日本では現在少子高齢化が進んでおり、日本人の全人口の約4人に1人が高齢者と言われています。
また、日本企業の多くが人材不足に苦しんでおり、特に介護業界は、高齢者の増加と人手不足でかなり深刻な状況となっています。そんな中、政府は外国人雇用の拡大のために新たな在留資格「特定技能」を施行しました。
介護業界の現状について
現在、介護業界は深刻な人手不足の状態となっています。
政府は介護業界の人手不足解消のために、生産性の向上や国内人材の確保の取り組みを実施してきましたが、このままでは完全に人手不足が解消されることはないと推定しています。
有効求人倍率
(出典)『介護分野における特定技能について』|厚生労働省
厚生労働省の「介護分野における特定技能について」によると、人手不足の現在(2020年4月19日時点)の状況は以下の通りです。
介護分野の有効求人倍率は、令和1年度で4.45倍となっています。都道府県別に見ると、最も有効求人倍率が高い都道府県は、東京都の7.39倍で、2位が愛知県の6.77倍、3位が奈良県で5.87倍となっています。
また、厚生労働省によると、75歳以上の人口は2025年までに特に都市部で急増し、もともと高齢者の人口が多かった地方部でも緩やかに増加すると言われています。
特定技能1号「介護」について
特定技能とは?
特定技能とは、2019年4月1日「「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、人手不足が続いている産業・業界において、外国人労働者の受け入れることで人手不足の解消を目的として創設された制度です。
詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
『特定技能とは?特定技能を持った外国人を雇用するためには!?』
特定技能「介護」の受入れ見込数
(引用)第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(別紙1)|厚生労働省
介護人材全体の需要は、2016年度の水準から2025年までに約55万人必要だと見込まれています。政府は、介護人材の必要数である55万人の内、最大で60,000人を特定技能「介護」を取得した外国人を受け入れることで人材を確保しようとしています。
介護業界の現状や特定技能以外での採用方法が詳しく知りたい方は、『外国人介護職員を雇用するための4つの方法と、国籍別の外国人労働者数や雇用時の注意点を徹底解説!』をご覧ください。
特定技能「介護」の業務内容は?
次に、特定技能「介護」での業務について説明します。
特定技能1号「介護」を取得した外国人労働者は、身体介護やこれに付随する支援業務に従事することが可能です。具体的には、利用者の心身の状況に応じた、食事、入浴、排せつの介助等が挙げられます。また、行なってはいけない業務なども存在します。
従事できる業務
・身体介護(利用者の心身の状況に応じた食事、入浴、排せつの介助等)
・これに付随する支援業務(介護施設内でのレクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
ただし、特定技能「介護」を取得している外国人労働者が、利用者の自宅で身体介護をしたり、利用者宅の部屋の掃除などをする訪問系のサービスは、業務対象外となっています。
雇用形態
直接雇用に限ります。
外国人が特定技能「介護」を取得する方法
では、特定技能1号「介護」を取得するにはどうすればいいのでしょうか?
通常、在留資格「特定技能」を取得するには、2つの方法があります。1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。もう1つは、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」を取得する方法です。そして特定技能「介護」分野ではこの2つの方法に加えて、3つ目の方法があります。それは、EPA介護福祉士候補者から特定技能「介護」へ移行する方法です。特定技能「介護」では、制度の改正によりEPA介護福祉士候補者から特定技能「介護」へ移行することが可能になりました。
以上3つが、現在の特定技能「介護」を取得する方法です。
①「特定技能評価試験」「日本語評価試験」「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格する
通常、特定技能は「特定技能評価試験」と「日本語試験」の2つに合格すれば取得することができます。しかし特定技能「介護」分野では、この2つの試験に加えて「介護日本語評価試験」に合格しなければいけません。
このため、特定技能の「介護」を取得するためには、「特定技能評価試験」と「国際交流基金日本語基礎テスト」の2つに加えて、「介護日本語評価試験」の合計3つの試験に合格する必要があります。
(出典)『技能試験と日本語試験について』|厚生労働省
「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」の試験科目・問題数・配点について
(出典)『介護分野における特定技能について』|厚生労働省
<特定技能評価試験について >
まず、特定技能「介護」を取得する手段の1つ目として、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格する方法があります。
特定技能評価試験は、特定技能全14業種それぞれ異なる試験となっており、特定技能「介護」では厚生労働省の定める「介護技能評価試験」を受けなければいけません。
特定技能14業種それぞれの試験について知りたい方は、『在留資格「特定技能」の業種別の試験について』をご覧ください。
「介護技能評価試験」は、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づいて、利用者の心身の状況に応じた介護を外国人労働者が一定レベルで実践できるかどうか確認するために行われます。
<日本語試験について>
特定技能評価試験ともう1つ必要になるのが日本語試験です。
日本語試験では、「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格するか「日本語能力試験のN4以上」に合格する必要があります。
日本語能力試験のN4の水準は、日本語の基本的な単語や語彙を使った日常会話ができるレベルです。
この試験では、日常会話や生活に支障がない程度の日本語能力を外国人が有しているのか、基本的な日本語能力を測るものです。
<介護日本語評価試験について>
「介護日本語評価試験」では、主に介護現場で使われる用語の問題や、実際の介護の場面で、相手に声をかける際に適した声掛け、出された情報をもとにどのような判断をするべきかを選択する問題が出題されます。
「介護日本語評価試験」では、これから日本で働く外国人労働者が介護業務に就く中で想定される様々なシチュエーションに対応できる日本語能力があるか測定します。
②技能実習2号から特定技能「介護」へ移行する
特定技能「介護」を取得する2つ目の方法として、技能実習2号を修了して無試験で在留資格「特定技能」へ移行する方法があります。
技能実習2号を修了した外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行することが可能です。これにより、これまで日本に滞在していた技能実習生は、特定技能を得ることで追加で最長5年日本に滞在できるため、在留期間を伸ばすことができます。
技能実習生に関する詳細は、『介護職種として外国人技能実習生の受け入れ方法を要件から試験、夜勤の可否、試験などを完全解説!』をご覧ください。
③EPA介護福祉士候補者から特定技能「介護」へ移行する
政府は2019年5月に、EPA介護福祉士候補者の外国人が特定技能「介護」へ移行可能にすることを発表しました。
これまでEPA介護福祉士候補者の外国人は、4年間の滞在期間で国家試験に合格できなければ、母国へ帰国しなければいけませんでしたが、特定技能「介護」へ移行した場合、在留期間が5年追加されるため、引き続き介護施設等で就労することが可能になります。
移行する条件として、4年間EPA介護福祉士候補者として就労や研修を適切に従事し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしている必要があります。
具体的には、直近の介護福祉士国家試験の結果通知書で、
・合格基準点の5割以上の得点である
・すべての試験科目で得点がある
が地方出入国在留管理官署で確認できる必要があります。
EPA介護福祉士候補者に関する詳細は、『EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の雇用方法を徹底解説!(前半)』と『EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の雇用方法を徹底解説!(後半)』をご覧ください。
特定技能「介護」の受験資格について
特定技能「介護」を技能試験と日本語試験により取得する際は、国内で受験する場合と国外で受験する場合の2種類の受験方法があります。
日本国内で受験する際は、以下の条件を満たす必要があります。
・在留資格を有し、試験日において満17歳以上であること
・退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府または地域の権限ある機関の発行した旅券を所持すること
日本国外で受験する際は以下の条件を満たす必要があります。
・試験日において満17歳以上であること
特定技能「介護」のまとめ
この記事では、在留資格「特定技能」の14業種の中の1つ「介護」について詳しく紹介しました。介護業界は、人手不足が今後も深刻化することが予想されます。しかし、特定技能「介護」の外国人労働者の受け入れが増えていくことで、少しでも介護業界の状況がよくなればと思います。
また、現在特定技能「介護」を取得した外国人の雇用を考えている方は、是非この記事を参考に検討してみてはいかがでしょうか?特定技能の申請や発給は、上記に記載した条件以外にも、細かい条件や手続きが必要になります。
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『特定技能全14業種・職種(法務局・担当省庁)のお問い合わせ先の一覧』
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