「EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士受入れ枠組みの概要」「受け入れ機関(日本国内にある医療法人や社会福祉法人等の公私の機関)の要件」「外国人看護師・外国人介護福祉士候補者の要件」「採用選考」「雇用契約」までを解説いたします。
EPAに基づく外国人介護福祉士候補者の雇用概要
EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)とは、貿易の自由化に加え、投資や人の移動、知的財産の保護やビジネスの競争ルールを整備し、幅広い分野での国際的な経済連携を強化するための協定です。日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムとの間でEPAを締結しており、この枠組みの中で介護福祉士候補者の受入れが行われています。
制度の目的
本制度の目的は、日本と相手国の経済上の連携を強化する観点から、公的な枠組みで特例的に外国人介護福祉士候補者を受け入れ、日本の介護福祉士国家資格の取得を目指してもらうことにあります。介護分野の労働力不足への対応として行うものではなく、あくまで国際連携の強化が主たる目的であるとされています。ただし、日本の深刻な介護人材不足の中、実質的には介護現場の人材確保にも貢献しています。
送り出し国
EPA介護福祉士候補者を送り出せる国は限定されており、2026年4月現在、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国のみとなっています。インドネシアからの受入れは平成20年度(2008年度)、フィリピンからは平成21年度(2009年度)、ベトナムからは平成26年度(2014年度)にそれぞれ開始されました。2026年度の受入れパンフレットによると、看護師・介護福祉士候補者の累計受入れ人数は、看護師候補者が合計1,738名(インドネシア人768名、フィリピン人695名、ベトナム人275名)、介護福祉士候補者が合計8,265名(インドネシア人3,491名、フィリピン人3,105名、ベトナム人1,669名)となっています。各国の年間受入れ最大人数は300名(訪日前後研修免除者は300名枠外)とされています。
在留資格
EPA介護福祉士候補者の在留資格は「特定活動」に区分されます。これは出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、法務大臣が個々の外国人に対して特に指定する活動を許可するもので、候補者は指定書により指定された受入れ施設での就労・研修のみが認められます。指定された施設以外での就労や、指定された内容以外の活動は入管法上認められません。
在留期間
EPA介護福祉士候補者の在留期間は、資格取得の前後で異なります。
- 介護福祉士の国家資格取得前:原則4年(一定の条件を満たせば5年まで延長可能)
- 介護福祉士の国家資格取得後:在留期間の更新に回数制限なし(事実上、無期限で就労可能)
国家資格取得前の候補者の在留期間は1年単位となっているため、在留期限の3カ月前から在留期間の更新許可申請を行う必要があります。滞在最終年度(4年目)に国家試験に不合格だった場合でも、一定の条件を満たせば1年間の滞在延長が認められ、再度受験の機会が得られます。また、帰国後も在留資格「短期滞在」で再度入国し、国家試験を受験することが可能です。
家族の帯同
介護福祉士の国家資格を取得した後であれば、家族(配偶者および子供)の帯同が可能です。資格取得前の候補者の段階では、家族帯同は認められていません。
外国人介護職員に求められる日本語能力
EPA介護福祉士候補者に求められる日本語能力の基準は、送り出し国によって異なります。それぞれの研修スケジュールと日本語要件を確認しましょう。
インドネシア・フィリピンの場合
- 訪日前:現地で6カ月間の日本語研修を受講
- 入国時:日本語能力試験N4程度以上が求められます(N5程度での入国も可能ですが、就労開始時にはN3程度以上が必要)
- 訪日後:6カ月間の日本語研修を受講した後、介護事業所で就労を開始
ベトナムの場合
- 訪日前:現地で12カ月間の日本語研修を受講(マッチング前に実施)
- 入国条件:日本語能力試験N3以上の合格が必須
- 訪日後:2.5カ月間の日本語研修を受講した後、介護事業所で就労を開始
ベトナム人候補者は入国時点でN3以上の日本語力を有しているため、他の2カ国の候補者と比較して日本語面でのアドバンテージがあり、国家試験の合格率も高い傾向にあります。
日本語研修の免除について
日本語能力試験N2以上の取得者は、訪日前・訪日後の日本語研修がいずれも免除されます。また、日本語能力試験N3またはN4の取得者(インドネシア・フィリピン)は、訪日前日本語研修が免除される場合があります。研修免除者は300名の受入れ枠外で受入れが可能であり、研修免除者を受け入れることで、より早期に就労を開始できるメリットがあります。
外国人介護職員に求められる介護等の知識・経験等
EPA介護福祉士候補者になるためには、各国でそれぞれ学歴・資格要件を満たす必要があります。
<インドネシア>
- インドネシアの看護学校(3年以上)を卒業、または
- 高等教育機関(3年以上)を卒業し、インドネシア政府による介護士認定を受けていること
<フィリピン>
- フィリピンの看護学校(学士・4年制)を卒業、または
- 4年制大学を卒業し、フィリピン政府による介護士認定を受けていること
<ベトナム>
- 3年制または4年制の看護課程を修了していること
いずれの国においても、母国で看護や介護に関する専門教育を受けていることが前提となっています。この点は、特定技能制度と比較してEPA制度の特徴のひとつであり、候補者が介護分野に関心と基礎知識を持って来日するため、業務内容のミスマッチが起こりにくいというメリットがあります。
受入調整機関
EPA候補者の受入れを調整する日本側の唯一の機関は、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)です。JICWELSは厚生労働大臣から指定を受け、受入れ希望機関の募集・要件確認、マッチング、雇用契約の締結支援、巡回訪問、各種研修の実施、相談窓口の運営など、受入れに関する幅広い業務を担っています。他の団体や個人がEPA介護福祉士候補者の職業紹介やあっせんを行うことはできません。
受入れに関する問い合わせは、JICWELSの受入支援部(電話:03-6206-1138)へ連絡してください。
勤務できるサービスの種類
EPA介護福祉士候補者が就労できるサービスの種類は以下のとおりです。
- 介護保険3施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)
- 認知症グループホーム
- 特定施設(介護付き有料老人ホーム等)
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 認知症対応型通所介護(認知症デイ)
- ショートステイ
介護福祉士の資格を取得した後は、一定の条件を満たした事業所における訪問系サービスでの就労も可能となります。
配置基準・夜勤・異動・転職に関するルール
EPA介護福祉士候補者の就労にあたっては、配置基準への算入、夜勤、異動・転職について一定の制限が設けられています。以下、それぞれのルールを確認しましょう。
配置基準に含められるまでの期間
日本語能力試験N2以上を取得している候補者は、雇用開始直後から人員配置基準に含めることができます。それ以外の候補者は、雇用して6カ月を経過した後から配置基準に算入可能です。なお、配置基準の算入は、夜勤に係る加算やユニット単位での配置基準等に限られ、基本の配置基準(例:職員対利用者=1対3)は候補者を除いて満たしている必要があります。
夜勤の可否
- 介護福祉士の国家資格取得前:雇用して6カ月を経過、もしくは日本語能力試験N1またはN2に合格していれば可能
- 介護福祉士の国家資格取得後:制限なく夜勤可能
同一法人内の異動の可否
- 介護福祉士の国家資格取得前:原則不可(指定書で指定された施設のみで就労)
- 介護福祉士の国家資格取得後:可能
介護職種での転職可否
- 介護福祉士の国家資格取得前:原則不可
- 介護福祉士の国家資格取得後:可能(ただし、在留資格の変更許可申請が必要です。新しい受入れ施設がEPA介護福祉士の就労が可能な施設の要件を満たしているか、JICWELSによる確認も必要となります)
EPA介護福祉士候補者の累計受入れ状況と国家試験の合格率
JICWELSの2026年度受入れパンフレットによると、EPA介護福祉士候補者の累計受入れ人数は、3カ国合計で8,265名に達しています(インドネシア人3,491名、フィリピン人3,105名、ベトナム人1,669名)。
介護福祉士国家試験におけるEPA候補者の合格率は、国籍によって大きな差があります。特にベトナム人候補者の合格率は高く、2024年(第36回)試験ではベトナム人EPA候補者の介護福祉士国家試験合格率は86.4%と、日本人を含む試験全体の合格率(82.8%)を上回っています。一方、インドネシア人やフィリピン人の合格率は20%前後にとどまっており、日本語力の差が合格率に大きく影響していると考えられています。
2026年1月に実施された第38回介護福祉士国家試験では、全体の合格率は70.1%(受験者数78,469人、合格者数54,987人)で、前回の第37回(78.3%)から低下しました。この回から「パート合格制度」が導入されています。
2026年度の制度変更・最新動向
2026年4月現在、EPA介護福祉士候補者制度に関連する重要な制度変更がいくつかあります。受入れを検討する事業所の人事担当者は、以下の最新動向を把握しておくことが重要です。
介護福祉士国家試験のパート合格制度の導入
2025年度(第38回)介護福祉士国家試験から、「パート合格制度」が導入されました。試験科目をA・B・Cの3パートに分けてパートごとに合否判定を行い、合格したパートは翌年・翌々年の試験で受験が免除される仕組みです。EPA介護福祉士候補者にとっては、日本語面での負担がある中で段階的に試験科目をクリアできるようになり、最終的な合格を目指しやすくなることが期待されています。
育成就労制度への移行とEPA制度の位置づけ
2024年6月に成立した法案により、従来の技能実習制度は「育成就労制度」へ見直されることとなり、原則3年以内に施行予定です。介護分野における外国人材の受入れルートが多様化する中、EPA制度は引き続き「国家間の協定に基づく公的な受入れの枠組み」として独自の位置づけを維持しています。EPA制度は、母国での看護・介護の学歴要件が厳格であるため、一定以上の基礎知識を持った人材を受け入れられる点が他の制度にはない強みです。
EPA候補者から特定技能への移行
4年間にわたりEPA介護福祉士候補者として適切に就労・研修に従事したと認められる者については、「特定技能1号」への移行にあたって技能試験および日本語試験等が免除されます。国家資格を取得できなかった場合でも、特定技能1号に移行して引き続き日本で介護業務に従事できる道が開かれている点は、候補者にとっても受入れ施設にとっても重要なセーフティネットとなっています。
EPA介護福祉士候補者の受入れの流れ
EPA介護福祉士候補者の受入れは、以下のステップで進められます。
- 受入れ説明会への参加:JICWELSが開催する説明会に参加し、制度の概要や要件を確認します。
- 求人登録申請:受入れ希望機関は、専用ウェブサイトで求人登録申請を行い、所定の書類を提出します。JICWELSが要件を確認します。
- 現地面接・マッチング:送り出し国で就労希望者の選考が行われ、JICWELSが受入れ希望機関と就労希望者のマッチングを実施します。双方の意向を考慮した最適な組み合わせが決定されます。
- 雇用契約の締結:マッチング成立後、JICWELSの支援のもと雇用契約を締結します。日本人と同等以上の報酬を支払うことが契約書に明記されます。
- 訪日前・訪日後の研修:候補者は各国で定められた期間の日本語研修を受講した後、来日して訪日後日本語研修および看護・介護導入研修を受けます。
- 受入れ施設での研修・就労の開始:研修修了後、受入れ施設に配属され、就労しながら国家試験合格に向けた研修を受けます。
受入れ機関に求められる要件
EPA介護福祉士候補者を受け入れる施設には、以下の主な要件が設けられています。
- 介護福祉士養成施設における実習施設と同等の体制が整備されていること
- 介護職員の員数が法令に基づく配置基準を満たすこと(候補者を除いて基準を満たす必要あり)
- 研修責任者を配置すること(介護福祉士資格を持ち、5年以上の実務経験があること。ただし、介護福祉士実習指導者講習会を修了していれば5年未満でも可)
- 日本語の継続的な学習機会、職場への適応促進、日本の生活習慣習得の機会を設けること
- 候補者に対して日本人と同等額以上の報酬を支払うこと
- 候補者用の宿泊施設を確保し、帰国旅費の確保等の帰国担保措置を講じること
- 厚生労働省告示および法務省告示に基づく定期報告・随時報告をJICWELSに行うこと
- 過去3年間に外国人の就労に係る不正行為を行ったことがないこと
要件を満たしていないことが判明した場合、3年間の受入れ停止や受入れ中の候補者の受入れ機関変更の対象となることがあります。求人登録申請時に提出した内容を実施しない場合、「虚偽の求人申請」と判断される場合もあるため、注意が必要です。
受入れにかかる費用
EPA介護福祉士候補者の受入れには、JICWELSへの支払い、送り出し国への支払い、研修機関への支払いなど、複数の費用が発生します。2026年度の主な費用(介護福祉士コース)は以下のとおりです。
- 求人申込手数料:初めて受け入れる施設は30,000円(税別)/施設あたり、同一コースの受入れ経験がある施設は20,000円(税別)/施設あたり
- あっせん手数料:131,400円(税別)/1名あたり
- 滞在管理費:20,000円(税別)/年間1名あたり(資格取得後は10,000円(税別)/年間1名あたり)
- 訪日後日本語研修機関への一部負担金:インドネシア人・フィリピン人の場合360,000円(税込)/名あたり、ベトナム人の場合260,000円(税込)/名あたり
- 送り出し国への手数料:インドネシア(BP2MI)は406.5万ルピア相当/名、フィリピン(POEA)は450米ドル相当/名、ベトナム(DOLAB)は450米ドル相当/名(いずれも予定額)
このほか、施設内研修にかかる費用(教材費、外部研修参加費等)も原則として受入れ施設が負担します。ただし、厚生労働省から各都道府県を通じて学習支援のための費用補助が行われている場合がありますので、各都道府県の介護行政担当部門に確認のうえ活用してください。
在留管理・雇用管理のポイント
EPA介護福祉士候補者を受け入れた場合、在留管理と雇用管理の両面で適正な対応が求められます。日本国内で就労する限り、候補者にも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、健康保険法、厚生年金保険法等の各種法令が日本人と同様に適用されます。
在留管理・雇用管理において特に注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 在留カードの管理:候補者には入国時に在留カードが交付されます。住所変更等の際は14日以内に市区町村での手続きが必要であり、受入れ施設は窓口への引率等の支援が求められます。
- 在留期間更新:候補者の在留期間は1年のため、在留期限の3カ月前から更新許可申請を忘れずに行ってください。
- 外国人雇用状況の届出:外国人労働者の雇入れ・離職の際には、ハローワークへの届出が法律上義務付けられています。
- 同等報酬の確保:候補者の報酬は、同様の職務に従事する日本人職員と同等額以上でなければなりません。この点は巡回訪問や定期報告の際にもJICWELSが確認を行います。
- 定期報告・随時報告:受入れ施設の要件遵守状況、研修の実施状況、雇用契約の要件遵守状況等について、JICWELSへの定期報告が必要です。また、候補者の失踪や不法就労、雇用契約の終了、国家試験の合否結果等が生じた場合は随時報告が求められます。
- 労働保険・社会保険の適用:労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険は候補者にも強制適用されますので、必ず加入手続きを行ってください。
外国人の在留資格や就労資格の管理は、不法就労助長罪などのリスク回避のためにも非常に重要です。在留カード情報の一元管理や更新期限のアラート管理には、外国人就労管理システムの活用が有効です。
まとめ
EPAに基づく外国人介護福祉士候補者の受入れは、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国から、母国で看護・介護の専門教育を受けた人材を公的な枠組みで受け入れる制度です。2026年4月現在、累計8,265名の介護福祉士候補者が来日しており、日本の介護現場で活躍しています。
2025年度からは介護福祉士国家試験へのパート合格制度の導入、EPA候補者から特定技能1号への移行の仕組み、育成就労制度への見直しなど、外国人介護人材を取り巻く制度環境は変化を続けています。受入れを検討する事業所においては、これらの最新動向を把握した上で、候補者の日本語学習支援や研修体制の整備を進めることが、国家試験合格と長期的な定着につながります。
より詳細な情報については、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が提供している『2027年度版 EPAに基づく介護福祉士候補者受入れの手引き』をご参照ください。
JICWELS:EPA外国人看護師・介護福祉士受入れのあらまし
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