法務省が発表した外国人技能実習生の失踪数は、年々増えていく状況です。ニュースでも賃金未払いなど様々な理由で取り上げられています。ここでは技能実習者の失踪数が増えている理由、また失踪者を増やさないための取り組みをご紹介します。
技能実習生の失踪者数の推移
法務省が発表した平成26年から平成30年までの5年間に失踪した技能実習生の人数は以下の様になっています。年々増えていることがこの表でもわかります。
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①失踪技能実習生の人数 |
②前年末の在留時脳実習生の人数 |
③:①の②に対する割合 |
平成26年 |
4,847人 |
155,206人 |
約3.1% |
平成27年 |
5,803人 |
167,626人 |
約3.5% |
平成28年 |
5,058人 |
192,655人 |
約2.6% |
平成29年 |
7,089人 |
228,588人 |
約3.1% |
平成30年 |
9,052人 |
274,233人 |
約3.3% |
引用 法務省
また前年末の在留技能実習生と、新しく入国した技能実習生の合計人数に対する比較で割合の推移を見てみましょう。
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①失踪技能実習生の人数 |
②前年末の在留時脳実習生の人数 |
③:①の②に対する割合 |
平成26年 |
4,847人 |
237,739人 |
約2.0% |
平成27年 |
5,803人 |
264,630人 |
約2.2% |
平成28年 |
5,058人 |
298,786人 |
約1.7% |
平成29年 |
7,089人 |
356,276人 |
約2.0% |
平成30年 |
9,052人 |
424,394人 |
約2.1% |
引用 法務省
技能実習生全体の人数が増えているのに対して、失踪率に関してはほとんど変化がない容態です。この失踪者の中には、旧制度の時に入国した技能実習生と、新しい制度になってから入国した技能実習生がいます。
そこで、それぞれの制度に対してはっきりとわかるように、以下のような検証を行いました。
①平成29年に旧制度が反映された1号技能実習生が失踪に至った数と、平成30年に新制度が反映された1号技能実習生が失踪に至った数の比較をしました。また平成30年の2月と3月に入国した新制度と旧制度の1号技能実習生にあたり、入国後1年で失踪した数の比較も行いました。
参考 法務省
上記の方法で検証をしたところ、以下のような結果になりました。
平成29年中に入国した技能実習生(旧制度)127,657人中1,163人 0.9%
平成30年中に入国した技能実習生(新制度)130,699人中658人 0.5%
平成30年2月、3月に入国した新旧両制度の1号技能実習生 10,626人
旧制度 4,758人 うち失踪が158人 失踪率3.3%
新制度 5,868人 うち失踪が85人 失踪率1.4%
参考 法務省
このようにいずれの方法であっても、新制度での技能実習生での失踪率は旧制度での技能実習生の失踪率を下回っており、新制度が効果があることがわかります。さらに新制度での技能実習生の割合が多くなるとともに、失踪数が減っていくことが期待されています。
技能実習生が失踪をする理由
それでは技能実習生が失踪する理由はどのようなものがあるのでしょうか。
母国が過酷な経済状況
日本に来る技能実習生の多くは、母国が過酷な経済状況にあるケースが多いです。物価も日本と比べて安い国が多く、例え低賃金でもと日本に来ることが多いのです。しかし実際に日本に来てみると、思っていた環境と違うとショックを受けることが多いのです。
ベトナムの平均月給は約2万4,000円であり、アジアの平均である28万8,632円(2018年1月)と比べて大きく下回っています。
参照 アジア経済ニュース
日本の平均年収は462万円であり、月収に直すと38.5万円です(ボーナス含む)。以下に日本とベトナムで差があるかがわかります。
参照 国税庁
過酷な労働環境
建設業や工場業など、過酷な労働環境での労働に耐えられず技能実習生が失踪するケースもあります。日本人にとっても過酷な環境で、さらに言葉が通じず文化の違いから理解をされずさらにストレスをためている技能実習生が多いのです。
NHKでは、裁縫工場で働いているベトナム人が、劣悪な住環境、休みがほとんどない状態、長時間労働をさせられている日常を放映しました。実際にこのようなことが現実にあるのです。
借金が返せない
ベトナムは平均年収が100万円といわれています。しかし実習生の中には多額の借金を抱えて日本に来る人が多く、月収10万円など低賃金で働いています。つまり稼ぐために来ているのに、返済に精一杯の状態が続いているのです。
お金を稼ぐため
母国での生活が厳しく、また賃金も安いため生活を成り立たせるために日本へ来る技能実習生は少なくありません。しかし日本に来てから不法ではありますが他の仕事を見つける人、また実習先が残業代の支払いがない、給与明細の改ざんなど受け入れ企業が不正を行っている場合も見受けられます。
受け入れ側の理解不足
技能実習生とは日本で技術を覚えて、母国の経済発展につなげてもらうことが最も大きな目的です。しかしこのことを理解せずに、技能自習生を「低賃金な労働力」と捉える現場が減らないことも、技能実習生の失踪につながっています。
受け入れ側にとってもしっかりと制度を理解していれば、職場の活性化や生産性の向上などにつながるため決してデメリットばかりではないのです。
またこのような状況につながる理由のひとつに、技能実習生とのコミュニケーション不足があります。技能実習生をよぶためには、それぞれの国の文化を理解する必要があります。日本では当たり前の事でも、海外では違うことも多くあります。
例えば、日本ではあいまいに濁すことでも海外でははっきりと意見をいうことが多くなります。日本ではこの点を理解せず「仕事もできないくせになまいき」といったような考え方では、実習生と円満な関係を築くことはできないでしょう。
技能実習者にとって、日本に来て何をするのも不安でしょう。このことを理解し、しっかりと会話をすることでケアをする必要があります。受け入れ先だけなく、監理団体ともよく連携ととることが大切です。
建設業にて技能実習生が失踪者が多い問題とは
現状
建築業は就業している人達が高齢化している中で、若い人達の人材不足が年々深刻化しています。このような状況になっているのは、建設業での処遇改善がされていないといっても過言ではありません。労働時間が長い上に低賃金であり、さらにパワハラともいえるような指導も問題となっています。
機械や工具を扱い、高所など気を付けなければいけない状況でさらに夏は暑く冬は寒い中仕事をしなければなりません。
建設業で失踪者が増える理由
ある程度建設業のイメージがわく日本人にとっても過酷な環境であるのに、日本になれない外国人にとって過酷な状況さらに人間関係も厳しいことが多い中で失踪者が減る事はありません。
技能実習者の失踪者を増やさないために
それでは技能実習者の失踪者を増やさないためにはどのようにすればいいのでしょうか。
労働環境を見直す
過酷な労働条件、また契約内容と仕事内容が違うまた賃金が最低賃金以下など、労働条件が問題の場合はすぐに見直す必要があります。これらの場合は雇い主に問題があり、雇い主が罰せられます。
外国人による技能実習制度は古くから日本で導入されているのですが、労働条件の不正などにより実習生が失踪するなど問題が多くなり、2017年に新しく制度が施工されました。監督者の存在をはっきりとし、実習実施者や監理団体に報告を義務付けました。
このことにより失踪者の割合は減ってきているものの、いまだに母国の経済状況が原因でさらにお金を稼ぐため、また借金を返すため、そのほか労働条件などの不正などにより失踪者が存在している状況です。
面接時にお互い理解をすることが大切
面接時に、仕事内容や賃金などの条件の他に社会保険などに加入することなどを詳しく説明をする必要があります。賃金は大切ですが、最終的にいくら手元に収入として残るかが大切であり、思った以上に少ないと、他の職をする実習生が少なくはないのです。
また仕事の面以外でも、日本での生活、文化、風習などもできるだけ理解をしてもらうことが大切です。また一方的ではなく、受け入れ側もそれぞれの国の文化を理解しておくことが必要です。
フォローをしっかりする送り出し機関を選ぶ
それぞれの国で実習生を送り出してくれる送り出し機関を十分に吟味して選ぶことが大切です。政府が公認の機関を選ぶことはもちろんのこと、送り出してからもフォローをしっかりとしてくれることが大切です。
第3号技能実習への移行も可能
技能実習生に高いモチベーションをもってもらうために、条件をクリアしたらさらに2年間実習を受けることができる、第3号技能実習へ移行することができるなど、システムをしっかりと伝えることが大切です。
技能実習生の失踪まとめ
技能実習生の失踪が年々増えています。これは技能実習生とのコミュニケーション不足による原因が多くなっています。技能実習生が仕事内容、契約内容、また実習生のシステムなどを理解していないことがあります。また理解できるような環境を作ってない問題もあり、実習生にストレスがたまっているケースもあります。
このような技能実習生の失踪を減らすためにも、実習生とのしっかりとしたコミュニケーションが必要となります。送り出し機関や監理団体とも連携をして、フォローをしていくことが求められます。
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