近年、グローバル化や深刻な人手不足などから外国人を受け入れる企業も増えてきています。
外国人を雇用したら必要な書類である「外国人雇用状況の届出」についてはご存知でしょうか。雇用管理や制度など知らないことがたくさん、という雇用者の方も少なくはありません。今回はこの「外国人雇用状況の届出」についてご紹介したいと思います。
外国人雇用状況の届出から見る外国人労働者の推移
平成30年10月末時点での外国人雇用状況の届出から見る、外国人労働者を雇用している事業所の数は21万か所を超え、外国人労働者の数は145万人を超えました。前年の平成29年10月末の数字から比較すると、事業所の数は11.2%増、外国人労働者の数は14.2%増と、この外国人雇用状況届出が義務付けられてから、過去最高を更新しています。
この大きな要因は高度外国人材や留学生、技能実習制度を利用した技能実習生などの受け入れが進んでいることです。アジアからの外国人労働者の受け入れが多く、その中でも中国やベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国からの外国人労働者が多くを占めています。産業別で見ると、これから人手不足が予想される「製造業」がもっとも高い割合を占め、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」の順になっています。この近年で外国人労働者の受け入れが増加傾向にありますが雇用情勢の改善などにより、「永住者」や 「日本人の配偶者」などの身分に基づく在留資格の方々の就労も進むと予想されます。
参照:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (平成 30 年 10 月末現在)
外国人雇用状況の届出制度
外国人労働者を雇用する際に必要な「外国人雇用状況」の届出とは一体どのようなものなのでしょうか。
「外国人雇用状況」の届出は、それぞれの事業所における外国人労働者の雇用状況を把握し、外国人に対する適切な雇用管理を行うことを目的とした書類です。
外国人労働者が増加の一途をたどる中、労働施策の総合的な推進ならびに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関して定めた法律「雇用対策法」が平成29年10月に成立しました。
その法律に基づいて、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援を行うため、外国人労働者を受け入れる全ての事業主は、外国人労働者の雇用又離職の際に必要事項を確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることが義務付けられるようになりました。
しかし、実際にどのように届出をしたら良いのか、わからない事業主の方が多いはずです。そこで具体的にどのような手続きが必要なのか、ご説明したいと思います。
外国人雇用者は注意!外国人雇用状況の届出が必要な場合
外国人雇用状況の届出は必須
外国人雇用状況の届出は、事業主の義務です。外国人労働者を雇用する際、また離職の際にも必要になります。
雇用対策法では次のように定められています。
雇用対策法 第二十八条
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
届出なかった場合はどうなるの?
届出をしない場合、30万円以下の罰金となってしまいますので注意してください。
雇用対策法 第四十条1項2号
次の号に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
二 第二十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
届出が必要となる対象の外国人
対象となる外国人は、「日本国籍を有しない人」で、在留資格が「外交」「公用」及び「特別永住者」※以外の人です。日本人と結婚した「日本人の配偶者等」に該当する人も、この外国人雇用状況の届出の対象になります。
外国人雇用状況届出がどのような場合に必要になるのか厚生労働省のホームページでも説明されていますので、是非参考にしてみてください。「外国人雇用状況届出 Q&A」
※「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人等)の方は、特別の法的地位が与えられており、本邦における活動に制限がありません。このため、特別永住者の方は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされておりますので、確認・届出の必要はありません。
外国人雇用状況を届け出るには
実際どのような手続きが必要なのでしょうか。
まず、事業所のある管轄のハローワークへ「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」※を提出します。
届け出るにも期限があり、外国人の雇入れ・離職いずれの場合も、翌月末日まで※です。
※被保険者の場合、下記「届け出る内容」参照ください。
又、オンラインでの届出も可能です。オンラインの場合は「外国人雇用状況届出システム」を利用します。
オンラインから届け出る方はこちら:外国人雇用状況届出 – ログイン – 外国人雇用状況届出システム
※ただし、様式第3号(国・地方公共団体の場合は通知様式。)等の届出用紙により、一度でもハローワークに届出を行ったことのある事業主の方は、この画面からユーザーID及びパスコードを取得することができません。以前に様式第3号による届出を行い、今後インターネットによる届出を希望する場合は、様式第3号を届出たハローワークに問い合わせる必要があります。
届け出る内容
届け出るには以下の情報が必要になります。
届け出る内容も資格取得時と喪失時、また被保険者か否かで変わってきます。
雇用保険被保険者 資格取得届
・届出事項
①氏名
②在留資格※
③在留期間
④生年月日
⑤性別
⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無
⑧雇入れに係る事業所の名称及び所在地など、取得届に記載が必要な事項
※在留資格「特定技能」の場合は分野、「特定活動」の場合は活動類型を含む(以下同じ)
・届出方法
「雇用保険被保険者資格取得届」の様式(様式第2号)にある「17」~「22」欄に「国籍・地域」や「在留資格」などを記入してハロー ワークに提出することによって、外国人雇用状況の雇入れの届出を行ったことになります。
・届出期限
雇用保険被保険者取得届の提出期限と同様。
雇用保険被保険者 資格喪失届
・届出事項
①氏名
②在留資格
③在留期間
④生年月日
⑤性別
⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無
⑧離職に係る事業所の名称及び所在地など、資格喪失届に記載が必要な事項
・届出方法
「雇用保険被保険者 資格喪失届・氏名変更届」の様式(様式第4号) 表面の「住所(被保険者の住所又は居所)」欄の他、裏面の「14」~ 「18」欄に 「国籍・地域」や「在留資格」などを記入してハローワークに 提出することで、外国人雇用状況の離職の届出を行ったことになります。
ただし、以下の場合は記入不要です。
・ 外国人雇用状況届出の対象外となっている方 (特別永住者、在留資格「外交」・「公用」の方)
・ 「電子届出」(P.7)や「様式第3号」によって届出済みの方
・届出期限
雇用保険被保険者取得届の提出期限と同様。
雇用保険被保険者とならない外国人の場合(雇入れ時・離職時)
・届出事項
①氏名
②在留資格
③在留期間
④生年月日
⑤性別
⑥国籍・地域
⑦資格外活動許可の有無 ※雇入れ時のみ
⑧雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地など
・届出方法
外国人雇用状況届出書(様式第3号)に、上記1~9の届出事項を記載して届出てください。届出様式はハローワークの窓口で配布しています。
厚生労働省ホームページからダウンロードする場合はこちら
・届出期限
雇入れ、離職の場合ともに翌月の末日まで。
外国人雇用状況の届出に際しては、外国人労働者の在留カード、旅券(パスポート)又は
指定書などの提示を求め、届け出る事項を確認します。
外国人雇用状況を提出する場所
提出をする場所も当該の外国人労働者が被保険者であるかどうかで変わります。
被保険者の場合は、雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワークに届出ます。 (雇用保険被保険者資格取得・喪失届を届け出るハローワークと同様)
被保険者でない場合は、当該外国人が勤務する事業所施設(店舗、工場など)の住所を管轄するハローワークに届け出ます。
参照: 3.外国人雇用はルールを守って適正に(厚生労働省 … – 経済産業省
外国人雇用状況まとめ
外国人雇用状況の届出は、雇用する事業主が在留資格などをしっかりと確認することで不法就労を防ぐだけでなく、外国人労働者の雇用の安定や働きやすい職場環境にすることにもつながります。
外国人労働者を雇用する際には日本人を雇用する際以上に様々な届出や雇用管理をする必要があります。初めて外国人労働者を受け入れる企業からすると、聞きなれないこともたくさんあるでしょう。しかし、知らなかったでは大変なことになってしまいます。外国人労働者の必要事項を確認し、適正な外国人雇用を行いましょう。
これからの時代、海外進出をするグローバル企業だけではなく、多くの日本の企業が外国人労働者を受け入れる機会が増えてくると思います。受け入れる際には、是非こちらを参考にしっかりと届出ましょう。
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