をしないよう、新しい名前をつけていくと共に、帰化をしたいと思った時から名前を検討し始め、周囲の人たちと相談するようにしていくようにしましょう。
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